【時計業界研究】カシオ計算機・シチズン時計・セイコーHD比較――就職・転職するならどの会社?

【時計業界研究】カシオ計算機・シチズン時計・セイコーHD比較――就職・転職するならどの会社?

今回は時計業界から、カシオ計算機・シチズン時計・セイコーホールディングスについて見ていきます。海外売上比率が比較的高く、ブランドの認知度もある3社について、財務面から分析し、特徴を洗い出します。就職・転職活動の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

(1) カシオ計算機

1957年に樫尾四兄弟が創業し、当初は機械式計算機や電卓等を製造していました。1983年に落としても壊れないデジタル時計「G-SHOCK」で時計事業に進出し、世界的に人気ブランドとして確立させました。

GPSを搭載した電波時計や、スマートフォン連動のスマートウォッチも展開。時計のほか、デジカメや電子辞書、電子楽器と幅広い「デジタル機器」を製造・販売しています。社員の平均年収は830万円です。

(2) シチズン時計

1930年に懐中時計メーカーとして創業。「シチズン」(CITIZEN)ブランドの自社完成品のほか、クオーツ腕時計の機械体(ムーブメント)の外販大手です。工作機械ブランド「シンコム」でも世界的に知られています。

2008年に米ブローバ、12年にスイスのプロサーホールディング、16年にスイスの高級時計メーカー、フレデリック・コンスタントホールディングを買収するなど世界シェアを拡大しています。社員の平均年収は680万円です。

(3) セイコーホールディングス

服部金太郎氏が1881年に服部時計店を創業。中古時計の買取・修繕を行っていましたが、その後、日本初の腕時計や世界初のクォーツウォッチを製品化。水晶発振器用ICは世界シェア首位の電子デバイス事業も擁しています。

プリンター等のセイコーエプソンと、電子デバイスや情報機器、電子辞書等のセイコーインスツルは兄弟会社ですが、資本関係は薄く親子関係はありません。社員の平均年収は828万円ですが、持株会社なのでグループ全体の傾向を反映しているとは限りません。

事業の収益構造

(1) 売上規模

2014~2016年度の3期間平均と、2017年度の予想値を見ていきます。売上高の3期平均は、カシオが3373億円、シチズンが3298億円、セイコーが2824億円です。

3社ともこの3期はほぼ横ばいで、2017年は増収を見込んでいますが、順位に変動はありません。カシオは中国向けG-SHOCKの売れ行きが好調です。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均は、カシオが365億円、シチズンが266億円、セイコーが108億円です。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均は、カシオが10.8%、シチズンが8.1%、セイコーが3.8%でした。セイコーは、電子デバイス事業のテコ入れ等で利益率が低くなっています。

(3) セグメント別売上構成

カシオ計算機(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、時計や電子辞書、電卓、電子楽器、デジタルカメラ等の「コンシューマ事業」が83.1%と全体の8割超を占めます。レジスターやオフィスコンピュータ、プロジェクター等の「システム事業」が12.1%、金型事業等を含む「その他事業」で4.7%です。

セグメント利益は、コンシューマ事業が105.4%、システム事業でマイナス6.3%、その他事業が0.9%。もっとも利益率の高い本業が会社を支えています。

所在地別収益は、日本が33.3%、アジアが27.2%、欧州が15.3%、北米が12.8%、その他地域が11.4%です。

シチズン時計(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、時計やムーブメントの製造販売を行う「時計事業」が51.7%。自動車部品やスイッチ、水晶振動子等を製造する「デバイス事業」が22.6%、シンコムブランドでNC旋盤機等の製造販売を行う「工作機械事業」が15.9%、プリンターや電卓の製造を行う「電子機器事業」が6.9%、その他事業が2.8%です。

セグメント利益は、時計事業が56.3%、デバイス事業が15.5%、工作機械事業の24.9%、電子機器事業が2.0%、その他事業が1.3%です。

所在地別収益は、日本が33.0%、アジアが32.8%(うち中国が23.9%)、アメリカが19.0%(うち米国のみが14.1%)、欧州が14.2%、その他地域が0.9%です。カシオと同様、国内売上が3分の1程度で、海外比率が高いです。

セイコーHD(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、時計およびムーブメントの「ウォッチ事業」が50.6%、半導体等の製造を行う「電子デバイス事業」が31.6%、無線通信機器や情報ネットワークシステムの構築を行う「システムソリューション事業」が7.6%、その他事業が10.2%です。

セグメント利益は、ウォッチ事業が58.5%、電子デバイス事業が29.3%、システムソリューション事業が9.9%、その他事業が2.3%。本業のウォッチ事業の利益率が高いです。

所在地別収益は、日本が52.4%、中国が16.6%、その他地域が30.9%です。他の2社と比べると国内比率が半数超と高く、中国以外の海外比率も低いです。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

カシオとシチズンは「優良企業型(営業+/投資-/財務−)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

セイコーは「ダウンサイジング型(営業+/投資+/財務−)」で、不採算事業の売却等で生まれた資金を借入金返済等に充て、事業縮小をかけているタイプです。

(2) 収益性

企業が本業で生み出したキャッシュを測る「営業キャッシュフロー」の3期平均は、シチズンが306億円、カシオが305億円、セイコーが120億円です。

海外M&Aに積極的なシチズンは、3期連続で増やしています。セイコーは3期連続で縮小しており、キャッシュを稼げなくなっています。

営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、シチズンが9.3%、カシオが9.0%、セイコーが4.2%でした。セイコーは収益性の改善が必要です。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、シチズンが2.1倍、カシオが2.5倍、セイコーが10.7倍です。

キャッシュフローが小さいセイコーは、危険水域である10倍を上回っています。適度な借入や資金調達を行っています。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均は、シチズンがマイナス206億円、カシオがマイナス19億円ですが、セイコーはプラス82億円と資産の売却を行っています。

シチズンはM&A投資を強化し、海外市場の拡大を図っています。セイコーは2014年度に不採算事業の売却等を行ったことから463億円のプラスとなっていますが、2015年度以降はマイナスに転じています。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、カシオがマイナス277億円、セイコーがマイナス226億円、シチズンはマイナス142億円です。

3社とも配当利回りが3%前後と高く、株主還元に積極的です。そのため資金返済傾向にあります。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、セイコーが709.6%、カシオが171.1%、シチズンが151.8%です。

100%を超えると営業キャッシュフロー以上の「身の丈以上」投資を行っていると言われますが、3社とも大きく超えています。テクニカルセンターなどの設備投資が大きい点は致し方ありませんが、安全性で危険水域のセイコーが身の丈を超える設備投資を行っている点は気になるところです。

まとめ

以上、3社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。


  • G-SHOCKが世界的に人気のカシオは、ハイエンドモデルを揃えるなど中国や新興国向けに市場を拡大しています。海外売上比率が高い点はよいのですが、セグメント利益がマイナスのシステム事業などの行方に注目です。

  • 海外M&Aで営業キャッシュフローを伸ばしているシチズンは、外販ムーブメントが好調です。子会社のシチズンマシナリーによる工作機械事業が売上・利益を伸ばしているところが頼もしいです。

  • 収益性や安全性に問題があると見られるセイコーは、営業キャッシュフローを立て直すことが先決です。海外比率を高めるべきでしょう。ただし2017年度は電子デバイス事業で増益が見込まれており、株価も上昇しているところです。

2018年4月24日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)では、セイコーが高級ブランド「グランドセイコー」の女性向け機械式時計を組み立てる場面が紹介されていました。

欧州の新興ブランドが新素材を開発するなどライバルの強力さが増す中で、今後は海外において厳しい競争が予想されます。「Made in Japan」をもって世界で戦いたい人には、絶好の職場ではないでしょうか。

【世界初が多い発明企業】カシオ計算機(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/415

就職・転職するなら「カシオ計算機株式会社」。腕時計や計算機で世界的に知名度の高いカシオ計算機。世界初の小型純電気式計算機の商品化を皮切りに、インクジェットプリンタやパーソナル電卓も世界初の商品化を実現。時計ブランドの「G-SHOCK」は1983年に1号機が発売され、今なお人気のブランドである。

【海外メーカーを買収】シチズン時計(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/428

就職・転職するなら「シチズン時計株式会社」。日本を代表する時計メーカー。光発電時計販売40周年となる2016年10月1日、純粋持株会社から事業持株会社に移行し、それに伴い社名をシチズンホールディングスからシチズン時計株式会社に変更。代表的なブランドはエコ・ドライブ ワン、xC(クロスシー)など。

【水晶発振器用ICで世界首位】セイコーホールディングス(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/800

セイコーホールディングスは時計における世界的なリーディングカンパニー「セイコーウオッチ」を中核としたセイコーグループの持株会社。オリンピックなどの国際的な競技大会で使用されるタイム計測器を開発・提供するなど、その技術と精度は高い評価を受けている。他にセイコーインスツル株式会社、セイコーエプソン株式会社がある。

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アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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