「ブラック企業」では高いレベルの仕事はできない 化学品輸送・日陸の決意

「ブラック企業」では高いレベルの仕事はできない 化学品輸送・日陸の決意

皇居にほど近い興和一橋ビルに本社を構える、株式会社日陸。戦後、タンク貨車のリースを生業とする日本陸運産業として設立され、いまでは海外10か国の現地法人を含むグループ従業員数は950人を数えるまでに成長している。日陸代表取締役の能登洋一社長に話を聞いた。


「小さくともダイヤモンドの如く。みんなの幸せを」という企業理念を掲げる日陸は、物流業が産業の基幹をなしていることに誇りを持ち、「倫理に基づく行動」と「法の遵守」と「安全の重視」を基本に置いた業務を行っている。

一般消費者向けの商品を扱っていないので知名度は高くないが、実は高い専門性で私たちの生活を陰で支える「知る人ぞ知る」会社だという。どういう仕事をしているのだろうか。

化学品の物流をワンストップで担えるのが強み

――御社の名前は一般的にはあまり知られていないと思うのですが、どういう仕事をしている会社なのですか。

能登 ひとことで言うと、化学品の総合物流会社です。素材をそのままの状態で個別包装をせずに大量にものを運ぶことを「バルク」といいますが、タンク貨車やタンクローリー、タンクコンテナなどによる化学品のバルク輸送を得意としています。

ただ、化学品の輸送といっても、トラックや鉄道による国内輸送だけでなく、国際的な海上・航空輸出入業務が必要になる場合も多いですし、保管・貯蔵のための倉庫やタンクヤード、輸送容器のリース・レンタルなど幅広いノウハウが必要です。これらを広くカバーし、クライアントの要望にワンストップで応えられるのが当社の強みといえるでしょう。

株式会社日陸 代表取締役社長 能登 洋一
1949年11月17日生まれ
1973年4月 株式会社日陸入社
1990年9月 NRSアメリカ(現NRS Logistics Inc)副社長
2002年4月 ISOコンテナ営業部部長
2005年4月 フォワーディング業務部長
2006年12月 取締役フォワーディング業務部長
2010年7月 常務取締役業務本部長
2011年10月より現職

――扱っている化学品は「危険物」でもありますね。

能登 確かに化学品は、安定性の低い液体や気体の状態では、爆発の恐れがあったり、強い毒性を持ったりするものもあります。しかしその一方で、私たちが日常生活で使うものの多くは化学品を原料としており、社会にとって不可欠なものです。このデスクもファイルもボールペンも、みんな化学品で作られているのですから。

当社はそのような化学品を、安全かつ円滑に輸送する「社会インフラ」として、さまざまなノウハウを持っています。日本最大規模の危険物倉庫のほか、マイナス20度の危険物を運ぶことができる車両や温度管理倉庫を使った物流サービスを提供しています。

――「社会インフラ」となると、責任が重い仕事です。

能登 ええ、ですから当社社員のほとんどは危険物取扱主任者の資格者です。化学品輸送の専用容器の開発も行っており、ISO規格を満たすタンクコンテナ(液体輸送用コンテナ)や、国連規制を満たすIBCと呼ばれる中型容器やUNポータブルタンクなどは得意分野です。

また、化学品の円滑な輸送には、国内外の規制を熟知し、遵守しながら行政機関との調整を行うノウハウも必要です。危険物の国際輸送に関する国連勧告に基づくルールや、輸送の実態を踏まえ、国内の規制見直しに向けて行政へ働きかけを行うこともあります。

社員が幸せにならないと「いい仕事」はできない

――化学品という危険物を扱う面もそうですが、物流の世界は一般的に厳しく過酷な「ブラック労働」というイメージがあります。

能登 いえ、当社では決してそのようなことはありません。私たちは化学品専門の輸送会社としてレベルの高い仕事をしなければならないわけですが、レベルの高い仕事をするためには「ブラック企業」ではいられないのです。

従業員へのきちんとした教育・研修が欠かせませんし、組織としても安全や規制に対するコンプライアンス態勢の整備も必要です。

ちゃんとした賃金も大事です。これまでも社員の幸せを考えて経営してきたつもりですが、今後10年間で労働人口が2割も減っていく中で会社がブラックなことをしていては、人が集まりませんし仕事にもなりません。

優秀な人材に「この会社に入ってよかった」と感じてもらうためには、十分な休暇も必要です。現場を含めて完全週休2日制を徹底しなければなりませんし、どうやって残業を減らそうか、有給休暇の消化率をどうやってあげようかという話もしています。社員が幸せになるということがベースにないと、いい仕事はできないのです。

日陸の得意分野のひとつ「タンクコンテナ」

――巷には、時短をしても、かえって仕事がハードになり、手当も減ったりしてメリットが少ないという声があります。

能登 当社では、利益が出たら社員に還元するので、みんなでその原資を稼ごうと呼びかけています。そのためには、会社として設備投資も必要ですが、同時に「業務の生産性を上げるために何をすべきなのか」ということを社員が考える意識改革も必要になります。

当社の中期経営計画では、現状の売上レベルで2年後の経常利益を1.5倍にしようという目標を掲げています。私は、それは可能だと思うのです。そして、その増えた分の3割はボーナスとして従業員に優先的に支給すると約束しています。

大事なのは「現場とのコミュニケーション」

――生産性向上のために、現在どのような取り組みをされていますか。

能登 各職場に生産性に関する目標を立ててもらい、実行を通じて成功体験を持ってもらう取り組みを進めています。先日も、社員が5人で行っていた仕事が1台の機械でできることが分かったのですが、現場は「機械は高いから自分たちでやる」と言うのですね(笑)。

しかし、長い目で見れば、会社としては機械でできるところは機械に任せ、人間は人間しかできない仕事に回った方が生産性を上げられる。そういう話になり、機械の導入に至りました。こういう成功例を少しでも増やしていきたいと思っています。

さまざまな職種で活躍する社員たち

――すべての職場で人を減らすのは、難しい面もあるのではないですか。

能登 ドライバーの負担や健康維持を考えたら、運送部門は単純に人を減らせないですね。しかし物流部門では、例えば10人でやっていたことを7人でできるようにシステムや機械を利用できることはまだあると考えています。

大事なことは、社員に目標を立ててもらい、それがうまくいく実体験をしてもらい、「あ、やったらできたね」という成功体験を持ってもらうことです。

――そういう工夫や改善を生むためには、何が大事なのでしょう。

能登 いい仕事をするためには、やはりコミュニケーションが大事です。メールや電話だけでなく、現場に足を運び、自分の目で見て直接話をすることです。特に無理なことをお願いするときには、面と向かって対話をする中で、お互いの言いたいことが分かってくる。その中で「では、こうしたらいいのでは?」といった新しい解決策が出てくるものなのです。

「好奇心」をもって仕事にあたれる人を期待したい

――最後に、御社が求める人材像について教えてください。

能登 化学の知識はあるに越したことはないのですが、化学品メーカーほど不可欠な条件ではありません。会社に入ってから学べることも多いですし、「仕事に対して好奇心を持ち、自分から勉強できる人」が望ましい人材といえますね。

クライアントから「こういうものを運びたい」「こういうものをいつ使いたい」と相談を受けたとき、日陸の持っている専門的なパーツを組み合わせ、ワンストップで対応できるのが当社の強みです。その強みをうまく使える人が大事になってきます。

クライアントが求める物流をワンストップに実現できる体制が強み

また、クライアントが海外、とりわけアジア地区で業績を伸ばす中で、当社もグローバル展開をいっそう進めなければならないでしょう。バルク輸送のノウハウを食品原料などの化学品以外に応用することも考えており、会社の将来性はまだまだ残されています。

自分が関わっている仕事に興味を持ち、「お客様のためにどういう提案をするのが一番よいのか」というアイデアを考えることを楽しめる人、社内の専門家の知識をうまく組み合わせてお客様の課題に応えられるような人の応募をお待ちしています。