日本郵政「正社員の待遇下げ」報道はミスリード? 労組は「年収ベースで下がるケースは生じない」

日本郵政「正社員の待遇下げ」報道はミスリード? 労組は「年収ベースで下がるケースは生じない」

正社員と非正規社員の格差を縮めるために、正社員の待遇を一方的に下げた? そんな朝日新聞の報道に、ネットは大騒ぎ。ウェブメディアも追随したが、記事の内容をよく見てみると、不正確で誤解を煽っているような気がしてならない。


正社員と非正規社員との間に横たわる「理不尽な格差」を、どう解消するか。この問題について、ひとつの方向性が示された。2018年4月13日付けの朝日新聞は「正社員の待遇下げ格差是正 日本郵政、一部の住居手当廃止へ」という記事を朝刊一面に掲げた。

日本郵政が「同一労働同一賃金」を、非正規社員の待遇引き上げでなく、正社員側の待遇引き下げによって実現した、という趣旨の見出しだ。このニュースはネットで大きな話題となり、特に働く正社員側からは激しい批判が相次いでいる。

「バカ、逆だ!!」と批判が殺到したけれど

朝日新聞は大企業サラリーマンの利害を代弁し、「正社員には、今後のさらなる不利益変更に警戒感が広がる」と批判的な論調を煽っている。ハフィントンポスト日本版もこれに追随し、朝日新聞の同記事をソースとして、

「じゃあ正社員の待遇を下げます 正規・非正規の「格差」日本郵政が異例の是正策」

と見出しを付けかえて配信。ずるい抜け道を使ったような印象を強調した。ツイッターには、これらの記事を引用しながら会社を激しく批判する投稿が相次いだ。

「バカ、逆だ!! 非正規に手当てをつけろボケ!!」
「同一労働同一賃金というのは言わずもがな、全く同じ労働に従事しながら正規労働者に対して低い待遇を強いられている非正規労働者の待遇を、正規労働者並みに引き上げようというのが本来の趣旨」
「非正規の待遇が低いのが問題なのであって、正社員の待遇が高すぎるわけではない」

その一方で、非正規社員の立場から、この流れは誤っていないと擁護する声もある。

「正しい方向。日本は『正社員』を厚遇しすぎ」
「まあ減らされる人は当然不満だろう。しかし、資金が有限な以上、こういう措置は仕方がない。これまでは非正社員に負担を過大にかぶせていたのだから」
「非正規を正社員なみに引き上げたら経営厳しくなって倒産とかしない?倒産したら逆に困るんだし、正社員を下げて非正規をその分あげるのが正しいんじゃないの?」

「年始手当」は新たに非正規社員にも支給

ただし記事を丁寧に読むと、正社員の待遇だけを下げたのではなく、手当支給の必要性について検証し、見直しを行ったということもできそうだ。

例えば「年末年始勤務手当」は、正社員の年末手当を廃止するが、年始手当は新たに非正規社員にも支給することになっている。この点を見れば「非正規に手当てをつけろボケ!!」という批判は的外れになる。

「寒冷地手当」と「隔遠地手当」は、正社員の支給額を削減するが、非正社員にも支給しない。「住居手当」は、転居を伴う転勤のない正社員への支給は廃止し、非正社員にも支給しないという決定だ。「扶養手当」については継続協議となっている。

それでも、住宅に関する手当などが削減されるのは納得できないという声があるが、これも方向性として仕方がないのではないかという指摘があった。

「同一労働同一賃金というのは、生活給的な制度設計から職務給にあらためるということだろうから、手当の廃止はその原則にかなうのではないかな」

手当削減で正社員の働きが悪くなるのでは、という疑念に対しても、「心配しなくていい。君たちが『郵便局の人』と思っている人のほとんどは非正規だ。後ろのほうでふんぞり返っている人だけが正社員だから」と、非正規社員の待遇アップを正当化する声もあった。

「単なる不利益変更ではない」前提の妥結では

人事コンサルタントの城繁幸氏は、朝日新聞の記事に対し「ややミスリード。本来は手当みたいな根拠のよく分からないものを減らして給与に含めようという流れの一環なのだが」とツイッターでコメントしている。

この指摘を裏付けるように、JP労組の春闘交渉の資料には、一方的な不利益変更を生じさせないという前提で労使交渉に臨む方針が示されている。中央闘争本部による3月20日付け「2018春闘最終回答の主な内容」には、交渉の考え方が次のように記されている。

「詳細なシミュレーションの結果、経済要求に対する回答をもって、当面、年収ベースでは引き下がるケースは生じない」
「手当見直しの影響について属人的なシミュレーションを継続し、年収ベースで引き下がる可能性が確認された場合は、個別具体的な収入保障の検討を求めていきます」

この点について、日本郵政グループ労働組合に電話取材を申し込んだが、担当者が出張中ということで直接の回答が得られなかった。

しかし、この資料を踏まえる限り、労組は一部で手当の削減はあるものの、年間一時金(賞与)が4.3カ月分支給されるなど他の要素が組合の要求通りになれば、全体として「正社員の待遇引き下げ」にはならないという見込みの中で、会社との交渉を妥結したことになる。

朝日新聞やハフポストのミスリードである可能性が濃厚だが、反射的に「バカ、逆だ!!」と釣られる読者も、記事を読まずに早とちりだったと反省すべきではないだろうか。

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