【印刷業界研究】凸版印刷(トッパン) vs 大日本印刷(DNP) 比較――就職・転職するならどの会社?

【印刷業界研究】凸版印刷(トッパン) vs 大日本印刷(DNP) 比較――就職・転職するならどの会社?

今回は印刷業界の2強と呼ばれる、凸版印刷と大日本印刷を取り上げます。近年は出版物のデジタル化などの影響から、売上高・営業利益ともに減少傾向ですが、従業員数は増えています。就職・転職の参考になれば幸いです。


会社の成り立ち

(1) 凸版印刷

1900年(明治33年)、大蔵省印刷局で御雇外国人のキヨッソーネから印刷技術を学んだ木村延吉と降矢銀次郎が創立。「エルヘート凸版法」という当時最先端の印刷技術を社名に掲げました。

現在は印刷需要の縮小もあり、製版技術をベースとする超微細加工技術を応用したデジタル画像処理やエレクトロニクス製品にも注力。液晶用カラーフィルタのトップメーカーでもあります。

とはいえ、現在でも出版関係を含む「情報コミュニケーション事業分野」が売上の6割を占めており、収益を生み出す主軸になっています。また、売上高の86%が国内事業によるものです。

凸版印刷株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/186

凸版印刷は東京都千代田区に本社を構える国内最大手の印刷企業であり、明治33年(1900年) 創業。通称「トッパン」と呼ばれている。同業の大日本印刷と印刷業界の双璧をなしている。「情報・文化の担い手として、ふれあい豊かなくらしに貢献」することを企業理念とする。

(2) 大日本印刷

1876年(明治9年)に東京・銀座に創業された秀英舎が前身。日本初の国産洋装本「改正西国立志編」の印刷を手がけ、大ベストセラーになりました。

戦後は紙器や包材、建材、精密電子部品からICカードまで、印刷技術を応用した製品で事業を多角化。「DNPグループビジョン2015」では「P(印刷)&I(情報)イノベーション」により、成長領域を軸に事業を拡げていくとしています。

有利子負債残高がより少ないなど財務面での違いはありますが、売上・収益性、事業セグメントなど、凸版印刷と似通った事業構成になっています。

大日本印刷株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/225

1876年(明治9年)の創業以来の印刷技術と情報技術を強みとして、1950年代より他分野進出を図り、情報産業や生活産業のほか、ディスプレイや電子デバイスなどのエレクトロニクス分野にも進出している。世界最高峰の印刷技術を持ちながら、近年では環境、エネルギー、ライフサイエンス分野にも視点を向けて事業を拡大している。

事業の収益構造

(1) ここ20年間の業績等推移(1997~2016年度)

構造的変化を迎える印刷業界を、20年間の業績で俯瞰してみます。両社の売上高は2000年代に入って急速に伸長し、2007年にピークを迎えた後は、一貫して右肩下がりとなっています。ここ9年間の減り幅は、凸版印刷が14.2%、大日本印刷が12.7%減です。

営業利益の落ち込みはさらに大きく、両社とも2004~2005年度にピークを迎えた後、2007~2008年に3割台に激減しました。減り幅は、凸版印刷が32.0%、大日本印刷が38.3%です。

売上高営業利益率も急速に落ち込み、2004年度から2008年度の間に、凸版印刷は6.2%から1.8%へ、大日本印刷は8.5%から2.9%まで下がりました。この背景には、リーマンショックによる原油・素材価格の高騰が影響していると見られます。

その後、数年間はやや回復したものの、2011年の東日本大震災で再び激減。近年は回復傾向は見られますが、ピーク時の水準には遥かに及んでいません。

従業員数は、両社で傾向が異なります。2004年度から2016年度までの13年間で、凸版印刷は32,724人から50,705人へと大幅に増やしていますが、大日本印刷は34,939人から一時は40,000人台に増やしましたが、現在は38,808人に落ち着いています。

(2) 売上規模

2014年度から2016年度までの売上高の3期平均を比較すると、凸版印刷が1兆4777億円、大日本印刷が1兆4427億円と、ほぼ肩を並べています。ただし両社とも、直近では3期連続でやや減収となっています。

(3) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均は凸版印刷の470億円が、大日本印刷の416億円を上回りました。本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均でも、凸版印刷の3.2%が、大日本印刷の2.9%を上回っています。ただし各期の増減を見ると、ほぼ同水準といっていいでしょう。

大日本印刷は2014年度は大日本印刷を上回っていますが、その後は3期連続減益となっています。2016年度は清涼飲料部門で前期比145.1%増益を達成したものの、他部門が軒並み減益で前期比30.9%減となりました。

凸版印刷は3期連続増益で好調です。営業利益700億円を目標に、2015年度から3年間を「収益性改善フェーズ」と位置づけています。

(4) セグメント別売上構成比

凸版印刷(2017年3月期)の報告セグメント別売上高構成比では、ICカードやSP関連ツールなどのソリューション提供と、週刊誌や単行本などの書籍、教科書などの出版関連を担う「情報コミュニケーション事業分野」が61.7%を占めています。

次いで、包装材やラベル、ダンボールなどのパッケージ関連、建装材などの製品・サービスを提供する「生活・産業事業分野」が27.9%、ディスプレイ関連、半導体関連の製品を取り扱う「エレクトロニクス事業分野」が10.3%となっています。

ただし事業毎の利益貢献度には差があります。「アニュアルレポート2017」によると、情報コミュニケーション事業分野の営業利益は504億円、売上高営業利益率が5.6%。生活・産業事業分野は同249億円、同6.0%。エレクトロニクス事業分野は同57億円、同3.8%となっており、新規分野の収益性はまだ上がっていないようです。

地域別売上高は日本が86.0%、アジアが9.9%、その他地域が4.0%となっており、国内での売上が8割を超えています。

大日本印刷(2017年3月期)の報告セグメント別売上高構成比では、雑誌・書籍などの出版関連事業、ICカードの開発やホログラム、セキュリティ印刷などのソリューションを提供する、情報イノベーション事業の「情報コミュニケーション部門」が56.5%と過半数を占めています。

次いで、包装事業や住宅用内装材などを取り扱う生活空間事業、産業資材事業の「生活・産業部門」が27.5%、ディスプレイ関連製品事業、電子デバイス事業の「エレクトロニクス部門」が12.0%、北海道コカ・コーラボトリング株式会社を中心として清涼飲料に関連する製造・販売を行う「清涼飲料部門」が4.0%となっています。

地域別では、日本が85.6%、アジアが8.9%、その他地域が5.4%となっており、凸版印刷同様に国内事業の比重が高い状況です。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、両社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

凸版印刷と大日本印刷は、ともに「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などができているタイプです。凸版印刷の方が投資キャッシュフローが大きく、有利子負債残高が1000億円ほど上回っていますが、その他は似通っています。以下で詳しく見ていきます。

(2) 収益性分析

まず収益性を見てみます。営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、凸版印刷が6.7%、大日本印刷が5.3%となりました。この数字は10%以上あると望ましいとされていますが、両社とも下回っています。

(3) 安全性分析

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」の3期平均は、凸版印刷が3.0倍、大日本印刷が2.3倍ですので安全性に問題はありません。

両社ともに3期連続で有利子負債残高を減らしており、大日本印刷は負債残高を上回るキャッシュがあるため「実質無借金」といえます。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」の3期平均では、凸版印刷のマイナス554億円が、大日本印刷のマイナス324億円を上回っています。

ただし2015年度は大日本印刷の投資が上回っています。大日本印刷は2016年の投資キャッシュフローがプラスになっていますが、「アニュアルレポート2017」によると、これは投資有価証券の売却によるもので、経営上の不安につながるものではありません。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、凸版印刷がマイナス415億円、凸版印刷がマイナス387億円です。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、凸版印刷が68.9%にとどまる一方、大日本印刷は90.8%で、年度の営業キャッシュフロー(3期平均)に匹敵する積極的な設備投資をしています。

まとめ

以上、両社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 凸版印刷と大日本印刷は、財務状況の一部を除けば、似通った事業構造となっています。紙の印刷需要が減り内需が縮小する中で、新規事業の収益確立やグローバル展開が両社の重要な課題となってくるのではないでしょうか。

  • なお、今回は触れませんでしたが、両社の間には経営陣の構成や社風には違いがあるようです。口コミサイトなどで社員やOBOGの声を確認し、自分に合った会社を選んでから就活や転職活動に臨んだ方がよさそうです。

最後に、学生の「就活生」と社会人の「転職志望者」での人気の違いを参考に見てみましょう。「キャリタス就活2018」の就活生総合人気ランキングでは、大日本印刷が48位、凸版印刷が78位と、両社ともランクインしています。

dodaの転職人気企業ランキング2017では、2社ともランク外でした。

ビジネスモデルがBtoBのため、エンドユーザーの知名度が高いといえませんが、印刷業で培ってきた技術をベースに、新しい事業領域に意欲的に取り組んでいる点は両社共通です。業界の規模は縮小傾向にありますが、その穴を埋める意欲を積極的に持って就職や転職に臨める人に向いているでしょう。

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