【航空業界】全日空(ANA)VS 日航(JAL)比較――就職・転職するならどの会社?

【航空業界】全日空(ANA)VS 日航(JAL)比較――就職・転職するならどの会社?

今回は国内二大航空会社、全日本空輸を中心とするANAホールディングスと、日本航空(JAL)について比較します。知名度が高く人気の高い両社ですが、今回は財務面を中心に分析していきます。就職・転職活動の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

(1) ANAホールディングス

戦後、国内の定期航空事業の再興を目的に1952年に創業された日本ヘリコプター輸送が起源です。加盟アライアンスは、欧州勢を中心とした世界最大の「スターアライアンス」。国内52都市、世界42都市、計94都市に就航し、子会社にスターフライヤーやエアドゥ、LCCのピーチアビエーションやバニラエアを抱えています。

2013年に持株会社制に移行し、全日本空輸(全日空)からANAホールディングスに商号変更しました。2018年3月期の従業員数は、連結で41,930名、単体で170名です。従業員の単体平均年収は762万円です。

(2) 日本航空(JAL)

1953年施行の「日本航空株式会社法」により半官半民の航空会社として設立され、1987年に完全民営化。リーマンショック後の経営危機で2010年に会社更生法を申請、上場廃止。高コスト体質を利益重視の筋肉体質に改善し、2012年に再上場しました。

国内59都市、世界38都市、計97都市に就航しており、子会社にLCCのジェットスタージャパンを抱えます。2018年3月期の従業員数は、連結で33,038名、単体で12,127名です。従業員の単体平均年収は867万円です。

事業の収益構造

(1) 売上規模

両社は3月決算です。2015~2017年度の売上高の3期平均は、ANAが1兆8427億円、JALが1兆3363億円です。

航空会社は為替と原油価格によって売上高が増減します。2016年度は急激な為替変動が影響し両社とも減収となりましたが、2017年度は増収に転じています。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均は、JALが1,847億円、ANAが1,488億円です。本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均は、JALが13.8%、ANAが8.1%です。

営業利益率で大きな差がついています。JALは2010年の民事再生法適用から大きくコスト面の見直しを図り、高収益体質に変わっています。ただし、営業利益率が3期連続で悪化しているJALに対し、ANAは3期連続増益で肩を並べる勢いです。

(3) セグメント別売上構成

ANAホールディングス(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、主力の航空事業が83.3%を占めます。

その他は、パッケージ旅行の企画・販売等を行う旅行事業が7.6%、航空機部品の輸出入を手掛ける商社事業が5.8%、空港ハンドリングや整備等の航空輸送に伴うサービスを行う航空関連事業が2.6%、その他事業が0.7%です。

セグメント利益は、航空事業が87.9%で、航空関連事業が6.0%、商社事業が2.5%、旅行事業が2.1%、その他事業が1.5%です。

所在地別収益は、日本が81.4%、海外が18.6%です。

JAL(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、航空輸送事業が82.4%で、パッケージ旅行やカード事業を含めたその他事業が17.6%です。

セグメント利益は、航空輸送事業が92.3%、その他事業が7.7%。ほぼすべての利益を本業が生み出しているといえます。

所在地別収益(2018年3月期)は、日本が61.3%、アジア・オセアニアが17.2%、米州が15.1%、欧州が6.5%です。海外比率は38.7%で、ANAよりも高いです。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

両社とも「優良企業型(営業+/投資-/財務−)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

航空会社は輸送に欠かせない旅客機を、購入もしくはリースすることで運行していますが、1機あたり数十億円以上する航空機を計画的に導入していくことが求められます。そのため投資を先行させる必要がありますが、両社とも資金返済を進めながら健全な経営をしています。

(2) 収益性

企業が本業で生み出したキャッシュを測る「営業キャッシュフロー」の2015~2017年度の3期平均は、JALが2,824億円、ANAが2,723億円です。ただし、直近の2017年度ではANAがJALの数字を上回っています。

営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、JALが21.1%、ANAが14.7%でした。ANAの収益性は上昇傾向にありますが、20%台を維持するJALには追いついていません。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、JALが0.4倍、ANAが2.8倍です。航空機購入に巨額投資が必要な両社とも安全性をもって経営ができています。

なお、実質無借金経営のJALですが、2010年に当時の有利子負債の87.5%となる3,830億円の債権放棄によって再建した経緯を忘れるべきではないでしょう。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均は、JALがマイナス2,079億円、ANAがマイナス1,979億円でした。JALは2019年からエアバス社のA350シリーズを、ANAはエアバスA380を導入する予定で、取得に伴う投資が行われています。

会社が自由に使えるキャッシュを表す「フリーキャッシュフロー」(営業活動キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)の3期平均は、JALとANAが共にプラス745億円です。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、ANAがマイナス533億円、JALがマイナス530億円です。両社とも有利子負債残高を3期連続で増やしていますが、自己株式取得や株主配当、社債や借入金の返済に努めています。

上記3つの指標は、横並びのように同水準です。

(5) 従業員収益性

連結従業員数の3期平均は、ANAが39,149名、JALが32,592名です。両社とも3期連続で従業員数を増やしています。従業員1人当たりの売上高の3期平均は、ANAが4,713万円、JALが4,100万円。

従業員1人当たりの営業利益の3期平均は、JALが567万円、ANAが380万円です。従業員数がANAより少なく、収益性が高いJALの特徴が出ています。

(6) 効率性

有償で搭乗した旅客数に飛行距離を乗じた「有償旅客キロメートル」を、有効座席数に飛行距離を乗じた「有効座席キロ」を割った「座席利用率」を見ていきます。3期平均では国内線ではJALが69.7%、ANAが66.5%、国際線ではJALが80.3%、ANAが75.5%です。

この数値は損益分岐利用率と密接な関係があり、高い方が利益をもたらすとされています。「座席利用率」は、国内線および国際線ともにJALの方が優れており、この点が収益性における差をもたらしています。

まとめ

以上、2社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。


  • 売上高で国内首位となったANAですが、収益性の向上が望まれます。「座席利用率」に改善の余地があるでしょう。2019年導入のエアバスA380を就航させる東京=ハワイ便を始めとする海外路線の強化が、更なる成長の鍵です。

  • 民事再生法を通じて会社体制を改めたJALは、収益性と安全性を兼ね備えた体制に改善しました。一度は抜かれてしまったANAの背中を追うべく、採算性を重視した経営戦略の拡大が見込まれます。

企業活動を支えるインフラを提供する航空会社は、常に安全な運航を求められます。国内外問わず昼夜空を飛び回っている航空機の裏には、多くの仕事が隠れています。航空会社の仕事は夢のある仕事である一方、失敗が許されない重要な仕事が多く、やりがいのある仕事であることは間違いありません。

近年はLCCの台頭など世界の航空事情は複雑化していますが、引き続き担い手を募集しています。パイロットやキャビンアテンダントのみならず、整備や営業、バックオフィスなど活躍できるフィールドは幅広いため、関心がある方には積極的にチャレンジできる素地がある業界であるといえます。

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アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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