【巨大流通グループ】イオン VS セブン&アイ――就職・転職するならどの会社?

【巨大流通グループ】イオン VS セブン&アイ――就職・転職するならどの会社?

今回は日本を代表する二大総合流通グループであるイオンとセブンを比較していきます。皆さんの生活にはなくてはならない存在になっている両社ですが、それぞれ戦略が異なっています。そこで今回は財務諸表を参考に両社の戦略の違いを比べていきます。


会社の成り立ち

(1) イオン

イオンは国内にGMS(総合スーパー)626店舗、国内外にモール型ショッピングセンター303モールを有する国内トップの流通グループです。傘下に296社の連結子会社と32社の持分法適用会社を有しており、小売以外にも不動産運営やクレジット等の金融ビジネスなど幅広く展開しています。

1758年に三重・四日市で創業された「岡田屋」が源流です。同社の根幹を作った7代目社長で現名誉会長・岡田卓也氏の「狸や狐の出る場所に出店せよ」という言葉通り、地方郊外で大規模なショッピングモールを建設してきました。近年はダイエーやウェルシアグループを傘下に入れ、多角化を図っています。現CEOの岡田元也氏は、衆議院議員・岡田克也氏の実兄。平均年収は812万円です。

【ラテン語で「永遠」】イオン(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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就職・転職するなら「イオン株式会社」。総合スーパー「AEON(イオン)」やモール型ショッピングセンター「イオンモール」などを展開する企業。世界13カ国で、小売を中心に金融、ディベロッパー、サービスなど300社を超える企業を擁している。自社ブランド「TOPVALUE」は食品・衣料・日用雑貨など、様々な商品を展開。5期連続で国内小売業で営業収益第1位を達成。

(2)セブン(正式名称;セブン&アイホールディングス)

1920年に「羊華堂洋品店」から出発したセブンは、米国で運営していた「セブンイレブン」や「デニーズ」といったブランドを日本で普及させ、2005年に3社を経営統合させて誕生しました。

2017年2月末時点で国内19,422店舗と国内トップのコンビニチェーンであるセブンイレブンを中心に、M&Aを通じて盤石な経営体制を築いています。2005年にそごう・西武百貨店の親会社であった旧・ミレミアムリテイリングを傘下に入れて百貨店事業を拡大する一方、創業の源流である米・セブンイレブンの経営破綻後に買収し北米に8707店舗を有しています。店舗以外ではネットショッピング事業を拡大中。平均年収は713万円です。

【ネット通販と競争】(株)セブン&アイ・ホールディングスに就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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就職・転職するなら「株式会社セブン&アイ・ホールディングス」。セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、セブン銀行、そごう・西武、ロフト、アカチャンホンポ、デニーズなど幅広い事業会社を傘下に持つ持株会社。カリスマ的存在だった鈴木敏文会長兼CEOは、2016年5月26日の株主総会で社長兼COOの村田紀敏氏とともに退任。井阪隆一社長の下で「脱・鈴木体制」が進行中である。

事業の収益構造

(1) 売上規模

イオンとセブンは共に2月決算となっています。2014~2017年度の売上高の4期平均はイオンが7兆9639億円、セブンが5兆9895億円となり、イオンがセブンを上回っています。2017年度のイオングループ連結の売上高は、なんと8兆円を超えています。

2社の売上高は、国内百貨店業界トップである三越伊勢丹ホールディングスの4期平均売上高である1兆2704億円を遥かに凌駕しており、国内での存在感の高さを物語っています。

イオンは、同業スーパーのダイエーやユナイテッド・スーパーマーケットHD、ドラッグストア大手のウェルシアHD等のM&Aを積極的に行い、3期連続で増収を続けています。2017年度も完全子会社化したダイエーの売上高の寄与もあり増収を見込んでいます。

(2) 営業利益と利益率

営業利益4期平均では、セブンが2786億円、イオンは1595億円と順位が逆転します。両社とも4期連続増益ですが、フランチャイズビジネスが中心のセブンがイオンに対して高い営業利益を残しています。

また、本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の4期平均では、セブンが4.7%、イオンが2.0%でした。両社ともPBブランドを積極的に展開しており、今後はこれらのブランド価値向上と取引量増加によって利益率改善につなげられるかが注目です。

(3) セグメント別売上構成

イオン(2018年2月期)の報告セグメント別売上高構成比を見てみると、マックスバリュ等のスーパーやミニストップ等コンビニが含まれる「SM(スーパーマーケット)事業」が36.1%、イオンスタイル等の総合スーパーを運営するの「GMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)事業」が34.4%で、これらを合わせると全体の7割を占めます。

その他、イオンディライトやイオンファンタジー、イオンモール等の「サービス・専門店事業」が8.6%、ウェルシア等の「ドラッグ・ファーマシー事業」が7.8%、アセアンや中国等での「国際事業」が4.7%、クレジットカードや銀行等の「総合金融事業」が4.5%、ショッピングセンターの開発および賃貸を行う「ディベロッパー事業」が3.7%、「その他事業」で0.1%となりました。

一方、セグメント利益は、「総合金融事業」が33.0%、「ディベロッパー事業」が24.4%が占めています。売上高比率で10%も満たない2セグメントが、利益の過半数を占めているという状況です。とはいえ、これらの事業が高収益を上げられるのも、小売あってのことでしょう。

その他、売上高で最大だった「SM事業」が14.5%、「ドラッグ・ファーマシー事業」が13.1%、「サービス・専門店事業」が9.6%、「GMS事業」が5.0%、「国際事業」が0.1%、「その他事業」が0.2%です。GMS事業単独では利益率がかなり低いようです。

地域別売上高は、日本が91.5%を占め、アセアンが4.0%、中国が3.1%、その他が1.4%でした。

セブン(2018年2月期)の報告セグメント別売上高は米セブン-イレブンを運営する「海外コンビニエンスストア事業」が32.4%、イトーヨーカ堂等の「スーパーストア事業」が31.1%、セブン-イレブンを筆頭とした「国内コンビニエンスストア事業」が15.2%で、これらを合わせると全体の8割近くを占めます。海外コンビニの貢献度が意外に高いです。

その他、西武百貨店等の「百貨店事業」が10.8%、デニーズやアカチャンホンポ等の「専門店事業」が6.8%、セブン銀行等の「金融関連事業」が3.3%、「その他事業」が0.4%です。

セグメント利益では、売上高では15%しかなかった「国内コンビニエンスストア事業」が60.6%を占めています。それだけ高い利益性があるということになります。セブン-イレブンはFCオーナーからのライセンスフィーが、同社の安定した収入に寄与しています。

その他、「海外コンビニエンスストア事業」が19.5%、「金融関連事業」が12.3%、「スーパーストア事業」が5.3%、「百貨店事業」が1.3%、「専門店事業」が0.1%、「その他事業」が0.9%となりました。イオン同様、金融関連事業の利益性が高いです。

地域別売上高では、日本が64.7%、北米が33.4%、その他地域が1.9%となっています。2005年にグループ完全子会社となった米セブン-イレブンが海外展開の一翼を担っています。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

セブンは「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

一方イオンは「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」で、借入や資金調達を行いながら投資を行っているタイプです。

(2) 収益性

企業が本業で生み出したキャッシュを測る「営業キャッシュフロー」の4期平均は、セブンが4791億円、イオンが3001億円です。

イオンは2016年度に大きく営業キャッシュフローを減少させていますが、これは金融事業における貸出の増加といった一時的な要因です。セブンは比較的横ばいで推移しており、安定的に営業キャッシュフローを稼げています。

営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の4期平均は、セブンが8.0%、イオンが3.8%です。特にセブンは、キャッシュを稼ぐ力が強いです。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の4期平均は、セブンが2.1倍、イオンが6.9倍です。営業キャッシュフローが多いせいもありますが、セブンの安定性は非常に高いです。

両社とも有利子負債残高を増やし、大型ショッピングモール開発等への積極投資に充てる傾向にありますが、セブンは2017年度のみ返済に回っています。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」4期平均は、イオンがマイナス3760億円、セブンがマイナス3046億円で、両社とも積極的な投資となっています。

子会社の完全子会社化やM&Aを行うイオンは、2016年度は固定資産の売却等を行ったため、前年よりもマイナス幅が小さくなっています。セブンはセブンイレブン店舗の新規出店等を継続的に行っており、2016年度までの3期連続でマイナス幅を増やしていましたが、2017年度はマイナスがやや少なくなっています。

資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の4期平均は、イオンがプラス1297億円で、セブンがマイナス821億円でした。セブンは社債償還や配当支払等の資金返済傾向にある一方、イオンは社債や長期借入れ等の資金調達を伴った財務戦略を取っています。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の2014~2016年度の3期平均は、イオンが204.9%、セブンは79.3%です。

イオンは年間で稼ぐ営業キャッシュフローの2倍以上の設備投資を行っており、設備投資額は2014年以降3期連続増加と、身の丈以上のレバレッジ経営を行なっています。セブンも設備投資は増加傾向にありますが、年間の営業キャッシュフロー内での投資に留め、安全性重視の経営戦略をとっています。

まとめ

以上、両社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。


  • 国内外で総合スーパーやショッピングモールを経営するイオンですが、レバレッジをかけた経営で拡大への勢いは強いものの、収益性にいまひとつ懸念があります。直近の事業利益を支える金融事業や、EC台頭の現代におけるネットモールの強化が成長の鍵となります。

  • 国内トップのコンビニエンスストア網を有するセブンは、小売業でも比較的高い収益性を有している点と安全性の高さについて評価できます。コンビニ業界の激戦が激しい中、他業種との提携を通じて「コンビニ」というインフラを生かしたビジネスに期待したいです。

日本国民の生活に欠かせないサービスを提供するイオンとセブンですが、人口減に伴う内需縮小の影響は避けられないでしょう。国内で高収益性を誇るセブン-イレブンも、ショッピングモール等を中核とした事業シナジーで収益を上げているイオンも同じです。

いずれのグループも、様々な事業を行いながら課題を抱えています。就職や転職を考えるときには、グループ全体の行く末を考えながら、どの事業会社に勤めるべきか、よく考えてみる必要があるでしょう。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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