採用担当者は歴史小説より「ノンフィクション」を読もう!

採用担当者は歴史小説より「ノンフィクション」を読もう!

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。上司から幕末の歴史小説を勧められた経験のある人は少なくないでしょう。しかし曽和氏は、生身の人間を知るために“人事は「近現代のノンフィクション」を読むこと”を勧めます。


英雄譚の「主人公」はこの世にいるのか

私は司馬遼太郎さんの歴史小説やNHKの大河ドラマが大好きで、いろいろ読んだり見たりしています。現実世界にはなかなかいないような痛快な英雄の話を読み、「自分も頑張ろう」と勇気付けられること数知れず。そこに書かれている理想に、いつも憧れます。

ただ、一歩引いて人事や採用担当者という仕事をしている身からクールに考えてみると、「そんなすごい人、素晴らしい人は本当にいるのだろうか」とも感じます。というか、そんな人は実際にはそうそういないでしょう。

そんな「神様」みたいな人はいない

エンタテイメントとしては、この世ならぬ理想の人物を描くからこそ面白いわけですが、人事としてはそんな「神様スペック」、つまり、人間界にはいないレベルの素晴らしいスペックの人の実在を信じていては、仕事にならないのではないでしょうか。

歴史小説上の「坂本龍馬」と比べれば、どんな生身の起業家も平凡に見えてくる。カエサルと比べれば、どんな大企業のCEOもつまらないおじさんに見えてくる。まるで、美食に明け暮れた人が、質素な食事に満足できなくなったようなものです。

読書はノンフィクションの方が仕事に役立つ

人事が知るべきなのは「生身の人間」

日々存在しない「理想の人物」を追い求めていては、不満が溜まるばかり。余暇に楽しみとしてエンタテイメントを読むのはよくても、仕事としてのインプットはもっと現実に近い、生身の人間を知るようにした方がよいのではないでしょうか。

直裁的に言えば「人間はグレーな存在であり、偉い人でも醜い部分もダメな部分もある」ということを理解する方が、人事の仕事上は有効です。

個人的には、ある人を理想的な人物と想定し、裏切られても「人を信じて傷つく方がいい」と考えるスタンスは好きです。しかし、人事は前向きな意味で「人は所詮こんなもの」と考えておく方が、様々な組織課題に対して現実的な処方ができると思います。

「生々しいストーリー」を見据える

お勧めなのは、近現代のノンフィクションです。遠い昔の英雄の話ではなくて、近い時代に活躍していた人々についての話です。

例えば、正力松太郎を描いた『巨怪伝』(文春文庫)などを読むと、彼が超絶にすごいとは思うものの、それなりに結構まずいことをしているのではないかと思います。

しかし、人間はそんなものなのです。完璧な人などいません。そして、人事としては、人間というのは「そういうもの」なんだと思えることが大事だと思うのです。

理想的な人物像を前提として組織作りや人事をしていたら、きれいに設計することはできます。しかし、人間は基本グレーです。本当はそれを前提としないと、良い人事は難しいでしょう。

筆者:曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/
■オンラインサロン《「本当のこと」しか言わない 就職の学校》
https://lounge.dmm.com/detail/1461/

曽和利光:人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則

¥ 1836

「リクルート⇒ライフネット生命⇒オープンハウス」で人事・採用責任者を歴任した著者が明かす、人を動かし、組織を伸ばす人材マネジメント。

この企業情報の記事作成

人事コンサルティング、採用アウトソーシング、新卒人材紹介を行う株式会社人材研究所 代表取締役社長。

関連する投稿


いろんな人を採れば、組織は本当に「創造的」になるのか?

いろんな人を採れば、組織は本当に「創造的」になるのか?

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は、人事採用担当者の課題とされている「ダイバシティ」について考えます。組織における人材の多様性向上は疑うべくもない常識とされつつありますが、それは本当に正しいのでしょうか。

採用担当者があなたの会社を魅力的にする


面接で誤って落とされる優秀な人の特徴 採用担当者は「バランス型」を見逃すな

面接で誤って落とされる優秀な人の特徴 採用担当者は「バランス型」を見逃すな

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は、本当は優秀なのに面接などで落とされがちな人のパターンとその理由を考えます。採用担当者は誤った判断で人材を見逃してしまわないように注意しましょう。

採用担当者があなたの会社を魅力的にする


厳選採用は逆効果!? 人材採用の「生産性向上」はこうすれば実現できる

厳選採用は逆効果!? 人材採用の「生産性向上」はこうすれば実現できる

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は人事で進められている「厳選採用」について。生産性向上の名のもとに行われている取り組みですが、果たして目的は達せられているのかという指摘です。

採用担当者があなたの会社を魅力的にする


御社の面接担当者には「インタビュー」と「人の見立て」の基本能力が備わっているか?

御社の面接担当者には「インタビュー」と「人の見立て」の基本能力が備わっているか?

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は「面接担当者に求められる基本的な能力」について。人事は「採用基準の目線合わせ」を重視するところが多いですが、もっと大事なことがあるのではないかという指摘です。

採用担当者があなたの会社を魅力的にする


候補者の緊張を解きほぐしてこそ「プロの採用面接担当者」だ

候補者の緊張を解きほぐしてこそ「プロの採用面接担当者」だ

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は「面接の場での緊張」について。候補者が緊張するのは当たり前。上手にアイスブレークし、異常時ではなく「ふつうの場」で本性を見るのがプロだという指摘です。

採用担当者があなたの会社を魅力的にする


最新の投稿


「国内コンビニ事業」前年同期比減 セブン&アイ・ホールディングスに死角はないか?

「国内コンビニ事業」前年同期比減 セブン&アイ・ホールディングスに死角はないか?

コンビニエンスストア「セブン-イレブン」のフランチャイズオーナーと本部が、24時間営業の継続などをめぐって対立するニュースが流れています。この背景には、セブン&アイグループの問題は関係していないでしょうか。第3四半期決算報告会の説明資料から読み解きます。

投資家向け


いろんな人を採れば、組織は本当に「創造的」になるのか?

いろんな人を採れば、組織は本当に「創造的」になるのか?

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は、人事採用担当者の課題とされている「ダイバシティ」について考えます。組織における人材の多様性向上は疑うべくもない常識とされつつありますが、それは本当に正しいのでしょうか。

採用担当者があなたの会社を魅力的にする


【即席麺メーカー】日清食品HD、東洋水産 比較――就職・転職するならどの会社

【即席麺メーカー】日清食品HD、東洋水産 比較――就職・転職するならどの会社

今回は即席麺メーカーから日清食品HDと東洋水産の2社について比較します。朝ドラのテーマとして再注目されている日本が誇る即席麺業界について、今回は上場しているトップ2社の財務面から特徴を洗い出します。就職・転職活動の参考になれば幸いです。

業界研究


「ZOZO離れ」は深刻な問題なのか? 決算説明会資料から占う将来性

「ZOZO離れ」は深刻な問題なのか? 決算説明会資料から占う将来性

若者に人気のアパレルECサイト「ZOZOTOWN」に対する批判的な報道が、ここのところ相次いでいます。「ZOZO離れ」という言葉も見られますが、運営する株式会社ZOZOの行く先には本当に暗雲が垂れ込めているのでしょうか。同社の決算説明会の資料を参考に、情報を整理してみました。

ZOZO 投資家向け


ぐるなびの業績悪化は、楽天との資本業務提携で改善できるのか?

ぐるなびの業績悪化は、楽天との資本業務提携で改善できるのか?

「加盟店の解約増加で大失速」とネットで話題になっている株式会社ぐるなび。創業者の滝久雄会長は2018年7月、保有株式の一部を楽天に売って資本業務提携を締結しました。すでに会員の新規獲得数やネット予約件数で効果が現れているようですが、今後の見通しはどうなのでしょうか。

投資家向け


wiget_w640
wiget_w300 wiget_w300
wiget_w300