新日鐵住金が“戦前回帰”の社名変更 「古きよき日本の組織」で世界に勝てるのか

新日鐵住金が“戦前回帰”の社名変更 「古きよき日本の組織」で世界に勝てるのか

新日鐵住金が、社名を「日本製鉄」に変更する。いろいろな思惑はあるようだが、形の上では結果的に財閥解体前の名前に戻ることになる。これを「戦前回帰」と疑う人もいるようだが――。


鉄鋼国内トップの新日鐵住金が、2019年4月から社名を「日本製鉄」に変更すると発表した。朝日新聞などは「グローバル市場で、日本発祥の製鉄会社をアピールできる包摂的な商号にするため」(5月16日付け)という会社の言い分を報じた。

その一方で、日経新聞は“捨てた「対等」の建前”(5月17日付け)という見出しで、2012年の合併以来の「スローM&A」、つまり旧新日本製鐵の主導による旧住友金属の6年をかけた吸収合併の締めくくり、という見方を示している。

「日本企業の良いところも悪いところも凝縮した社風」

言うまでもなく「日本製鉄」は、旧新日本製鐵の昔の名前と同じだ。官営の八幡製鐵所を源流とする旧日本製鐵は1950年、財閥解体の一環で八幡製鐵と富士製鐵へと分割を余儀なくされた。この2社が経済成長期の1970年に、新日本製鐵として再び合併する。

日本語の社名に「新」はついたが、英語は「NIPPON STEEL CORPORATION」とした。「鉄は国家なり」と言われた明治時代の官営製鉄所をルーツとし、日本製鐵の血を引く会社であることを密かにアピールしているかのようだ。

住友金属との合併後も、英語は「NIPPON STEEL & SUMITOMO METAL CORPORATION」のまま。旧新日鐵の流れを汲む人たちが「いずれ伝統ある“日本製鐵”に戻す」という念願を温めていたのかと驚かされる。

企業口コミサイト「キャリコネ」には、新日鐵住金の「伝統的な日本企業ぶり」に戸惑う20代男性の書き込みが2015年に残されている。

やはりここにも「旧官営八幡製鉄所」の名前が登場する。いまでも社内には「鉄は国家なり」の意識が脈々と息づいているのだろうか。

「旧新日鐵」と「旧住金」では社員の満足度も異なる?

典型的な日本企業ということは、派閥による社内闘争もあるのだろうか。30代男性社員による最近の書き込みは、そのようなネガティブな点を否定している。

その一方で別の30代男性によれば、やはり合併による悪影響はあるという。

同じ環境でも、立場によって感じ方が変わる。もしかすると、前者の書き込みは旧新日鐵、後者は旧住金の社員かもしれない。

2016年4月には、総務部門で働く女性の派遣社員がこんな書き込みをしている。なかなか辛辣な見方だ。すべての社員が出身会社の影響を強く受けるわけではないが、比較的ニュートラルな見方である可能性はある。

「日本企業の雄」という高い意識はあるが

いずれにしても、旧新日鐵の社員を中心として、国を代表する鉄鋼会社としてのプライドが社内を覆っていそうだ。そのような高い視点で事業を推進することは立派と思う一方、会社の歴史を知らない人は「そんな会社なの?」と意外に思うに違いない。

ある30代の男性社員は2015年10月の書き込みで、こう指摘している。

新しい会社の名前は、厳密には「鐵」の字が新字となり、読みも「にほん」から「にっぽん」に変わる。とはいえ、戦前の社名に戻すことにこだわったような会社の姿勢は、社外の人たちからは理解しにくい。この男性は、こうも書いている。

「島耕作」が何を指すのかは不明だが、社内政治が渦巻くニッポンのサラリーマン社会というイメージが浮かぶ。しかし、いまや粗鋼生産量では世界トップのミタルの半分。国としても中国に遠く及ばず、3位のインドにも追いつかれた。戦うべき敵は外にいるのだ。

ちなみに日本郵船など海運大手3社は、定期コンテナ船の合弁会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」を4月から稼働しているが、この事業運営を行う会社はシンガポールにあり、CEOには英国人のジェレミー・ニクソン氏が就任している。

新日鐵住金も本来であれば「古きよき日本の組織」を打破し、トップに外国人を招くなどしてグローバルな会社づくりに舵を切るべきではないのだろうか。そんな中で「日本製鉄」への回帰とは、感覚が古すぎて「3周遅れ」になると不安視する社員の気持ちも、分からないではない。

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