株価急落のサンバイオ 「テンバガー」の可能性は残されているのか?

株価急落のサンバイオ 「テンバガー」の可能性は残されているのか?

1月の株価大暴落で話題となった、バイオベンチャーのサンバイオ。3月に決算発表を行いましたが、「説明会資料」だけでは理解しにくい内容も少なくありませんでした。「テンバガー」(10倍大化け株)の可能性はまだ残されているのか。有価証券報告書などで内容を補いながら読み解いていきます。


創薬ベンチャーのビジネスモデル

バイオベンチャーのサンバイオ株式会社は2019年3月25日、同年1月期決算を発表した。事業収入は7億4100万円で、当初予想の10億2500万円を27.7%下回った。営業利益は37億3300万円の赤字で、当初予想を1億9300万円下回っている。

東証マザーズに上場するサンバイオは、再生細胞薬の開発を進めるバイオベンチャー。2018年1月期の有価証券報告書は「再生細胞薬」を次のように説明している。

病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある」

画期的な薬のようだが、ビジネスモデルは普通の企業と大きく異なる。「大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾する」ことで収入を得るという。

有価証券報告書より

「製品」がないのに収入がある理由

現段階では上市した製品がないが、事業収益が上がっている。これについて会社は、有報で次の5種類の収入形態があることを示している。

A.契約一時金:ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。
B.マイルストン収入:開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。
C.開発協力金:開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。
D.ロイヤルティ収入:製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。
E.製品供給収入:製品供給の対価として得られる収入。

サンバイオは大日本住友製薬株式会社と、北米において新薬の共同開発を行っている。

その一方で2018年2月には、帝人との間で締結していた「SB623の日本での開発・販売の独占的ライセンス契約」を解消している。

サンバイオと帝人、脳卒中治療薬「SB623」の日本での開発・販売の独占的ライセンス契約解消で合意

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP471494_V10C18A2000000/

発表日:2018年2月14日 脳卒中治療薬「SB623」のライセンス契約の解消について    サンバイオ株式会社(本社:東京都中央区、社長:森 敬太)と帝人株式会社(本社:大阪市北区、社長:鈴木 純)は、サ

「ライセンスアウト」とは、自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。「ライセンスアウト先負担分」とは、開発にかかった費用の一部について、大日本住友製薬より開発協力金等を受領することを指す。

製品がない段階では、収入は上記A~Cに限られる。決算説明会資料の連結損益計算書には、事業収益の欄に「(開発協力金等)」とカッコ書きされ、計画との差異の要因は「開発協力金の翌期へのずれ込み」とされている。

「試験の成否」に翻弄される投資家

創薬ベンチャーのビジネスは「ハイリスク・ハイリターン」だ。これは株主も承知で、決算説明会資料も直近の収益性の検証よりも、臨床試験等が着実に行われているか、試験の結果が良好なものか、組織体制がきちんと強化されているか、といった内容が手厚くなっている。

有報によると、現在サンバイオが開発を進めている再生細胞薬には3種類ある。

・SB623:神経再生細胞。適応疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等
・SB618:機能強化型・間葉系幹細胞。適応疾患は末梢神経障害等
・SB308:筋肉幹細胞。適応疾患は筋ジストロフィー等

このうち、神経再生細胞のSB623については、「慢性期脳梗塞」用途の開発目的で、ライセンス先の大日本住友製薬と共に臨床試験を実施。加えて「慢性期外傷性脳損傷」(TBI=Traumatic Brain Injury)用途の開発目的で、サンバイオ単独で臨床試験を行っている。

このうちTBIの日米グローバル第2相談試験において、2018年11月に「安全性確認。有効性示唆」という結果が出たため株価が急上昇。11月26日にはメルカリを抜いて東証マザーズ上場企業の時価総額トップに躍り出た。

ところが2019年1月29日、「慢性期脳梗塞」用途の米国でのフェーズ2b臨床試験で「主要評価項目未達」という結果が出てしまった。

安全性の問題はなく、データ解析を踏まえて再試験に望むことはよくあることだ。しかし、事前の期待が上がりすぎていたサンバイオの株価は、1万1710円から2620円へと急落。

森敬太社長は日経ビジネスのインタビューで「創業から18年の中で、大きな試練」と打ち明けつつ、「可能性は絶たれていない」と新薬の開発継続を宣言している。

株価急落のサンバイオ、社長が語る治験失敗の要因:日経ビジネス電子版

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/030600005/

1月末に東証マザーズの株価急落の引き金を引いた創薬ベンチャーのサンバイオ。森敬太社長が株価下落の引き金となった治験の失敗の要因と今後の見通しを語った。

「外傷性脳損傷」は米国で社会問題に

サンバイオは3月6日、2018年11月に安全性・有効性が示唆されたTBI用途での試験結果について、4月に開催される米国脳神経外科学会の年次総会で「詳細解析結果を公表する」と発表したところ、株価が一時急伸した。

なおTBI用途では、2020年までに国内自販を達成し、フルスペックの製薬会社に脱皮するとしている。また、2025年までには米国だけでなく欧州、アジア・オセアニアでローンチし、グローバルリーディングカンパニーを目指すとしている。

TBIは日本での知名度は低いが、米国では社会問題化するほど患者数が多く、慢性期脳梗塞に迫るほどだという。背景にはアメリカンフットボールや軍隊の存在のほか、交通事故の多さがある。

なお、サンバイオでは、SB623のTBI用途のほか、アルツハイマー病用途の共同研究を慶大と行っている。また、末梢神経障害、筋ジストロフィー、がん疾患、炎症性疾患などの用途の再生細胞薬といった「パイプライン」(新薬候補)を強化している。

「グローバルリーダー」に向けて体制構築中

サンバイオの決算説明会資料で強調されているのは、「2020年に製薬企業に脱皮する」「2025年にグローバルリーダーに成長する」というビジョンに向けて、体制の構築と幹部クラスの充実を図っていることだ。

SB623の後期臨床試験用および市販後製品の製造は、日立化成に委託することが決まった。

国内自販の体制を整備するために、エーザイ株式会社などを経て参天製薬株式会社アジア社長などを務めた山本寛氏(1981年生まれ)を、執行役員・事業部長(日本・アジア担当)として今年2月に迎えた。

生産部長には、バイオ医薬品の製造、開発、教育に幅広い経験を持つ津村治彦氏を迎えて、体制を強化している。外資系製薬会社にて多様な疾患の臨床開発業務経験のある金子健彦氏は、開発部長として数年前から開発に携わっている。

さらにはグローバルリーダー実現に向けて、参天製薬で取締役専務執行役員などを務めた辻村明広氏が米SanBio, Inc.のCEOに就任。外資系製薬会社での幹部を務めた外国人経営陣も充実させている。

この結果、2020年1月期は営業赤字がさらに拡大する見込みだ。研究開発費が嵩むうえ、先行するTBI用途製品の国内自販に向けて、ロジスティックスの体制構築を準備しているという。

なお、2019年1月期末の連結貸借対照表を見ると、「現金及び預金」が46億5400万円から124億5300万円に、「純資産合計」が8億5300万円から89億900万円に積み増しされ、安定した財務基盤のもとで開発・事業化を進めているということだ。

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