厳選採用は逆効果!? 人材採用の「生産性向上」はこうすれば実現できる

厳選採用は逆効果!? 人材採用の「生産性向上」はこうすれば実現できる

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は人事で進められている「厳選採用」について。生産性向上の名のもとに行われている取り組みですが、果たして目的は達せられているのかという指摘です。


面接負荷を減らすだけでは「生産性」は上がらない

働き方改革の影響などで、何でも「生産性」を重視する時代になってきています。もちろん、私も基本的には賛成です。ただし現状では、一見すると生産性向上につながりそうで、実は逆効果という取り組みもたくさん見られます。

人材採用業務におけるその代表格が「厳選採用」です。採用基準を厳しくし、条件に見合った少数の候補者だけに会うことによって、できるだけ労力をかけずに採用につなげようとするやり方です。

一見すると、無駄な面接などをしなくてもよいので効率的であり、生産性が高まると思われがちです。しかしいくら「労働量」を絞り込んでも、求められる「成果」がきちんと上がっていなければ「生産性」が上がったとはいえません。

《労働生産性=労働による成果(付加価値)÷労働投入量》

採用担当者にとって、面接負荷が減ることはうれしいことかもしれません。しかし、優秀な人が採れるという成果が上がらないのであれば、いくら労働投入量を減らしても、経営者は採用担当者を高く評価することはないでしょう。

「採用基準」を厳しくすると起こること

優秀な人材を採用するためには、実は「採用基準」は少ない方が原理原則的には望ましいのです。それはなぜでしょうか。まず、採用基準を高いものにしたり、たくさんの要素を加えたりすることによって、「採用対象者」が減ります。

当然ながら、条件に見合った少数の人材は激しい採り合いになります。辞退されないようにするためのフォローに結局労力がたくさんかかりますし、最終的に競合に負けてしまい、すべての工数が水の泡になることもあるでしょう。

運良く採用できたと思っても、実は表面的に見合った人というだけで、中身を精査すると、それほどでもない人だったから採れた、ということになるかもしれません。条件を多くすると、このような状態に陥りやすくなるのです。

もちろん、たくさんの条件が本当に必要な「MUST条件」であれば致し方ありません。しかし、それが採用担当者を楽にするためであり、現場が育成を面倒くさがったがためなのであれば、本末転倒ではないでしょうか。

本当に「採用時」の必要条件なのか見極めよう

また、採用基準が多ければ、全体の平均としては能力が高い人が採れるかもしれませんが、突出したところがありながらも欠けたところもあるような人は採りにくくなります。

これは私の経験に過ぎないかもしれませんが、突出した才能を持つ人は、著しく欠けたものを持つ場合も多いものです。結果、小さくまとまった人ばかりを採ることにもつながりかねません。そう考えても、やはり採用基準は少ない方がいいでしょう。

では、何を減らせばよいのかといえば、簡単です。それは「後からでも育成することができること」です。一般的に「性格」は変わりにくいとされていますが、「意欲」はモチベートするという言葉があるぐらいですから、ある程度コントロール可能です。

「行動習慣」などは、具体的な指示やモニタリングを行えばコントロールできます。「知識」や「スキル」は、一部の超高度なものを除けば最も学習可能なものです。このような観点から、採用時にないといけない条件をこそ厳選するべきではないでしょうか。

筆者:曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/
■オンラインサロン「「本当のこと」しか言わない就職の学校」
https://lounge.dmm.com/detail/1638/

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人事コンサルティング、採用アウトソーシング、新卒人材紹介を行う株式会社人材研究所 代表取締役社長。

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