【化学メーカー業界研究】東レ、住友化学、旭化成 比較――就職・転職するならどの会社?

【化学メーカー業界研究】東レ、住友化学、旭化成 比較――就職・転職するならどの会社?

今回は化学メーカー業界から、大手3社の東レ、住友化学、旭化成について比較します。国内トップを走る3社の財務面からそれぞれの特徴を洗い出します。就職・転職活動の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

(1)東レ

合成繊維および合成樹脂をはじめとする化学製品を製造する国内首位の素材メーカーです。三井グループの中核会社で、1926年の創業時の社名は「東洋レーヨン」でした。

3大合成繊維であるナイロン、ポリエステル、アクリル繊維のほか、近年は自社開発の炭素繊維複合材料が航空機ボーイング787に採用されています。2018年3月期の従業員数は連結が45,762名、単体が7,625名です。従業員の単体平均年収は706万円です。

(2)住友化学

1913年創業の住友グループの総合化学メーカーです。世界最大の石油会社「サウジ・アラムコ」と合弁で石油化学を強化しています。液晶ディスプレイに使われる偏光フィルムやリチウムイオン二次電池に使われる高純度アルミナでは世界トップシェアです。

製薬メーカーの大日本住友製薬は、同社の傘下です。2018年3月期の従業員数は連結が31,837名、単体が6,005名です。従業員の単体平均年収は872万円です。

(3)旭化成

旧財閥・日窒コンツェルンの合成アンモニア製造を担う形で、宮崎県延岡市に創業した総合化学メーカーです。戦後の財閥解体によって独立企業となりましたが、積水化学や積水ハウスとは兄弟関係にあります。

再生繊維の「ベンベルグ(素材名:キュプラ)」や家庭用ラップ「サランラップ」のほか、近年は自社開発の耐火・耐候性の新建材を活用したハウスブランド「ヘーベルハウス」で市場拡大を図っています。2018年3月期の従業員数は連結が34,670名、単体が7,520名です。従業員の単体平均年収は765万円です。

事業の収益構造

(1) 売上規模

3社とも3月期決算です。2015年度~2017年度の売上高の3期平均は、東レが2兆1119億円、住友化学が2兆822億円、旭化成が1兆9554億円です。

3社とも2016年度に減収となっていますが、英国のEU離脱および米国大統領選挙の影響から、為替および市況価格が変動したことが主要因です。旭化成は主業のマテリアルが好調で、2017年度決算で初めて売上高2兆円を超えました。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均は、住友化学が1,832億円、旭化成が1,743億円、東レが1,526億円です。本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均は、旭化成が8.9%、住友化学が8.7%、東レが7.2%でした。

3社の中では、旭化成が最も利益率が高くなっています。住友化学は2017年度の営業利益が前年比約90%増となっており、利益率を向上させました。

(3) セグメント別売上構成

東レ(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、ユニクロを含めた衣料メーカーに素材を提供する繊維事業が41.4%、樹脂やフィルム等の素材提供を行う機能化成品事業が36.4%です。

水処理関連システムや住宅建材の製造を行う環境・エンジニアリング事業が10.8%、ボーイング787にも採用されている炭素繊維複合材料事業が8.1%、医薬品材料や医療機器製品向けのライフサイエンス事業が2.4%、その他事業が0.8%です。

セグメント利益は、繊維事業が39.6%、機能化成品事業が39.1%と全体の8割近くの利益を稼いでいます。その他は炭素繊維複合材料事業が11.4%、環境・エンジニアリング事業7.3%、ライフサイエンス事業が1.1%、その他事業が1.6%です。

所在地別収益は、日本が45.6%、アジア(中国以外)が19.1%、欧米及び他地域が17.8%、中国が17.5%です。

住友化学(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、石油化学事業が30.8%、子会社の大日本住友製薬を中心とした医薬品事業が22.8%、半導体材料や電池部材を製造する情報電子化学事業が16.8%、農薬の生産を行う健康・農業関連事業が15.5%、合成ゴム等の生産を行うエネルギー・機能材料事業が11.5%、その他事業が2.6%です。

セグメント利益は、医薬品事業が34.4%と最も高く、石油化学事業の34.3%と合わせると利益全体の約7割を占めます。健康・農業関連事業が15.9%、エネルギー・機能材料事業が7.0%、情報電子化学事業が4.5%、その他事業が4.0%です。

所在地別収益は、日本が36.8%、北米が16.8%、中国が15.6%、その他地域では30.9%です。

旭化成(2018年3月期)のセグメント別売上高構成比は、化成素材やリチウムイオン二次電池セパレータを含めた主軸であるマテリアル事業が53.3%、ヘーベルハウスブランドをはじめとした住宅事業が31.4%、医薬品や医療機器等の製造を行うヘルスケア事業が14.5%、その他事業が0.8%です。

セグメント利益はマテリアル事業が53.6%、住宅事業が28.3%、ヘルスケア事業が17.3%、その他事業が0.8%です。

所在地別収益は、日本が62.4%、米国が9.4%、中国が9.0%、その他が19.2%です。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、3社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

3社とも「優良企業型(営業+/投資-/財務−)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

(2) 収益性

企業が本業で生み出したキャッシュを測る「営業キャッシュフロー」の2015年度~2017年度の3期平均は、住友化学が2,473億円、旭化成が2,117億円、東レが1,664億円です。直近の3期間では、住友化学が最も営業キャッシュフローを稼いでおります。

営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、住友化学が11.8%、旭化成が10.8%、東レが7.9%でした。3期連続で収益性を悪化させている東レが気になります。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、旭化成が1.9倍、住友化学が3.6倍、東レが4.7倍です。いずれも安全性に問題がありません。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均は、旭化成がマイナス1,618億円、東レがマイナス1,588億円、住友化学がマイナス1,360億円でした。3社とも積極的な投資姿勢です。

会社が自由に使えるキャッシュを表す「フリーキャッシュフロー」(営業活動キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)の3期平均は、住友化学がプラス1,113億円、旭化成が499億円、東レが76億円です。東レは3期にわたってフリーキャッシュフローがマイナス方向に動いており、投資先行となっています。特に2017年度は中国やインドでの生産設備新設によって投資額を増やしています。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、住友化学がマイナス934億円、旭化成がマイナス357億円、東レがマイナス113億円です。旭化成は2015年3月期の資金調達傾向から、前々期、前期通じて資金返済傾向に転じた一方、東レは逆に資金調達傾向に転じています。

(5) 従業員収益性

3社の連結従業員数の3期平均は、東レが45,950名、旭化成が33,737名、住友化学が31,822名です。旭化成は前期、前々期それぞれ前年比3%増で従業員数を増やしています。

従業員1人当たりの売上高の3期平均は、住友化学が6,549万円、旭化成が5,796万円、東レが4,597万円です。

従業員1人当たりの営業利益の3期平均は、住友化学が577万円、旭化成が516万円、東レが332万円です。売上高ではトップの東レですが、従業員一人当たりの売上高および営業利益では2社に後れを取っています。

まとめ

以上、3社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。


  • 自社の炭素繊維複合材料が航空機に使われるなど、世界的なシェアを獲得しようと推し進めている東レですが、他2社に比べて後れを取っている収益性の改善が今後望まれます。

  • 3社で最もキャッシュリッチな住友化学は、分散されたセグメント構成を有しています。今後は主力の石油化学と医薬品に次ぐ稼ぎ頭へ投資できるかが成長の鍵です。

  • 積極的な投資を行いながらも3社で最も有利子負債残高が少ない旭化成は、緩やかに従業員を増やしており、次の戦略に向けての余力を備えています。

化学メーカーは製造業にとって必要不可欠な存在であり、経済活動において必要な存在であり続けます。世界的な石油価格の変動によって売上高および利益が変動するリスクがありますが、世界規模の幅広い企業との密接な関係性を構築できる仕事の面白みがあるため、他業種からの転職者が多いのも特徴です。

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アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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