内定出しは「プロポーズ」 採用担当者は伝え方を工夫しよう

内定出しは「プロポーズ」 採用担当者は伝え方を工夫しよう

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は最終選考を終え、会社から応募者に採用を伝える「内定」について考えます。あとは応募者に入社を承諾してもらうだけ、という大事な段階なのに、採用担当者は無味乾燥な対応をしていないでしょうか。


「当社ではこうやって内定出しを」→もうこの時点でダメ

いきなり不躾な小見出しで恐縮ですが、本当にそう思います。人事や採用のコンサルティングを日々させていただいているのですが、その際、毎度引っ掛け問題のようで申し訳ないと思いながら「御社では、内定出しはどのようにやっているのですか」と尋ねます。

すると、ほとんどの会社で「当社ではこれこれこのような流れで、応募者に対して内定告知をしています」とおっしゃるのですが、私はもうこの時点でダメな内定出しだと思ってしまいます。

それでは一体、何が正解なのか。それは「人による」ではないでしょうか。つまり、本来は応募者一人ひとりの特性を見てカスタマイズすべき内定出しを、十把一絡げに同じようなやり方でやっていること。これ自体がダメなのです。

意思決定スタイルは人によって違う

十把一絡げな内定がダメな一つ目の理由は、「意思決定スタイルは人によって違う」からです。即決型の応募者もいれば、熟慮型の人もいる。それなのに、一方的に内定を出して「後はあなたが決める番です。いついつまでに受諾をしていただけるかお返事をください」と突き放す。

熟慮型の人は時間が欲しいので、それでもよいかもしれませんが、即決型の人はおそらく「なんだ、口説いてもくれないのか。この会社の自分への評価は随分低いんだな」と思って、志望度が低下してしまうことでしょう。

逆に「内定を出すので、今すぐ他社を全て断っていただけませんか」と言うのは、熟慮型には厳しい。いわゆる「オワハラ」(就活終われハラスメント)と言われても仕方がありません。仏教で「人を見て法を説け」と言われるように、内定出しのニュアンスや中身は、その人の意思決定スタイルに合わせるべきです。

「あなただからこそ」内定を出すのだと伝えたい

「重要感」がなければ入社などしない

もう一つの理由は、流れ作業のように伝えられる内定では、応募者に「重要感」が得られないということです。重要感とは、応募者がその会社に対し、自分のことを大事に重要に思ってくれていると感じる感覚のことです。

スカウトメールですら、「あなたに」と一通ずつ文面を変えて丁寧に送る時代です。それなのになぜ、一番重要な内定出しが、出来合いの文句や形式によるものなのでしょうか。

内定証書なども無味乾燥の事務的な文面のところが多いですが、本当なら「あなたのどこを評価した」「あなたにはこのようなことを期待している」など、「あなただからこそ」内定を出すのだということがはっきりとわかる文言を入れるべきでしょう。

ある会社では内定を出す学生に、これまでその学生に会った社員全員からの寄せ書きの色紙を出していました。少しやり過ぎ感もありますが、ある意味、内定出しは会社から学生へのプロポーズです。ここで力を抜いては、これまでの努力が水の泡。学生に重要感が伝わる工夫をしてみてください。

筆者:曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/
■オンラインサロン《「本当のこと」しか言わない 就職の学校》
https://lounge.dmm.com/detail/1461/

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人事コンサルティング、採用アウトソーシング、新卒人材紹介を行う株式会社人材研究所 代表取締役社長。

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