大日本印刷の社長「3代目世襲」を社員はどう見ているのか

大日本印刷の社長「3代目世襲」を社員はどう見ているのか

大日本印刷が、39年ぶりの社長交代を発表した。次期社長は現社長の長男。これで前社長を含め3代続けて「北島家」から社長が輩出されることになる。企業口コミサイト「キャリコネ」で、社員の反応を見てみた。


東証一部上場企業でありながら、大手印刷会社の社長が39年も交代しなかったことや、オーナー家でもない北島家から次期社長が誕生すること、84歳の現社長が代表権のある会長職として残ることなどについて、ネットには驚きや疑問の声があがっている。

「競争を勝ち抜いてきた訳でもないのに」と批判も

明治9年に創立した秀英舎だが、創業者に北島家の人物は入っておらず、世襲が始まったのは先代の社長である北島織衛氏から。

NHKは5月11日のニュースで「3代続けての"世襲"となり、大手の上場企業としては異例の人事」と報じたうえ、世襲批判に対する会社の反論を載せている。

「"息子ありき"で選んだわけではなく、候補者の中から適任者を選んだ

ネットには「三代目」世襲を揶揄する声があるが、これは以前からの既定路線だったらしい。企業口コミサイトの「キャリコネ」には、大日本印刷で研究開発に携わっていた20代男性が、2010年の時点で世襲制批判を書き込んでいた。

この「高報酬」とは、現社長の北島義俊氏に対する2010年3月期の役員報酬7億8700万円が、日本人最高額となったことを指しているのだろう。従業員の年間平均給与647万円との「年収格差」が122倍にのぼったことも話題となった。

翌2011年にも、20代男性が同様の書き込みを残している。

現状に満足する社員「長い休みも取りやすい」

確かに大日本印刷の営業利益は、2006年3月期をピークに大きく落ち込んでいる。ちなみに日本で初めてiPhoneが発売されたのは2008年7月だ。2009年度と2010年度にはピーク時の半数程度にまで持ち直したものの、2011年度に再び落ち込み、それ以降は大きく浮かび上がっていない。

ここ数年の営業利益は横ばいのようにも見えるが、企業の収益性を測る「営業キャッシュフローマージン」を見ると、右肩下がりの傾向は改善していない。キャッシュを稼ぐ力が弱まっており、「印刷」という産業の現状を如実に反映しているグラフといえるだろう。

大日本印刷の営業利益と営業キャッシュフローマージン(2003年3月期~2018年3月期)

会社の業績が落ち込めば、世襲経営者の手腕に疑問を呈する人が出ても当然のことだ。しかし、その後の「キャリコネ」の口コミを見ると、前述の男性のような厳しい批判を書き込んでいる人は見当たらない。むしろ現状にそこそこ満足している人が多いようだ。

業績はライバルの凸版印刷と大きく変わらず、3位の共同印刷にも追い上げられていない。もしかすると別の社長が就任していれば、もっと高い業績を上げていたかもしれないが、まずまずの待遇で雇用も保障されていれば強い不満も起こらないのだろう。

リストラさえなければ「世襲」も好都合?

もちろん、社長の選任は株主総会で行うため、手続きに齟齬がなければ批判される筋合いもない。一部社員の批判はあるものの、社長の「世襲」は社内にも問題なく受け入れられそうだ。日経新聞の記事で、次期社長の義斉氏はこう答えている。

印刷業は取引先との信頼関係など人脈が重要で、安定的な成長を達成できる」

印刷会社は、大手取引先からの受注産業であり、重厚な装置産業という側面もある。連結売上高が1兆4000億円超、社員も3万8000人超という巨大な会社では、社長ひとりの影響はさほど大きくないという可能性もある。

むしろ新社長が短期のV字回復を狙ったスタンドプレーや急速な方向転換を行うと、人員削減やコストカットのリスクがある。そのような心配のない「世襲」なら、社員にとっても当面は好都合だ。

しかし「取引先との信頼関係が重要な印刷業」の時代は終わりつつあり、今後は新しい取引先との関係を含めた新事業への舵取りが求められることだろう。そこに手間取れば「世襲」を理由とした批判も出てくるに違いない。

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