【中堅運送・3PL業界研究】日立物流・西濃運輸・山九・センコー 比較――就職・転職するならどの会社?

【中堅運送・3PL業界研究】日立物流・西濃運輸・山九・センコー 比較――就職・転職するならどの会社?

今回は日本企業の物流を支える運送業界から、中堅運送業の日立物流・セイノーHD・山九・センコーGHDについて見ていきます。特に企業から物流部門の業務委託を行う「3PL」(サードパーティ・ロジスティクス)事業で成長している会社です。今回は4社の財務面から分析し、特徴を洗い出します。就職・転職活動の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

日本の運送業界では、宅配便大手のヤマトホールディングス(ヤマト運輸)や、佐川急便ブランドのSGホールディングス、国際的物流会社の日本通運、民営化を果たした日本郵便の規模が大きいです。しかしBtoBの世界においては、中堅運送業界の存在が必要不可欠です。

(1) 日立物流

日本を代表する電機メーカー「日立グループ」の物流事業会社として創業し、大株主の日立グループの輸送や倉庫業を担っています。近年は売上の16.6%を占める日立グループへの業務依存からの脱却を図るべく、アディダスジャパンの物流・倉庫事業を筆頭に3PL事業を拡大し、日本で首位を誇ります。

2016年に佐川急便およびSGホールディングスとの資本業務提携によって、日立が保有する株式の一部がSGホールディングスに売却され、日立・佐川グループ両傘下に入る形となっています。社員の平均年収は773万円です。

(2) セイノーホールディングス

主要子会社は。カンガルー便でお馴染みの西濃運輸です。1930年に田口利八氏によって創業された運送業・田口自動車が源流で、現社長も含め田口家のオーナー経営です。岐阜県大垣市を拠点として路線トラック運送においては業界の草分けであり、早くから全国網のトラックネットワークを張り、現在においても業界最大手です。

2009年に西武グループから「西武運輸」を買収、2018年には阪急阪神エキスプレスとの資本業務提携など法人向けで拡大する一方、トヨタカローラ岐阜や岐阜日野自動車等の自動車販売業も行っています。社員の平均年収は516万円です。

(3) 山九(サンキュー)

福岡の北九州の地で創業し、大株主にも名を連ねる新日鐵住金を始め、三菱重工業や旭硝子、P&Gジャパンといった大荷主を抱える総合物流会社です。1905年に創業者・中村精七郎氏が鉄鉱石および石炭の海運輸送を行っていた会社が発端で、以後中村家によるオーナー一族による経営が取られています。

社名の由来は創業時に九州・山陽地方で事業をしていた点、感謝の気持ちの英語「サンキュー」を組み合わせた造語です。物流のほか、工場の建設や改修保守等の機工事業も手がけています。社員の平均年収は566万円です。

(4) センコーグループホールディングス

旧財閥の日窒コンツェルンの物流部門が、戦後の財閥解体で1946年に扇興運輸商事として再出発しました。旧日窒グループの積水ハウス、積水化学、旭化成を中心に、化学製品の輸送や建材輸送を主に行っています。

イオングループやオンワード、H2Oリテイリング等の物流業務委託や、旭化成ホームズの住宅物流を手がけるほか、近年は家庭紙卸売のアストをはじめとした他事業のM&Aにも積極的です。社員の平均年収は558万円です。

事業の収益構造

(1) 売上規模

2014〜2017年度の売上高の4期平均は、日立物流が6812億円、セイノーHDが5654億円、山九が5032億円、センコーGHDが4450億円です。

各社とも3PL事業が好調で増収傾向です。海外売上比率が28%を占める日立物流は、円高の影響で2016年度に前年比減収となりましたが、2017年度では増収へ戻っています。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の4期平均は、日立物流が270億円、山九が261億円、セイノーHDが256億円、センコーGHDが163億円です。山九は物流事業と機工事業双方とも好調で、2017年度は4社中トップの営業利益316億円を出しています。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の4期平均は、山九が5.2%、セイノーHDが4.5%、日立物流が4.0%、センコーGHDが3.7%でした。センコーGHDの利益率低下は、2013年のアスト買収をはじめとするM&Aによるのれん費用の増加等が影響しています。

(3) セグメント別売上構成

日立物流(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、国内物流事業が60.9%と半数以上を占めます。次に国際物流事業が34.3%、その他事業が4.8%です。

セグメント利益では、国内物流事業が74.1%と利益の3分の2以上を占めます。国際物流事業が19.3%、その他事業が6.6%です。日立グループを始めとする日本企業からの国内物流事業が同社を支えます。

地域別売上高では、日本が71.9%、欧州が9.1%、中国が6.8%、アジアが6.1%、北米が5.3%、その他地域で0.8%です。日立物流の海外拠点は398か所で、国内拠点の333か所を上回ります。

セイノーHD(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、カンガルー便ブランドを含めたメイン事業の「輸送事業」が69.9%を占めます。トヨタや日野のディーラー事業である「自動車販売事業」が17.9%、燃料や紙製品の販売を行う「物品販売事業」が7.8%、「不動産賃貸事業」が0.3%、その他事業が4.2%です。

セグメント利益では輸送事業が71.9%、自動車販売事業が18.2%、不動産賃貸事業が4.6%、物品販売事業が2.8%、その他事業が2.6%です。不動産賃貸事業の利益率が高いです。地域別売上高は日本が90%以上を占めます。

山九(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、3PLを中心に国内外で物流を担う「物流事業」が50.2%、プラント建設及び整備・管理を行う「機工事業」が43.6%、その他事業が6.2%です。

セグメント利益では、機工事業の利益率が高く67.9%を占めます。物流事業は28.2%、その他事業が4.0%です。売上高で過半数を占めている物流事業ですが、営業利益では3割未満という意外な結果となっています。

地域別売上高は日本が84.2%、アジアが13.9%、北・南米その他地域が1.8%です。大株主でもある新日鐵住金は、売上比率が全体の14.1%を占める上得意です。

センコーGHD(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、3PLを中心に事業を行っている「物流事業」が67.5%、石油販売や商社事業を行う「商事・貿易事業」が30.6%、その他事業が1.9%です。

セグメント利益は物流事業が76.7%、商事・貿易事業が18.3%、その他事業が5.0%です。近年は物流事業以外の分野でのM&Aを中心に取り組んでおり、セグメント比率が変わってきています。地域別売上高は国内が90%以上を占めます。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

セイノーHDと山久、センコーGHDは「優良企業型(営業+/投資-/財務−)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

日立物流は「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」で、本業で生み出したキャッシュ以上に資金調達を伴いながら投資を行っているタイプです。

(2) 収益性

企業が本業でキャッシュをどれくらい生み出したかを測った「営業キャッシュフロー」の2014〜2017年度までの4期平均は、セイノーHDが313億円、日立物流が312億円、山九が279億円、センコーGHDが152億円です。

4期連続で営業キャッシュフローを伸ばしたセイノーHDに対し、2015年度に法人税の支払い等でキャッシュアウトが大きかった山九が営業キャッシュフローを減らしています。

営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の4期平均は、セイノーHDと山九がともに5.5%、日立物流が4.6%、センコーGHDが4.5%です。セイノーHDは4期連続で安定的に営業キャッシュフローを増やし、収益性も高めています。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の4期平均は、セイノーHDが0.6倍と「実質無借金経営」。山九が2.4倍、日立物流が4.2倍、センコーGHDが5.0倍です。各社ともトラックを含めた車両運搬具の設備投資に資金が掛かりますが、安全性は比較的高いです。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の4期平均は、日立物流がマイナス264億円、セイノーHDがマイナス213億円、山九がマイナス156億円、センコーGHDがマイナス152億円です。

日立物流は、2016年度に持分法で会計処理している投資分668億円を取得する処理を行ったため、マイナス690億円と単年で大きなマイナスを計上し、平均値で大きな影響を及ぼしました。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の4期平均は、中間配当の実施や有利子負債削減を行った山九がマイナス123億円、セイノーHDがマイナス39億円、センコーGHDがマイナス35億円。日立物流はプラス27億円となりました。

日立物流は、長期借入で1245億円の資金調達を行い、2016年度の単年でプラス556億円となっています。2018年に創業100周年を迎える山九は、記念配当などによる財務キャッシュフローの返済傾向が続くと想定されます。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の2014年から2016年までの3期平均は、セイノーHDが552.3%、日立物流が467.9%、センコーGHDが249.1%、山九が101.0%です。

各社とも身の丈以上の100%を超えていますが、全国にトラック網を有するセイノーHDを始め、各社とも安定かつ安全な物流網を構築する上での設備投資や車両運搬具の設備更新は必要不可欠です。

セイノーHDは営業キャッシュフローの5倍以上の設備投資を行っているものの、有利子負債キャッシュフロー倍率は1倍割れとなっており、手元キャッシュを活用した投資を行っている健全投資と言えます。

まとめ

以上、4社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。


  • 日立グループへの依存から、同業のSGホールディングスへのW傘下入りに経営転換した日立物流は、有力なバック2社の支援の元、国内外の3PL事業を拡大していくことが想定されます。海外比率が高い点が成長性を期待させます。

  • 安全性及び収益性が業界内でも高いセイノーHDは、田口社長を筆頭にオーナー会社の強みを存分に発揮し、国内の企業向け物流を支えています。物流以外にも地元岐阜県で自動車販売事業を行い、多角にビジネスをしている点も評価できます。

  • 新日鐵住金をはじめとする大企業を大荷主としている山九は、物流事業は一定の位置にいるものの、収益面ではプラント建設等の機工事業が同社を支えます。2018年に迎える創業100周年は、創業以来中村家による経営が上手くいっている証拠です。

  • 積水ハウスや旭化成など化学・住宅の面での物流に強いセンコーGHDは、同業から収益性や安全性の面で遅れを取っています。進めている他業種へのM&Aを含め、収益の柱となる事業の成長・発掘が必要となっています。

経済の血液とも言われる物流業界は、目に見えないところで企業と消費者をつなげる重要なパイプ役を担っています。人手不足もあって近年は値上げ傾向にあり、前年より10%以上値上げをする会社も出てきています。

製造業をはじめとして管理が難しい物流事業をアウトソーシングしたい企業も増加しており、3PL事業への需要は今後ますます見込めます。AIやIoTなど新しいテクノロジーを取り込みながら物流の将来をクリエイティブに考えられる人材が求められており、採用熱と年収向上が見込めるでしょう。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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