【ネット業界研究】ヤフー VS 楽天 比較――就職・転職するならどの会社?

【ネット業界研究】ヤフー VS 楽天 比較――就職・転職するならどの会社?

今回はヤフーと楽天を比較します。2017年12月22日時点での時価総額は、ヤフーが2兆9452億円、楽天が1兆4783億円と巨額。メガベンチャーとして並び称されるサイバーエージェントの5556億円や、DeNAの3497億円を大きく引き離しています。就職・転職先選びの参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

(1) ヤフー

1996年1月に、米Yahoo!とソフトバンクの合弁会社として設立。初代社長は孫正義氏です。国内初かつ現在でも国内最大級のポータルサイトとして、月間150億を超えるページビューを誇ります。

現在は検索連動広告やディスプレイ広告だけでなく、ネットオークションやネットショッピング、データセンター向け法人事業など、収益性の高い事業を幅広く行っています。

社内公用語を英語にして世界を目指す楽天と比べると国内志向が強く、売上高の9割超が日本となっています。

(2) 楽天

創業者は現会長兼社長CEOの三木谷浩史氏。旧日本興業銀行に在籍中に、米ハーバード大学でMBAを取得。帰国後は国際M&A業務を担当し、孫正義氏もクライアントだったそうです。

ヤフー設立の翌年となる1997年2月、楽天市場を運営する会社を設立。現在は1億件を超える楽天会員IDを擁し、ネットサービスを軸としながらスポーツチームの運営や金融事業などを幅広く手がけます。

社内公用語を英語にし、外国人従業員の比率が2割強にのぼっており、売上高の2割は海外からもたらされています。この比率は今後急速に増えていくと見られます。

事業の収益構造

(1) 売上規模

2014年度から2016年度までの売上高の3期平均を比較すると、楽天が6980億円、ヤフーが6448億円と肩を並べつつ、楽天がやや上回っています。

両社とも3期連続増収となっていますが、特にヤフーは2014年度から2年間で倍増しています。これによって、2016年度にヤフーが8537億円と、楽天の7819億円を追い抜いています。

なお、ヤフーは2015年に連結子会社化した「アスクル」(オフィス用品の通信販売)や、同じく2016年に連結子会社化した「一休」(高級ホテル・旅館専門予約サイト)が売上高を押し上げています。楽天はこの間、業績に大きく影響を与えるM&Aはありませんでした。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均では、楽天の930億円に対してヤフーが2047億円、本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均でも楽天の13.3%に対してヤフーが31.8%と、いずれも大きく上回りました。

ヤフーは2014年度に46%と極めて高い売上営業利益率を記録しましたが、売上高を伸ばす中で、2016年度には22.5%にまで落ち着いています。

一方、投資を優先する楽天はM&Aや提携件数が多く、利益が押し下げられていると見られますが、全業種平均で4%前後といわれる中で及第点の10%を超えており、利益率に大きな問題があるわけではありません。

(3) セグメント別売上構成比

ヤフーと楽天に共通する点は、売上高構成比では低い割合しか占めていない事業が、営業利益の多くを占めていることです。それはヤフーにとってメディア・広告事業であり、楽天にとってはFintechと呼ばれる金融事業です。

ヤフー(2017年3月期)のサービス別の売上高構成比は、データセンター向け法人事業や不動産情報掲載サービス、アスクル等の法人ビジネスを行う「ビジネス」サービスが45.9%、検索連動広告やディスプレイ広告等の「広告」サービスは33.6%を占めています。

次いで、一般消費者の馴染みが強く、楽天とも競合するヤフオクやショッピング、LOHACOやYahoo!プレミアム等の会員サービス等の「パーソナル」サービスが20.6%。所在地別は日本が90%以上を占めているため情報がありませんでした。

なお、ヤフーは2017年度より開示セグメントを変更しており、これに合わせて遡及修正した2016年度売上高・営業利益の構成比をウェブサイトで公開しています。それによると売上高では、メディア事業が32%、コマース事業が65%、その他が3%となっています。一方で営業利益では、メディア事業が68%、コマース事業が30%、その他が2%となっています。

楽天の報告セグメント別売上収益構成比(2016年12月期)における筆頭は、楽天市場等のインターネットサービス事業で67.7%、楽天カード等のFinTech事業が32.3%となっています。

サービスラインごとの売上高構成比は、楽天市場および楽天トラベルが24.9%と筆頭に上がります。次に楽天カードが13.9%、楽天銀行は7.6%、米国のキャッシュバックウェブサイト「イーベイツ」が6.3%、楽天証券は5.3%、楽天生命が4.2%という比率になっています。

続いて楽天ブックスが3.4%、ケンコーコムは3.2%、米国の図書館向け電子書籍配信サービス「OverDrive」が2.8%、携帯事業の楽天コミュニケーションズは2.5%、東北楽天ゴールデンイーグルスが1.4%、その他が24.5%となっています。

売上高ではメインの楽天市場の存在感が依然として大きいですが、利益額ではFinTech事業が54.1%と過半数を占めており、インターネットサービス事業は45.9%にとどまります。このことから、同社の収益の柱は金融事業に移っているといえるでしょう。

所在地別売上高は、日本が80%と筆頭で、続いて米国が15.4%、欧州は2.9%、その他地域で1.7%となりました。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

ヤフーの企業タイプは「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」です。本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながらも、借入金の返済などができているタイプに属します。

一方の楽天は「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」です。借入等を通じて資金調達を行い、積極的な投資を行いながら経営しているタイプに属します。

営業キャッシュフローはヤフーが楽天を上回っておりますが、投資キャッシュフローは楽天がヤフーの2倍以上となっています。以下で詳しく見ていきます。

【有休取得率78%】ヤフー株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/86

月間650億PVのアクセスを誇る日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営する会社。検索、オークション、ニュース、天気、スポーツ、メール、ショッピングなど多数のサービスを展開。2016年10月より東京ガーデンテラス紀尾井町・紀尾井タワーの本社を稼働。親会社はソフトバンクグループ株式会社。

(2) 収益性分析

まず収益性を見てみます。営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、ヤフーが18.5%、楽天が10.5%となりました。この数字は10%以上あると望ましいとされており、両者ともに上回っていますが、売上高営業利益率と同様にヤフーが楽天を上回っています。

ヤフーの営業キャッシュフローは横ばいなのに対して、楽天は3期連続で悪化しています。銀行事業やカード事業での貸付増がキャッシュフローにマイナスの影響を及ぼしており、金融事業会社へ変革しているためと見られます。

(3) 安全性分析

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、ヤフーが0.5倍と非常に高い安全性を示しています。直近2期では有利子負債残高が増加しているものの、数字上では実質的に「無借金経営」を実現しているといえます。

一方の楽天は「危険水域」といわれる10倍(営業キャッシュフローでの返済にかかる期間が10年)には満たないものの、8.8倍と高い数字となりました。2016年度の単年度では、営業キャッシュフローが307億円まで落ち込む中、有利子負債残高が23倍の7131億円にまで膨らんでいます。

【外国人比率2割強】楽天株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/54

就職・転職するなら「楽天株式会社」。主力事業のECモール「楽天市場」は、2017年5月で開設20周年。カード、銀行、証券などのフィンテック事業にも進出。社内の公用語が英語で、中途入社でもTOEIC800点以上が求められる。全社員(楽天単体)約6000人における外国籍比率は2割強にのぼる。社内カフェテリアは無料で利用可。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」では、3期平均で楽天がマイナス1706億円、ヤフーがマイナス784億円となっており、両社とも積極的な投資を行っています。大きな投資が花開けば、将来性が期待されます。

ヤフーは子会社支配のための投資がメインとなっている一方で、楽天は金融業や自社M&A等による有価証券取得等が投資キャッシュフローの大部分を占めており、両社には違いがあります。

楽天株式会社のクリエイティブ職経験者が語る「転職のススメ」 福利厚生がアメリカの会社のように充実していて最高

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日本最大級のECモール「楽天市場」を運営する、株式会社楽天。2015年には世田谷区二子玉川に「楽天クリムゾンハウス」を建設し、社員の働きやすさに配慮した様々なサービスを提供している。「doda転職人気企業ランキング2016」では、総合6位にランクインした。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、ヤフーがマイナス208億円と配当の支払等による株主還元を行っている一方で、楽天はプラス1521億円と借入等による資金調達が行われています。

楽天は2015年度まで財務キャッシュフローが増加していましたが、2016年度はプラスであるものの、前年度よりも大きく数字を下げています。一方のヤフーは、2015年までマイナスを続けていましたが、2016年度は社債発行等による資金調達によってプラスに転じています。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、楽天が66.5%、ヤフーは40.2%となっています。両社ともM&Aを通じた設備投資に積極的ですが、営業キャッシュフローを超えるものではなく、申し分ありません。

まとめ

以上、両社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 日本最大のポータルサイト運営を行うヤフーは、ソフトバンクの子会社として高い収益力を誇っていますが、国内事業に偏っている点が気になります。市場の成長が見込まれるネットショッピングにおいても、アマゾンや楽天に水を開けられており、引き続きM&Aで多角化を図っていくものと見られます。

  • 楽天は楽天市場の成長性が鈍化し、金融事業へのシフトが明確に見られます。また海外市場へ活路を見出そうとしているようです。このため有利子負債がかさんでいますが、この投資がどのように花開くのか注目です。

最後に、学生の「就活生」と社会人の「転職志望者」での人気の違いを参考に見てみましょう。「キャリタス就活2018」の就活生総合人気ランキングでは、楽天が97位、ヤフーは158位となっています。

dodaの転職人気企業ランキング2017について、総合ランキングで楽天が6位、ヤフーは11位と、両社とも新卒生を上回る非常に上位のランクインとなりました。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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