優秀層を採るなら「法学部より文学部」を狙う理由

優秀層を採るなら「法学部より文学部」を狙う理由

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は、人材採用における「属性」の扱いについて。人気のない「属性」にも間口を広げて「本人の実力」にフォーカスして選考を行うことで、より優秀な人材を採用できるようになるかもしれません。


リクルートに存在した「学部の偏り」

リクルートは、学歴による差別や派閥のようなものがまったくない、極めて実力主義的な会社でした。採用責任者をしていた私が言うのですから、紛うことなき真実です。

社長からの紹介の候補者であっても、ふつうに合否判定をする「コネの効かない会社」でした。まあ、社長も「通せ」という紹介をすることはありませんでしたが。

そんな会社で、学歴程度のつながりで、採用の合否や社内評価が影響を受けるわけがありません。ところが、そんなリクルートにもある偏りがありました。ある種の人々が多くいたのです。それは「学部の偏り」です。

端的に言えば、文系でいえば法学部や経済学部よりも文学部や教育学部、理工系では工学部よりも理学部や農学部の出身者が、「世の中における存在確率」以上に社員として在籍していたのです。私も教育学部卒でした。

焦点を当てたのは「候補者本人の実力」

もちろん、リクルートをはじめとした大手企業の志望者は、法学部や経済学部の卒業生が多く、母数が違うので採用の絶対数で文学部が多かったわけではありません。

そもそもリクルートは学歴に対する意識が極めて薄いので、このことについて人事以外の社員は気にしたことも知りもしなかったかもしれません。

ただ、これは事実で、文学部哲学科、理学部宇宙物理学科、農学部農業経済学科など、多彩な出身学部の人が多かったことを覚えています。

彼らの専門とリクルートの事業は関係なく、学部学科の専門性を求めたのではありません。哲学科などを優遇する「学部差別」があったわけでもありません。

では、なぜそうなったのか。実は、リクルートが徹底して「候補者本人の実力」にフォーカスして選考を公平に行ってきたために「偏り」が生じたのです。

「そうでない属性」を狙うから優秀層が採れる

ご存じのとおり世の中には、就活の「学部差別」があります。企業からのDM等のアプローチは、文学部よりも法学部、農学部よりも工学部に偏っています。

つまり、法学部や工学部は競合が多く、「採りにくい」のです。そうなると、同じ評価基準で合否判定をすれば、残るのは「そうでない学部」の人々になるというわけです。

リクルートはその法則をよくわかっていたので、早くから皆が狙わない学部を狙っていました。昔の社内報で、創業者も「リベラルアーツ(文学部や教育学部等の人文系の意味)を採れ」と言っていました。

他にも「地方大学」「留年生」のほか、当時は狙われていなかった「留学生」など他社が狙わない層を狙うことで、無競合で優秀人材を獲得していったのです。

そう考えると、採用ブランドがそれほど高くないのに、なぜか「人気属性」を多く採れていると喜んでいる会社は、実は要注意です。学歴や学部などにこだわるあまり、相対的に優秀でない人材を採っているのかもしれませんよ。

筆者:曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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人事コンサルティング、採用アウトソーシング、新卒人材紹介を行う株式会社人材研究所 代表取締役社長。

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