【M&Aコンサル業界研究】日本M&Aセンター vs GCA比較――就職・転職するならどの会社?

【M&Aコンサル業界研究】日本M&Aセンター vs GCA比較――就職・転職するならどの会社?

今回はM&A(企業合併・買収)に関する経営コンサルタント会社である、日本M&AセンターとGCAの2社を比較します。両社とも高給で知られていますが、ビジネス手法が対照的といっていいほど異なります。就職・転職にあたっては注意が必要です。


会社の成り立ち

(1) 日本M&Aセンター

外資系SIerの旧・日本オリベッティ社出身の分林保弘氏と三宅卓氏によって、1991年に創業されました。会計事務所担当だった分林氏の人脈を生かして全国の会計士・税理士をネットワーク化し、中堅・中小企業のM&A仲介(両社から報酬を受け取るモデル)を専門に手がけています。

得意分野は、中堅・中小企業の親族外への事業承継を目的とするM&A。2017年現在、提携会計事務所は670か所以上。地方銀行の9割、信用金庫の8割と提携関係を結んでいます。創業以来3,500件以上のM&A仲介は、業界1位。2016年度の従業員平均年間給与は1,419万円となっています。

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就職・転職するなら「株式会社日本M&Aセンター」。中堅・中小企業の友好的M&Aを仲介する会社。1991年設立。成約支援数3,000件は国内トップの実績といわれる。徹底した成果主義で知られ、週刊東洋経済調べによる「生涯給料トップ500社」ランキング2015年版で2位、2016年版で8位(5億414万円)で、大手商社や広告代理店を上回る平均年収を誇る。

(2) GCA

公認会計士の渡辺章博氏と当時PEファンドを運営していた佐山展生氏によって、2004年に創設された「完全独立系M&Aアドバイザリーファーム」。米サヴィアン社や英アルティウム社といった海外企業との経営統合を通じ、日本に軸足を置きつつ世界10カ国15拠点で事業を展開しています。

M&Aの買収・売却企業の間に立つ「仲介」ではなく、片方の企業アドバイザリーとしてサポートする形を取っています。2016年度の従業員平均年間給与は2,139万円と、国内随一の高給を誇ります。

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金融機関や監査法人などの系列に属さない独立系M&Aアドバイザリー専門集団。売り手と買い手の双方から手数料を得る仲介業務は行わない。2016年8月にイスラエルと欧州に拠点を持つ英アルティウムと経営統合するなど、10か国15拠点でグローバルに展開している。

事業の収益構造

(1) 売上規模

同じM&A業界でありながら、似て非なる業態の両社ですが、2014年度から2016年度までの売上高の3期平均は、日本M&Aセンターが153億円、GCAが149億円と、ほぼ肩を並べています。両社とも3期連続増収で、M&A需要の高まりを感じさせます。

日本M&Aセンターはコンサルタントの積極的な採用を行い、2013年度から3年間で115名から221名まで増やしました。その結果、中堅・中小企業向けM&Aの成約件数は、2013年度の256件から3年間で524件と倍以上に増えています。

GCAは2016年度に欧州・アルティウム社を買収したことで、年換算売上高が86億円押し上げられており、グローバルな業容拡大を図っています。

(2) 営業利益と利益率

一方、営業利益の3期平均では、GCAの29億円に対し、日本M&Aセンターが73億円と大きく上回っています。本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均でも、GCAの19.7%に対し、日本M&Aセンターが48.1%と非常に高いレベルとなっています。

なお、売上高3期平均が近い経営コンサルタント業の船井総研ホールディングスの業績(営業利益34億円、利益率23.7%)と比べても、GCAの利益率の低さが目立ちますが、上記の通り海外企業の買収等による先行投資を行っており、今後の改善が期待されます。

(3) セグメント別売上構成比

日本M&AセンターとGCAは、ともに経営コンサルタント業であり、売上原価の大半を「人件費」と「営業コスト」「システム費」が占めています。

日本M&Aセンターは「M&A仲介事業」の単一セグメントで、所在地別売上高も日本が9割以上を占めています。2016年度の売上原価明細書は30億5958万円で、271名の平均年間給与は1418万円となっています。

GCA(2016年12月期)の事業セグメント別売上高構成比は、M&Aのアドバイザリー事業が94.3%で、メザニンファンド等のアセットマネジメント事業が5.7%。営業利益もアドバイザリー事業が9割を占めています。

所在地別は日本が42.4%と半数未満で、続いて米国が36.6%、欧州が19.9%、その他が1.1%となっています。売上原価明細書から把握できる人件費は29億7600万円で、平均年間給与2139万円は国内上場会社随一となっています。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

日本M&Aセンターは、「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながらも、借入金の返済などができているタイプです。

一方のGCAは、一般的に「再構築型(営業+/投資+/財務-)」といわれる型で、保有資産等の処分を行いつつ、借入金等を返済する事業集約傾向の企業に見られる特徴を有しています。しかし海外企業の買収などを行っており、決して事業を縮小しているわけではありません。

営業キャッシュフローは、日本M&AセンターがGCAの約2倍の数字を上げている一方で、有利子負債がゼロのGCAは投資キャッシュフローがプラスと企業戦略が大きく異なります。それではより詳しく見ていきたいと思います。

(2) 収益性分析

まず収益性を見てみます。営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、日本M&Aセンターが34.4%、GCAが18.2%となりました。この数字は10%以上あると望ましいとされており、両者とも上回っていますが、売上高営業利益率と同様に、日本M&AセンターがGCAを上回っています。

営業キャッシュフローは、2014年度こそGCAが上回っていたものの、2015年度と2016年度は落ち込んでいます。逆に日本M&Aセンターは、3期連続で営業キャッシュフローを伸ばしています。

(3) 安全性分析

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、GCAが驚異の0倍。有利子負債残高が3期通してゼロの「完全無借金経営」です。

日本M&Aセンターも、0.3倍と高い安全性を示しています。2015年度までは1億円の有利子負債残高と無借金経営でしたが、2016年度に45億円に増やしており、方針転換が感じられます。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」では、3期平均で日本M&Aセンターのマイナス33億円に対し、GCAがプラス1億円。日本M&Aセンターは定期預金を中心に、余剰資金投資を行っています。GCAは買収したアルティウム社の買収資金に対するプラス分が発生しているようです。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、日本M&Aセンターがマイナス18億円、GCAがマイナス11億円。両社とも3期連続で財務キャッシュフローのマイナス額が増えており、自社株買いや配当の支払等による株主還元を充実させていることがわかります。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、日本M&Aセンターが3.8%、設備投資のないGCAは0%となっています。両社とも設備投資より、有能なコンサルタントの採用が成長の鍵です。

まとめ

以上、両社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 事業承継に悩む国内中堅・中小企業のM&A仲介に特化している日本M&Aセンターは、高い成長率と収益率、そして安全性を兼ね備えた企業です。ただし団塊世代経営者のリタイアによる事業承継の国内需要が一巡したときに、経営スタイルをどう変えていくのかが注目です。

  • 独立系M&AアドバイザリーファームのGCAは、日米欧でバランスよくビジネスをしており、今後もグローバルに成長していくでしょう。営業利益や営業キャッシュフローは日本M&Aセンターに劣りますが、将来の海外での市場拡大が期待されます。

最後に、学生の「就活生」と社会人の「転職志望者」での人気を参考に見てみましょう。「キャリタス就活2018」の就活生総合人気ランキングでも、dodaの転職人気企業ランキング2017でも、両者はランク外となりました。中途採用のヘッドハンティングが中心とみられますが、公開求人もあるため、金融業界の経験者はチェックしてみてはいかがでしょうか。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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