【複合機メーカー】キヤノン、富士フイルム、リコー 比較――就職・転職するならどの会社?

【複合機メーカー】キヤノン、富士フイルム、リコー 比較――就職・転職するならどの会社?

今回は複合機メーカー業界から、キヤノン、富士フイルム、リコーの3社について比較します。いずれもオフィス用のコピー機や民生品のカメラなどを製造・販売するメーカーでしたが、デジタル化の影響を受けて新規事業への転換を迫られています。就職・転職活動の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

(1)キヤノン

1937年に精機光学工業として創業した。カメラやプリンターのほか、半導体露光装置などの光学機器を製造しています。経営不振に陥っていた東芝の医療機器子会社を2016年に買収しました。社名の表記は「キャノン」ではないことに注意です。

製販分離が特徴。開発と製造はキヤノン本体、マーケティング・販売はキヤノンマーケティングジャパンなど地域統括販売会社が担当しています。2017年12月期の従業員数は連結が197,776名、単体が26,075名です。従業員の単体平均年収は782万円です。

【平均年収782万円】キヤノンの給与が高いのはなぜなのか

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キヤノンの年収(給与・報酬)が丸わかり!同業他社との比較、平均年収の推移、役職・職種・入社年次・年齢別の年収、年収以外のメリットなど、データや口コミをもとに平均年収が高い理由や社員の収入実態に迫っていきます。今回注目する企業はデジタルカメラ国内首位のキヤノンです。就職・転職活動中の方は必見です。

(2) 富士フイルム

1934年に写真フィルムの国産化を目指した大日本セルロイド(現ダイセル)から分社化。写真フィルムで国内トップシェアでしたが、近年のデジタル化によるフィルム需要の激減に対応し、自社技術を生かした他の事業への展開を図っています。社名の表記は「フィルム」ではないことに注意です。

2006年に持株会社化。2018年3月期の従業員数は連結が77,739名、単体が220名です。従業員の単体平均年収は971万円です。

富士フイルム株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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富士フイルムホールディングス傘下の精密化学メーカー。グループのイメージングソリューション、インフォメーションソリューションの事業を担う。近年では写真フィルムの技術を活かし、グラフィックシステムやヘルスケアの分野に進出。中でも化粧品アスタリフトは高評価。

(3) リコー

理研グループで研究していた感光紙を商品化するため、1936年に独立した理研感光紙が源流。オフィス向けコピー機に早くから取り組み、強力な販売網を作って成長してきました。2011年にはカメラブランドの「ペンタックス」をHOYAより買収しています。

2018年3月期の従業員数は連結が97,878名、単体が7,740名です。従業員の単体平均年収は806万円です。

【男性育休取得率44%超】(株)リコーに就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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就職・転職するなら「株式会社リコー」。コピー機などの事務機器・光学機器を開発・販売するメーカーとして国内外で高い知名度を誇る企業。複写機、プリンター、デジタルカメラといった画像のソリューション商品に関しての品質の高さが特に支持されており、トップクラスのシェアを獲得している。今後は商用印刷と産業用印刷に経営資源を集中し、オフィス事業との3事業で成長を目指す。

事業の収益構造

(1) 売上規模

キヤノンは12月決算で、富士フイルムとリコーは3月決算です。2015~2017年度の売上高の3期平均は、キヤノンが3兆7606億円、富士フイルムが2兆4053億円、リコーが2兆1004億円です。

世界的に為替が変動した2016年度は3社とも減収となりましたが、2017年度は増収です。キヤノンは東芝より買収した医療用機器メーカーが売上をけん引し、大きな増収となりました。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均は、キヤノンが3,052億円、富士フイルムが1,612億円、リコーが68億円です。リコーは、2008年に買収した北米の事務機販売子会社の減損処理で、2017年度に1,759億円という創業以来の赤字を計上したことが響いています。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均は、キヤノンが8.1%、富士フイルムが6.7%、リコーが0.2%でした。リコーは2017年度の赤字が大きく響いています。

(3)セグメント別売上構成

キヤノン(2017年12月期)のセグメント別売上高構成比は、オフィス向け複合機を中心としたオフィス事業が45.7%を占めています。

デジタルカメラやプロ向け放送機器等のイメージングシステム事業が27.8%、半導体露光装置等が含まれる産業機器その他事業が15.8%、X線検査機やMRI検査機等の医療機器を製造するメディカルシステム事業が10.7%です。

セグメント利益は、オフィス事業が41.4%で、イメージングシステム事業が40.4%。この2つの事業で8割の利益を稼ぎます。その他は産業機器その他事業が13.0%、メディカルシステム事業が5.2%です。

2015年度では、オフィス事業が利益の63%を占め、産業機器その他事業がマイナス2.8%でしたが、産業機器その他事業が3期間で利益に貢献するまでに成長しました。キヤノンは事務機器事業から、産業機器事業や買収した医療用機器事業へとシフトしています。

所在地別収益は、米州が27.1%、アジア・オセアニアが26.0%、欧州が25.2%、日本が21.7%です。海外比率は78.3%です。

富士フイルム(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、子会社の富士ゼロックスを中心とした事務機器を扱うドキュメントソリューション事業が43.1%、医薬品開発や記録メディアの研究開発を行うヘルスケア&マテリアルズソリューション事業が41.2%。この2事業で売上の8割超を占めます。その他は、創業来の事業であるカメラやカラーフィルムを扱うイメージングソリューション事業が15.2%です。

セグメント利益は、ヘルスケア&マテリアルズソリューション事業が57.0%と過半数を稼ぎます。その他は、イメージングソリューション事業が34.4%、ドキュメントソリューション事業が8.6%です。

2015年度で全体利益の41.8%を稼いでいたドキュメントソリューション事業は、構造改革の影響もあり大きく利益を落としています。一方、イメージングソリューション事業の利益は、インスタントカメラ「チェキ」の再人気化等の影響もあり、2期前に比べ1.8倍に増えています。

所在地別収益(2018年3月期)は、日本が41.4%、アジア及びその他地域が26.7%、米州が19.0%、欧州が19.0%です。海外比率は58.6%です。

リコー(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、オフィス向け複合機や付随する保守サービスを行うオフィスプリンティング事業が55.4%と過半数を占めています。

その他は、オフィス向けのIT環境構築や運用支援を行うオフィスサービス事業が21.7%、印刷業向け印刷機を提供する9.0%、POSラベルや配送ラベルに使われるサーマルペーパーを提供するサーマル事業が3.0%、産業用プリンターを製造する産業印刷事業が0.9%、その他事業が9.9%です。

セグメント利益は赤字事業もあり、パーセンテージではなく額で表記すると、商用印刷事業が252億円、サーマル事業が50億円、その他事業が100億円で黒字です。一方、オフィスプリンティング事業がマイナス443億円、オフィスサービス事業がマイナス256億円、産業印刷事業がマイナス23億円でした。主軸となる事務機器事業が赤字となっています。

所在地別収益は、日本が38.8%、米州が28.0%、欧州・中東・アフリカが23.1%、その他地域が10.1%です。海外比率は61.2%です。

【平均年収806万円】リコーの給与が高いのはなぜなのか

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リコーの年収(給与・報酬)が丸わかり!同業他社との比較、平均年収の推移、役職・職種・入社年次・年齢別の年収、年収以外のメリットなど、データや口コミをもとに平均年収が高い理由や社員の収入実態に迫っていきます。今回注目する企業は複合機 国内売上第2位のリコーです。就職・転職活動中の方は必見です。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、3社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

キヤノンと富士フイルムは「優良企業型(営業+/投資-/財務−)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

一方、リコーは、本業で生み出したキャッシュ以上に資金調達を伴いながら投資を行っているタイプで、形式上は「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」に分類できますが、経営課題は多く、実際に成長できるかどうかは事業シフトの成否にかかってくるでしょう。

(2) 収益性

企業が本業で生み出したキャッシュを測る「営業キャッシュフロー」の2015~2017年度の3期平均は、キヤノンが5,219億円、富士フイルムが2,578億円、リコーが995億円です。キヤノンは3期連続で増やしています。

営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、キヤノンが13.9%、富士フイルムが10.7%、リコーが4.7%でした。

一般的には10%を超えると優良であるといわれているため、キヤノンと富士フイルムはキャッシュフローの面で優良です。2社に比べるとリコーの収益性が気になります。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、キヤノンが0.7倍、富士フイルムが1.8倍、リコーが8.8倍となっています。実質無借金経営の2社に対し、危険水域といわれる10倍には至っていませんが、リコーの水準がかなり高くなっています。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均は、キヤノンがマイナス4,853億円、富士フイルムがマイナス1,285億円、リコーがマイナス973億円でした。大型M&Aを行ったキヤノンの額が大きくなっています。

会社が自由に使えるキャッシュを表す「フリーキャッシュフロー」(営業活動キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)の3期平均は、富士フイルムがプラス1,292億円、キヤノンがプラス366億円、リコーがプラス22億円です。富士フイルムは次の戦略に向けて余力を蓄えています。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、富士フイルムがマイナス1,064億円、キヤノンがマイナス650億円、リコーがプラス97億円です。

有利子負債残高が3期連続で増加しているリコーは、2016年度は財務キャッシュフローがマイナスであったものの、資金調達傾向にあります。

(5) 従業員収益性

3社の連結従業員数の3期平均は、キヤノンが195,007名、富士フイルムが78,130名、リコーが104,284名です。キヤノンは3期連続で従業員数を増やしています。

従業員1人当たりの売上高の3期平均は、富士フイルムが3,079万円、リコーが2,016万円、キヤノンが1,929万円です。

従業員1人当たりの営業利益の3期平均は、富士フイルムが206万円、キヤノンが157万円、リコーが2万円です。収益性の高いキヤノンに比べ、従業員数が半分以下の富士フイルムの方が数字上大きく見えます。

コピー機の将来に不安を抱くリコーの若手エンジニア 「新しい技術開発」の場を求め転職

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事業環境の変化により、盤石の経営基盤を誇っていた大企業に存続の危機が訪れる――。そんな時代になっている。就職や転職も、投資のように先を見越した成長性重視の判断が求められるだろう。

まとめ

以上、3社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。


  • 収益性と安全性が高いキヤノンは、付加価値の高いカメラをはじめとする光学製品を世に生み出しています。売上高の約8割が海外を占めるため、今後は海外の景気動向によっては業績変動することを想定する必要があります。

  • かつて写真フィルムで市場を圧倒していた富士フイルムは、近年事務機器事業とフィルムで培った技術を生かし、医薬品開発や液晶フィルムの分野で成長しています。フリーキャッシュフローが蓄積してきているため、未来に向けた投資が行える体制になっています。

  • 国内外問わず複合機シェアが高いリコーですが、子会社の減損処理も重なり2017年度は赤字を計上し、有利子負債残高も多いです。今後は産業用や商業用向けを強化し、収益性を高めていく必要があるでしょう。

各社とも既存事業では成長し続けることが難しい時代になっており、企業の永続的な成長に向けて変革が必要です。オフィス向けから産業用に事業をシフトさせているので、転職においては法人ビジネスを経験してきた方や、新技術開発を行ってきた実績のある技術者が求められることが考えられます。

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アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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