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【電子部品業界研究】京セラ・TDK・日本電産・村田製作所比較――就職・転職するならどの会社?

【電子部品業界研究】京セラ・TDK・日本電産・村田製作所比較――就職・転職するならどの会社?

スマ―トフォンやタブレットから、自動車、工場機械までの幅広い分野で必要とされる「電子部品」。今回はこの業界のトップ企業である京セラとTDK、日本電産、村田製作所の4社の財務諸表の分析を基に、それぞれの会社のタイプを整理してみます。電子部品業界への就職・転職に役立てば幸いです。


会社の成り立ち

(1) 京セラ

1959年に稲盛和夫氏が中心となり社員8人で発足させた京都セラミックが起源。中核事業は情報機器、電子デバイス、ファインセラミック、半導体部品で、ソーラー電池や宝飾関連などを含めて多角的に事業を展開しています。

モバイル通信会社のKDDIの発足に関わり、携帯電話において正確な信号を発信させる「サーミスタ付水晶振動子」と「水晶発振器」は世界トップシェアを獲得しています。部門別採算制度による「アメーバ経営」を駆使し、創業以来黒字経営を継続しています。

(2) TDK

東京工業大学の教授によって発明された磁性材料「フェライト」の工業化を目指して、1935年に齋藤憲三氏が秋田県に設立した東京電気化学工業が起源です。かつてカセットテープを始めとする磁気テープ事業が主軸でしたが、環境の変化で撤退しています。

現在はコンデンサやインダクタなどの「受動部品」が売上高の半分を占め、直流安定化電源などの「磁気応用製品」、透明伝導性フィルムなどの「フィルム応用製品」とともに中核事業を形成。海外売上比率は9割を超えています。

(3) 日本電産

日本電産は1973年に京都で創業した小型モーターのメーカーです。世界シェアトップを誇る精密小型モーターと、車載・家電・商業・産業用機器が主力ですが、産業用ロボットなどの機器装置や、カメラシャッターなどの電子・光学部品も手がけています。

現会長兼社長の永守重信氏が創業者で、技術力の高い電子部品メーカーを買収しては、再建させていった実績を持っています。「回るもの、動くもの」に特化し、永守氏の圧倒的なリーダーシップで、世界的メーカーの地位を獲得しています。

(4) 村田製作所

1944年に京都で誕生した電子部品専業メーカーです。創業以来、誘電体や圧電体、磁性体、焦電体、半導体として優れた特性をもったファンクショナルセラミックスを次々に創造し、電子機器に欠かせないセラミックコンデンサは世界トップシェアを獲得しています。

生産設備も自社開発するなど、他社との差別化を図っています。スマートフォンの通信用に用いるSAWフィルタやWi-Fiモジュール等で世界トップシェアを獲得するなど、海外売上比率が9割を超えています。

事業の収益構造

(1) 売上規模

2014年度から2016年度までの売上高の3期平均を比較すると、京セラが1兆4763億円ともっとも高く、次にTDKが1兆1376億円、日本電産が1兆1353億円、村田製作所が1兆1299億円となっています。

特にTDKと日本電産は国内外のM&Aが功を奏し、連続増収を達成。日本電産は5期連続の増収で過去最高を記録し、永守氏は「売上高10兆円まで辞めない」と発言して話題となりました。各社とも、2018年3月期の業績は好調の見込みです。

(2) 営業利益と利益率

営業利益の3期平均では、順位が入れ替わっています。売上高では4社中4位だった村田製作所が2303億円とトップになり、次いで日本電産が1253億円、TDKが1248億円、京セラが968億円となっています。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均は、村田製作所が20.4%、日本電産とTDKが同率で11.0%。京セラは6.6%と4社中4位でした。3期連続の増益だったのは日本電産とTDKのみであり、TDKは2016年度に急激な営業増益となっています。

(3) セグメント別売上構成比

有価証券報告書を見ると、京セラの事業別売上高構成比(2017年3月期)は、プリンター等の販売を行う情報機器関連事業が22.8%で、コンデンサやパワー半導体の製造を行う電子デバイス関連事業が20.3%、半導体関連事業が17.3%、ファインセラミック応用品関連事業が15.8%、通信機器関連事業が10.2%、ファインセラミック部品関連事業が6.8%、その他が6.8%となっています。

所在地別売上高は、日本が42.1%、アジアが21.4%、欧州は16.5%、米国が16.1%、その他地域で3.9%となりました。

TDK(同)は、メインのセラミックコンデンサ等の受動部品事業が46.6%ともっとも高く、HDDヘッド部品等の磁気応用製品事業が29.7%、二次電池等の製造を行うフィルム応用製品事業が21.0%、その他事業が2.7%となっています。

所在地別は、中国が50.8%と半分以上を占めます。続いてアジア他(タイ、韓国、ベトナム、フィリピン)が18.9%、欧州(ドイツ)は12.4%、日本と米州がそれぞれ8.9%となっています。

日本電産(同)は、製品別にセグメントを分けています。車載及び家電・商業・産業用が47.7%、精密小型モーターが36.4%(内その他小型モーターが56.3%、HDD用モーターが43.7%)、機器装置は10.2%、電子・光学部品が5.3%、その他が0.3%となっています。

所在地別では、中国の24.4%と日本の23.6%が上位を占めます。続いて米国が17.4%、タイが8.8%、ドイツが7.5%、シンガポールが4.8%、その他が13.4%となっています。

村田製作所(同)は、コンデンサ等のコンポーネント事業が67.1%、通信モジュール等のモジュール事業が32.7%、その他が0.2%となっています。

所在地別では、中華圏(中国、台湾)が57.0%と売上の半分以上を占めており、続いてアジア・その他(ベトナム、韓国、タイ)が18.9%、南米アメリカ(アメリカ、メキシコ)が9.0%、日本が7.7%、欧州(ドイツ、ハンガリー、イギリス)が7.4%となっています。

各社とも製品や事業ごとに売上がばらついていますが、地域ごとの売上高で見ると、京セラの国内比率が4割以上であるのに対し、TDKと村田製作所の国内比率が1割に満たないという結果が出ました。日本の企業ではあるものの、グローバル社会で戦っている企業であるといえます。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、各社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

京セラとTDK、村田製作所の3社は「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」となっています。いずれも本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながらも、借入金の返済などができているタイプです。

日本電産は「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」で、本業で生み出したキャッシュ以上に借入や資金調達等を行いながら積極投資を行っているタイプです。

ただし営業キャッシュフローと投資キャッシュフローは村田製作所が最大、投資キャッシュフローは京セラが最小となるなど、企業によっては傾向が異なります。以下、内容を詳しく見ていきましょう。

【4年連続最高収益】日本電産(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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モータ事業を中心に「回るもの、動くもの」に特化した応用製品・ソリューションも手掛ける企業。日本電産の製品は身の回りのあらゆるところで使用されている。精密小型モーターの開発・製造に関しては世界においてシェアナンバーワンである。本社所在地から長岡京の遺跡が発掘され、現在も地下に保存されている。

(2) 収益性分析

まず収益性を見てみると、営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、村田製作所が22.3%、TDKが13.3%、京セラが11.0%、日本電産が10.8%です、この数字は10%以上あれば望ましいとされており、4社とも上回っている高収益の業界です。

中でもトップの村田製作所は、スマホ向けの積層コンデンサが高単価であり、非常に高い収益性を誇っています。日本電産は営業利益が増加傾向にあるものの、営業キャッシュフローは上下して不安定です。

【口コミ高評価企業】(株)村田製作所に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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1944年に創業。京都府に本社を置く、総合電子部品メーカー。積層セラミックコンデンサやSAWモジュール、EMIフィルタなど多くの高シェア製品を取り扱っている。主力であるセラミックコンデンサのシェアは世界トップクラス。TOPIX core30の構成銘柄である。

(3) 安全性分析

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」は、低ければ低いほど安全です。一般的には10倍(営業キャッシュフローでの返済にかかる期間が10年)を超えると、安全性は低いと言われます。

3期平均で見ると、村田製作所が0.1倍と非常に高い安全性を示しており、次いで京セラが0.2倍でした。いずれも1年以内に有利子負債を営業キャッシュフローで賄える水準で、この2社は実質的に「無借金経営」を実現しているといえます。TDKも2.1倍、日本電産は2.7倍で、営業キャッシュフローが豊富のため安全性には全く問題ありません。

なお、2016年度の有利子負債額を見てみると、日本電産の4124億円とTDKの3341億円は、京セラの248億円、村田製作所の466億円に比べて多く見えます。しかし2社とも3期連続で増収増益を達成しており、業容拡大に寄与している有利子負債であるといえます。

京セラ株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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電子、情報、通信機器をはじめとして、ソーラー電池やセラミック、宝飾関連など多角的に事業を展開するグローバルメーカー。独自の哲学である「京セラフィロソフィ」「全員参加経営」の実践に力を入れている。世界の研究機関を対象にした「TOP グローバル・イノベーター」を2014年、2015年の2年連続で受賞している。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」は、3期平均で村田製作所がマイナス1664億円、日本電産がマイナス1293億円、TDKはマイナス1130億円、京セラがマイナス1041億円となっています。4社とも1000億円を超え、競争の激しい電子部品業界で勝ち抜くための戦略的投資を行っているといえます。

特に村田製作所とTDKは、3期連続で1000億円以上の設備投資を行っています。村田製作所はソニーのリチウムイオン電池部門を約175億円で買収しており、電子部品一本足打法であった経営にてこ入れをしています。

【海外売上比率9割超】TDK(株)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

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独創的な製品開発力と高品質なモノづくり力で、多種多様な製品を作っている世界屈指の電子部品メーカー。日本、アジア、ヨーロッパ、アメリカの各地に研究開発・生産拠点を有する。確かな基盤技術をもとに15の事業分野で幅広いビジネスをワールドワイドに展開している。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、日本電産のみ280億円のプラス。他の3社は、京セラがマイナス461億円、村田製作所がマイナス451億円、TDKがマイナス145億円と資金の返済を進めています。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」の3期平均は、TDKが94.8%、村田製作所が57.2%、日本電産は56.5%、京セラが39.5%となっています。4社とも身の丈100%を超える設備投資は行っていませんが、TDKの比率が突出しており、積極性が目に付きます。

TDKは自社で次世代型リチウムイオン二次電池量産のための投資を積極的に行う予定で、スマホや電子タバコ、電気スクーター用の電池として未来の収益源に向けて取り組んでいます。

京セラは3期平均で一番設備投資額が少ない結果となりましたが、創業以来事業ごとに部門別独立採算で評価する「アメーバ経営」を取ってきた過去のストックから、現在までの安定した売上および利益の成長につながっているといえましょう。

まとめ

以上、4社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 業界トップの売上を誇る京セラは、高い安定経営を誇ってきましたが、収益性では他の3社の後塵を拝しています。グローバルでの高成長を実現するために「低い営業利益率」と「高い国内売上比率」をどう改善していくかが、将来の成長を決めるでしょう。
  • セラミックコンデンサでは村田製作所に続く業界2位のシェアを誇るまでに成長したTDKは、リチウムイオン電池の自社生産等、新しいシェア獲得への投資や、海外売上9割を有している点からもグローバルでの成長が期待できます。
  • 「再建請負企業」の日本電産は、国内外問わず高いシェアを獲得している精密小型モーターを有している強みと、5期連続の増収増益を果たした高い経営能力など高い成長が期待できる企業です。永守会長の後任探しが、同社の今後を占う肝と言えましょう。
  • 自社製造の電子部品において世界トップシェアを有している製品が多い村田製作所は、他社に比べて高い競争力と利益率を誇っています。ソニーから買収した二次電池事業など事業の多角化を図ることができるかが、同社の高成長の鍵となると考えられます。

最後に、学生の「就活生」と社会人の「転職志望者」での人気の違いを参考に見てみましょう。「キャリタス就活2018」の就活生総合人気ランキングでは、74位の村田製作所が4社の中でトップでした。次に京セラが198位にランクインし、TDKと日本電産はランク外でした。

DODAの転職人気企業ランキング2017では、総合ランキングで村田製作所が56位とこちらでも4社中トップを獲得しています。京セラで111位、日本電産は117位、TDKはこちらでもランク外となっていました。

ノーベル賞受賞者を輩出した村田製作所以外の人気が低い理由は、BtoB企業であり、一般的に馴染みがないからでしょうか。もったいない話です。特にTDKの人気が低い理由は不明です。「カセットテープ」のイメージが足を引っ張っているということは世代的にないとは思いますが…。

現在では海外売上比率9割以上で、電子部品製造で世界的シェアを獲得するなどグローバル企業となっているTDKは、グローバルな働き方をしたい方にはぴったりな企業ではないでしょうか。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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