御社の面接担当者には「インタビュー」と「人の見立て」の基本能力が備わっているか?

御社の面接担当者には「インタビュー」と「人の見立て」の基本能力が備わっているか?

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は「面接担当者に求められる基本的な能力」について。人事は「採用基準の目線合わせ」を重視するところが多いですが、もっと大事なことがあるのではないかという指摘です。


「目線合わせ」を徹底させたがる人事

私はさまざまな企業で、採用面接トレーニングをしています。目的は各社各様ですが、中でも「面接者の目線合わせ」、つまりどんな候補者に対しても全く同じ基準で選考できるようにすることを目指す会社が多いです。

面接には、次のような3ステップがあります。

① インタビュー(情報を収集する)
② アセスメント(人の見立て。候補者の性格や能力を得た情報から推定する)
③ ジャッジ(そういう人を自社として採るのかどうかを判断する)

「目線合わせ」とは、この③の段階に当たります。つまり、面接者が自社の「採用基準」をきちんと把握できるように、徹底的に浸透させようと努力しているわけです。

「どんな人を採るか」は転変する

もちろん、「目線合わせ」をやること自体はプラスですし、悪いことではありません。しかし、「どんな人を採るのか」の採用基準はどんどん変わります。採用とは、組織の現在と理想とのギャップを埋め、不足している部分を補うものであるからです。

・若い人が足りなければ、ポテンシャルある若手を採る。
・特定分野のスペシャリストが足りなければ、キャリアのあるベテランを採る。
・フットワークのある元気な若者は多いが、理知的で思索的な人が少なければ、そういう人を採る。

そして、現在の組織は退職等により変わり、理想の組織も事業戦略に応じて変わっていく。ギャップを埋めたと思っても、次の瞬間にはまたギャップが生まれている。採用基準は転変していくのです。

逆に言えば、毎年のように採用基準が変わらないのは、「組織の入り口」にしか目がいっていない恐れがあります(人材の多様性を求める覚悟をし、最初から極めて少ない人材要件のみで評価している場合は別ですが)。

訓練すべきは変わらない「普遍的なスキル」

そう考えると、せっかく面接者のトレーニングを行うのであれば、どんな採用基準であっても変わらないスキルである①「インタビュー」(情報収集)や②「アセスメント」(人の見立て)のトレーニングを優先してするべきではないかと思います。

これまで候補者がやってきたことについてのエピソードなど、その人を見立てるための情報収集のやり方は、すでに普遍的なスキルとして体系化され、国連をはじめ世界中で使用されており、BEI(Behavioral Event Interview)や行動面接手法などと呼ばれています。

「The STAR interview method」という手法では、候補者がどういう場面(situation)やどういう課題(task)が与えられた中で、どういう行動(action)をとり、どういう結果(result)を生み出したのかを尋ねます。そこで投げかけられるのは、たとえばこんな質問です。

「職場で困難な問題に直面したときの例を教えてください。問題をどう解決しましたか?」
「あなたが上司に反対意見を述べたときのことを教えてください」
「プロジェクトを完了するために、他の部署と一緒に仕事をした経験について教えてください」

「採用基準」は最終面接者が分かっていればいい

面接担当者は、インタビューで「情報の収集」をするだけでは不十分です。集めた情報から「人の見立て」をしなければなりません。

そのためには、人のパーソナリティを表現するための「性格(人格)心理学」や、人の性格を言葉で表現するための「人のパーソナリティに対するフレームワーク(枠組み)」などを学ぶ必要があります。こういったスキルは、採用基準がどうであれ変わりなく使えるスキルです。

極論すれば、採用基準などは最終面接者がきちんと分かっていればよいわけです。「情報収集」「人の見立て」のスキルこそ、面接者に最初に身につけてもらうべきではないでしょうか。

筆者:曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/
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この企業情報の記事作成

人事コンサルティング、採用アウトソーシング、新卒人材紹介を行う株式会社人材研究所 代表取締役社長。

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