【スーパーゼネコン業界研究】大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設 比較――就職・転職するならどの会社?

【スーパーゼネコン業界研究】大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設 比較――就職・転職するならどの会社?

今回はスーパーゼネコン5社のうち、上場している大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設について見ていきます。日本の建設業を牽引する4社を財務面から分析し、特徴を洗い出します。就職・転職活動の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

日本には多くの建設会社がありますが、中でもスーパーゼネコンと呼ばれている「大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店」の5社が日本の建設業のトップに君臨しています。竹中工務店は非上場会社であるため、今回は上場会社である4社を比較します。

(1) 大林組

1892年に大林芳五郎氏が大阪で創業した土木建築請負業者で、大林家によって長く経営されてきました。阪神甲子園球場大阪城天守閣など関西を代表する建造物の建築を行ってきました。

近年では、関西は明石海峡大橋や梅田スカイビル、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン等、関東では東京スカイツリー六本木ヒルズ森タワーなどを建造。北米やアジアを中心に海外進出にも積極的です。社員の平均年収は950万円です。

(2) 鹿島建設

1840年に鹿島岩吉氏が現在の東京・四谷の地で創業。鹿島家による同族色の強い会社です。都市部の超高層ビル建設や耐震技術、原発技術に高い強みを有しているのが特徴です。東京駅八重洲口再開発や丸の内駅舎復原工事を行なった実績があります。

有名な建造物では、フジテレビ本社ビルや霞が関ビルディング、両国国技館や西武ドームのドーム化などがあります。その他、国内の原子力発電所や水力発電用ダム、新幹線トンネルなどの実績があります。社員の平均年収は947万円です。

(3) 清水建設

4社の中では一番歴史が古く、1804年に現在の東京神田の地に清水喜助氏によって創業されました。清水家の色の強い会社です。

有名な建造物では、サンシャイン60警視庁本部庁舎、日テレ本社や東京大学安田講堂などがあります。最近は環境エネルギーへの注力や月面探査機開発ベンチャーに投資をするなど事業領域を広げています。社員の平均年収は966万円です。

(4) 大成建設

1873年に大倉喜八郎氏によって創業された同社ですが、1946年に社員によって同社が買収されて以降、非同族会社に変わりました。市街地再開発に強みを有し、超高層ビルやダム、橋やトンネルなどを多く手がけています。

有名な建造物にはホテルオークラ東京横浜ランドマークタワーがあり、東京アクアライン横浜ベイブリッジといったインフラ開発の実績もあります。海外ではクアラルンプール国際空港ボスポラス海峡横断鉄道トンネルなどの実績を持っています。社員の平均年収は950万円です。

事業の収益構造

(1) 売上規模

4社とも3月決算なので、2017年3月期決算を含む3期間の業績を見ていきます。売上高の3期平均は、大林組が1兆8081億円、鹿島建設が1兆7527億円、清水建設が1兆6000億円、大成建設が1兆5354億円です。

4社とも肩を並べていますが、大林組と鹿島建設は海外事業が好調で3期連続増収の一方、大成建設は土木事業の不振もあり3期連続減収となっています。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均では、大成建設が1095億円と4社中トップ。続いて大林組が961億円、鹿島建設が930億円、清水建設が911億円となりました。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均は、大成建設が7.1%、清水建設が5.7%、大林組と鹿島建設が並んで5.3%となりました。業種の特質もあって上場企業の利益率期待水準の10%には達していませんが、4社とも3期連続で営業増益となっており、利益率も3期連続で向上しています。

(3) セグメント別売上構成

大林組(2017年3月期)のセグメント別売上高構成比は、国内建築事業が54.6%、海外建築事業が18.9%、国内土木事業が18.2%、海外土木事業が4.2%、不動産事業が2.1%、その他事業が2.0%です。

地域別売上収益は、日本が75.9%、北米が15.9%、アジアが7.9%、その他地域で0.3%です。

セグメント利益は国内建築事業が61.7%、国内土木事業が30.2%、不動産事業が5.3%、海外建築事業が3.6%、海外土木事業がマイナス2.4%、その他事業が1.6%です。大手ゼネコンの中では海外比率が最も高くなっています。

鹿島建設(同上)のセグメント別売上高構成比は、建築事業が42.5%。海外での建設及び開発事業を行う海外関係会社事業で20.4%、国内の建設資材販売や専門工事請負、リースや賃貸管理業等を束ねた国内関係会社事業で18.4%、土木事業が15.1%、都市開発などを手がける開発事業等で3.7%となっています。

製品及びサービス別の内訳では、建設事業が87.9%、開発事業が5.5%、その他が6.5%。地域別売上収益は、日本が77.9%、北米が12.0%、アジアが6.2%、欧州が0.9%、その他地域で3.0%となりました。

セグメント利益は、建築事業が50.5%、土木事業が23.1%、国内関係会社事業が12.6%、海外関係会社事業が7.5%、開発事業等が6.3%です。海外事業が利益に貢献する割合が高くなっています。

清水建設(同上)のセグメント別売上高構成比は、当社建設事業が71.8%、当社投資開発事業が1.0%、その他事業27.1%となっています。また建設事業の外部顧客売上高は売上高全体の90.0%となっています。

地域別売上収益は、日本が9割以上を占めています。セグメント利益は、当社建設事業が82.3%、当社投資開発事業が3.9%、その他事業が13.8%となっています。国内の建設事業が同社の生命線です。

大成建設(同上)のセグメント別売上高構成比は、建築事業が62.6%、土木事業が28.8%、開発事業が7.8%、その他事業が0.8%となっています。

地域別売上収益は、日本が90%以上を占めています。セグメント利益は、建築事業が51.3%、土木事業が38.6%、開発事業が9.3%、その他事業が0.8%となっています。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

4社とも「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

ただし各キャッシュフローや有利子負債残高、設備投資の額は大きく異なっています。

(2) 収益性分析

まず収益性を見てみます。営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、大成建設が7.3%、大林組が6.6%、鹿島建設が5.4%、清水建設が5.0%でした。

3期連続で営業キャッシュフローが増加している大成建設と大林組が、少し頭を抜け出しています。売上高営業利益率で2位であった清水建設は、2015年度の営業キャッシュフロー減少が響き、数字を下げています。

(3) 安全性分析

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、大成建設が2.3倍、大林組が2.9倍、鹿島建設が4.5倍、清水建設が5.7倍でした。4社とも「危険水域」といわれる10倍以内に収まっています。

最も収益性が高い大成建設が、安全性の観点でもトップになっている点は評価できます。清水建設以外の3社は3期連続で有利子負債残高を減らし、清水建設も2016年度には減少に転じており、財務健全化を図っていることが見て取れます。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均は、大林組がマイナス311億円、清水建設がマイナス221億円、鹿島建設がマイナス171億円、大成建設がマイナス109億円でした。

鹿島建設は、2014年度はプラスであったものの、2年連続でマイナス幅を拡大させています。大成建設は、2016年度でプラスに転じており、一部資産の売却を行っています。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、大林組がマイナス642億円、大成建設がマイナス419億円、鹿島建設がマイナス348億円、清水建設がマイナス139億円でした。

4社とも配当や自社株買い等での株主還元や、借入金の返済等を行っています。中でも大林組と大成建設は3期連続で財務キャッシュフローのマイナス額を増やしています。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、大林組が36.1%、鹿島建設が31.0%、清水建設が27.4%、大成建設が7.8%でした。

事業規模の割にこの比率が低いのは、建設業はあくまでもクライアントからの受注によって「無いものを創り出す」というビジネスであるため、自社内での設備投資はあまり必要ではないためと思われます。

まとめ

以上、4社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 東京スカイツリーなどシンボルとなる建物を多く手がけている大林組は、大手ゼネコンの中でも海外事業への比率ふとを伸ばそうとしています。海外事業の採算改善が見えてくれば盤石な体制を整えるといえます。

  • 国内のトンネルや橋などのインフラの開発や、超高層ビルの建設ノウハウを有している鹿島建設は、営業利益で4社中トップを走っております。米マンション開発会社を買収するなど海外事業の今後の展開と、リニア工事の行方が同社業績の鍵となります。

  • 海外事業ではやや遅れを取っている清水建設ですが、民間からの建築受注残が安定した業績を作っています。月面探査機ベンチャーへの投資など他業種への投資や、環境エネルギー事業への取り組みが、どのように業績に寄与していくかが気になるところです。

  • 売上高では4社中最も小ぶりですが収益性の高さは1番の大成建設は、海外事業の立て直し中であり、ボスポラス海峡海底トンネルの実績を有して高収益事業をどれだけ造っていけるかが業界トップを目指すための壁でしょう。

無いものをゼロから作り上げていくのがゼネコンで働く楽しみであり、時間軸が長い仕事であるといえるでしょう。「この建物に携わったんだ」といった達成感をやりがいとして抱きたい方にはピッタリな仕事です。年収面でも高く、海外事業にも携われる可能性が高いため、大きなプロジェクトに興味がある方は転職する価値が大いにある業界です。

【平均年収950万円】株式会社大林組に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/234

株式会社大林組は、1892年創業の大手総合建設会社。創業以来、竹中工務店、奥村組、錢高組、鴻池組と並び大阪に拠点を置いていたが、2010年、登記上本店を東京に移転。業績は、国内建設市場の回復や生産性の向上を背景に順調に上向き、2016年度は過去最高益となっている。

【平均年収892万円】鹿島建設(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/204

就職・転職するなら「鹿島建設株式会社」。通称「鹿島」。スーパーゼネコン、日本の最大手総合建設会社である。国内大手ゼネコンとしては、五本の指に入る。1880年(明治13年)創立、さらにその源流は、1840年(天保11年)の大工の棟梁、鹿島岩吉にまで遡る。超高層ビルなどの建築、インフラなどの土木を中心に、海外プロジェクトや、姫路城保存修理なども手掛ける。

【スーパーゼネコン】清水建設株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/2760

江戸時代から続く、国内屈指の大手ゼネコン。建設、土木を基幹事業とし、その他にも投資開発、PFI事業と呼ばれる事業を行っている。PFI事業とは、民間資金などを活用して、公共施設などを建設、運営する事業である。過去3カ年、売上高1兆円以上で推移している。

【地図に残る仕事】大成建設(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/155

就職・転職するなら「大成建設株式会社」。大成建設は東京都新宿区に本社を構え、「地図に残る仕事」を掲げ140年に及ぶ歴史の中で、社会の基盤を支える社会貢献性の高いプロジェクトを数々手がけるスーパーゼネコン5社の一角である。超高層ビルやダム、橋、トンネル、地下鉄などの大規模な建築土木工事に強みを持つ。

【就職・転職】大林組 & 鹿島建設 スーパーゼネコン業界「どれだけ知ってる?」診断

https://tenshock.biz/articles/3374

就職・転職活動中の方はチェック!国内外のビル、マンション、病院、学校等の建設事業や、私たちの生活に関わる国内インフラ整備等の土木事業でしのぎを削る、大林組と鹿島建設。ゼネコン業界を代表する会社で働いてみたいという人たちのために、両社を比較したクイズ形式で知識を診断します。

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アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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