三菱倉庫 三井倉庫 住友倉庫 倉庫業界

【倉庫業界研究】三菱倉庫・三井倉庫・住友倉庫 比較――就職・転職するならどの会社?

【倉庫業界研究】三菱倉庫・三井倉庫・住友倉庫 比較――就職・転職するならどの会社?

今回は倉庫業界のトップ3社について見ていきます。倉庫会社というと「荷物を置く場所を貸す仕事」という印象くらいしかなく、就職・転職先としてイメージが湧かないかもしれません。しかし調べてみると、さまざまな仕事を行っていることが分かります。


倉庫業界の概要

倉庫会社として代表的な事業は、企業から荷物を預かり、保管・管理する仕事です。たとえば都心に事務所を置く会社が、手元に文書等を保管すると場所代が非常にかさむので、倉庫会社に委託します。巨大な倉庫施設を必要とし、現時点では収益率は高いとはいえませんが、継続的な収入がある安定した「BtoB」のインフラビジネスです。

メーカーの工場で製造した製品や、輸入した材料・商品は、その後の流通に備えて港の近くなど移動しやすい場所にまとめて保管する必要があります。製品がデリケートなものであれば、保管・管理する環境にも気を配る必要があり、高いノウハウが求められます。

(三菱倉庫の企業サイトより)

倉庫会社は場所を貸すだけでなく、倉庫からモノを出し入れする仕事にも関わります。庫(くら)入れ、庫出し、荷捌(にさば)き、荷役(にやく)のほか、グループ会社の運輸会社とともに陸上運送や港湾運送、国際運送を行います。倉庫事業から派生して、土地の売買や賃貸、商業ビルの開発などの不動産事業も行っています。

メーカーや小売の流通量に依存する業界ではありますが、ネット通販の伸長が今後も見込まれる中、ロボット・自動化の動きもあり、収益性を改善しながら成長していく可能性のある業界ではないでしょうか。海外に進出し、物流拠点を開発する会社もあります。しっかり投資できる会社とそうでない会社で、今後大きな差がつく可能性もあります。

会社の成り立ち

(1) 三菱倉庫

1887年に三菱財閥の倉庫業として設立された「東京倉庫」が前身の、国内トップの倉庫会社です。三菱グループ内外問わず取引があり、東京と神戸に日本最大の倉庫があります。

不動産事業では、横浜や神戸の商業施設や分譲マンションを開発し、オフィスビルも所有。非常時発電機能や高耐震性の「データセンタ対応ビル」も複数所有しています。

三菱倉庫株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/769

物流事業を始め、不動産開発・賃貸事業、船舶登録事業、トランクルーム事業を展開する企業。特に物流事業事業は120年の伝統を誇り、日本最大の倉庫を保有している。本店のあった「江戸橋倉庫ビル」は、東京都選定歴史的建造物の選定を受けており、建て替え後もその外観を残している。

(2) 三井倉庫

2014年に持株会社制に移行し「三井倉庫ホールディングス株式会社」へ社名変更。1909年に三井銀行の倉庫部より独立してできた倉庫会社です。

24都道府県に自社倉庫を所有。世界20か国の現地法人等を通じて世界的な物流ビジネスも展開しています。

三井倉庫ホールディングス(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/754/

1909年創業の三井グループの物流持株会社。倉庫事業、港湾運送事業、国際輸送などの物流事業のほか、都市部の所有地を活用した不動産賃貸事業をおこなっている。近年はBPOや3PLも展開。国内24都道府県、世界20カ国30海外現地法人のネットワークを持つ。傘下に三井倉庫、三井倉庫ロジスティクス、三井倉庫インターナショナル等。

(3) 住友倉庫

1899年に住友本店倉庫部として創業。欧米、中東、東南アジアに拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。

2011年には米国の海運会社ウエストウッドシッピングラインズの全株式を取得し、子会社化。港湾運送と海運、国際輸送で売上高の6割近くをあげています。

株式会社住友倉庫に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/947

株式会社住友倉庫は、本店及び本社を大阪市北区に置く物流企業。住友グループ広報委員会および白水会に加盟している。本社、子会社53社および関連会社10社で構成されており、倉庫、港湾運送、国際輸送などの物流事業、船舶運航事業を中心とした海運事業ならびに都市部の所有地を活用した不動産賃貸事業を営んでいる。

事業の収益構造

(1) 売上規模

2014年度から2016年度までの売上高の3期平均は、三菱倉庫が2066億円、三井倉庫が2029億円、住友倉庫が1707億円です。三菱倉庫は3期横ばいで安定。三井倉庫は不動産事業を中心に賃料収入を伸ばし連続増収。2015年度と2016年度は、三菱倉庫を上回っています。住友倉庫は海運事業の運賃引き下げ等の影響で3期連続減収です。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均では、三井倉庫と住友倉庫の順位が入れ替わっています。三菱倉庫の118億円、住友倉庫の97億円に対し、三井倉庫が50億円となっています。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均でも、三菱倉庫と住友倉庫は5.7%で並んでいますが、三井倉庫は2.5%。2015年度は1%台になっています。売上高が最も低かった住友倉庫が、営業利益で健闘。2015年度は三菱倉庫に匹敵するほどの額となっています。

(3) セグメント別売上構成比

三菱倉庫(2017年3月期)の報告セグメント別売上高構成比は、倉庫・港湾運送等の物流事業が80.1%を占めていますが、不動産事業の割合も19.9%と比較的高いです。地域別売上高は、日本が89.9%、その他地域が10.1%です。

倉庫会社の不動産事業は、物流に適さなくなった土地を再開発する形で行われる場合が多いです。三菱倉庫の場合、東京の日本橋ダイヤビルディングなどのオフィスビル開発、埼玉・戸田ショッピングセンターなどの商業施設開発、ザ・パークハウス神戸タワーなどの分譲マンション開発のほか、ホテル開発や貸会議室運営などを行っています。

三井倉庫(2017年3月期)報告セグメント別売上構成比は、物流事業が96.1%で、不動産事業が3.9%。地域別では日本が72.5%、その他地域が27.5%で、海外事業の割合が他社よりも高いのが特徴です。

三井倉庫HDの傘下には、三井倉庫インターナショナルという会社があり、企業サイトには「30年以上培った海外進出の歴史と、グローバルロジスティクスを熟知したスタッフ」がクライアントを支えると書かれています。

住友倉庫(2017年3月期)の報告セグメント別売上高構成比は、物流事業が78.9%、海運事業が15.1%、不動産事業が5.9%です。地域別では、日本が74.6%、米国が15.9%、その他地域が9.6%です。

また、企業サイトで公開している連結営業収益の構成比(2016年3月末)によると、港湾運送が21%、国際運送が20%、海運が17%、陸上輸送が15%、倉庫が13%、不動産が8%、その他が5%と細分化されており、倉庫を中心に多様な事業を行っていることが分かります。

物流事業から海運事業が独立しており、売上高の2割近くを占めており、港湾運送などを加えるとさらに高い比率になるのが特徴です。ただし2016年度の海運事業は、海上運賃の大幅な下落に加え、林産品やコンテナ貨物の取扱い減少などから大幅減収となり、営業利益がマイナスになりました。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

三菱倉庫と住友倉庫は、ともに「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。

三井倉庫は「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」で、積極的に借入等による資金調達を行い、投資を行っているタイプです。以下で詳しく見ていきます。

(2) 収益性分析

まず収益性を見てみます。営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、三菱倉庫と住友倉庫がともに9.6%、三井倉庫が5.2%となりました。

この数字は10%以上あると望ましいとされていますが、三井倉庫が最も低い結果になりましたが、3期連続で営業キャッシュフローを増やしており、今後の収益改善が見込まれます。

(3) 安全性分析

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、三菱倉庫が3.6倍、住友倉庫が4.6倍でした。三菱倉庫は3期連続で有利子負債残高を減らしています。

一方、三井倉庫は14.5倍と高い倍率となっています。海外M&A等を積極的に行っている影響もあり、3期連続で有利子負債残高を増やしています。「危険水域」といわれる10倍(営業キャッシュフローでの返済にかかる期間が10年)を上回るほどの積極性で、今後の推移が注目されます。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均は、三井倉庫がマイナス212億円、三菱倉庫がマイナス166億円、住友倉庫がマイナス106億円です。特に三井倉庫は企業M&A等を通じて、将来の収益の柱の確保に動いています。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、住友倉庫がマイナス49億円、三菱倉庫がマイナス47億円である一方、三井倉庫がプラス159億円と借入等を積極的に行っています。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、住友倉庫は71.6%にとどまっている一方、三井倉庫は127.2%、三菱倉庫は102.1%で、ともに年度の営業キャッシュフロー(3期平均)を超える大型投資をしています。

まとめ

以上、3社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 国内で盤石な地位を築く三菱倉庫ですが、約1割にとどまる海外事業の拡大が課題です。2017年にはインドネシアに新たな配送センターが開業。国内でも大阪に医薬品対応倉庫の建設に着手したと報じられており、物流の高度化を図っています。

  • 将来的な成長を目指して積極的な投資を行う三井倉庫は、売上高こそ業界2位ですが、有利子負債が嵩んで安全性に黄信号が出ています。会社が傾くことはありませんが、3社のうち最も低い収益性を改善することが課題です。

  • 住友倉庫は、業界トップの三菱倉庫に匹敵する高い収益性が魅力で、今後は海運事業の収益改善も期待できます。設備投資も身の丈で安全性も高いです。業界全体で自動化・ロボット化などへの対応が必要になる際に、さらなる投資が求められることでしょう。

最後に「キャリタス就活2018」の就活生総合人気ランキングと、DODAの転職人気企業ランキング2017を見てみると、3社ともランク外でした。「倉庫会社」というと華やかなイメージはありませんが、インフラ会社として経営が安定しており、今後はIT投資などを行いながら業態を大きく変えていくことを考えると、この3社に限らず魅力的な業界のひとつではないでしょうか。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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