【自動車業界研究】トヨタ・日産・ホンダ比較 大手メーカー3社、就職・転職するならどの会社?

【自動車業界研究】トヨタ・日産・ホンダ比較 大手メーカー3社、就職・転職するならどの会社?

トヨタと日産、そしてホンダの「自動車会社トップ3」は、国内のみならず世界シェアの上位を争うグローバルな大企業ですが、会社の成り立ちは大きく異なります。そこで今回は、主要3社の財務諸表の分析を基に、それぞれの会社のタイプを整理してみます。自動車業界への就職・転職に役立てば幸いです。


会社の成り立ち

(1) トヨタ自動車

トヨタ自動車は、豊田自動織機製作所の2代目社長・豊田喜一郎氏が、同社の自動車部門として1933年に創業した会社です。

1936年に同社初の量産乗用車のAA型乗用車を開発。戦後は朝鮮戦争特需でのトラック受注で業績を伸ばし、国内で盤石の地位を築いていきました。2000年代に入ってからは海外でもシェアを伸ばし、いまや世界トップの座に君臨しています。

(2) 日産自動車

1910年に実業家の鮎川義介氏(鮎川財閥)が現北九州市に創業した戸畑鉱物が源流で、戦前より「ダットサン」ブランドなどの製造を行ってきました。1966年に「スカイライン」や「グロリア」を製造していたプリンス自動車工業を救済合併し、規模を拡大しました。

しかしバブル崩壊後、約2兆円の有利子負債を抱えて1999年に経営破たん寸前に陥り、仏・ルノーの資本提携による支援を仰ぐことに。現在ではルノー=日産アライアンスとして、2017年上期に世界1位の販売台数を達成するまで成長を遂げました。

(3) ホンダ

正式名称は本田技研工業。1949年に創業者の本田宗一郎によって設立された「本田技術研究所」が源流です。1951年に初の箱根越えを達成した「ドリームE型」など先進的なバイクを生み出した後、1963年に四輪車事業に参入しました。

F1やロードレース世界選手権(MotoGP)などモータースポーツへの参加にも積極的で、近年は超軽量ジェット機の分野に参入しています。

事業の収益構造

(1) 業界シェア

「Top 10 Car Group Manufacturers In The World In 2016 By Sales」によると、2016年の世界自動車販売台数は、トヨタ自動車が世界2位で994万台。ルノー=日産アライアンスが第3位で851万台、ホンダが第7位で490万台となっています。

なお、1位のフォルクスワーゲン・グループには、アウディやベントレー、ブガッティや、ランボルギーニ、ポルシェといった高級車ブランドが名を連ねています。これを見ると2位のトヨタは、傘下に日野自動車とダイハツ工業を擁しているものの、いかに多くの台数を販売しているかが分かります。

日産は、2016年に三菱自動車と戦略的アライアンスを締結。「単独主義」を貫くホンダは、フィアット・クライスラーやプジョー・シトロエンなど欧州勢の追い上げを受けています。

(2) 売上規模

2014年度から2016年度までの3期平均を比較すると、売上高がもっとも大きいのはトヨタ自動車で27兆7449億円。日産は11兆7615億円、ホンダは13兆9761億円、です。

トヨタとホンダの売上高は、約2倍の販売台数の差がほぼそのまま反映しています。ルノーと合算した販売台数では世界トップクラスの日産ですが、単体の売上高ではホンダを下回っています。

(2) 営業利益と利益率

営業利益においても、トヨタが2社を圧倒しています。トヨタは3期平均で2兆5329億円、日産が7083億円で、ホンダが6715億円。売上高ではトヨタの半分だったホンダですが、営業利益では4分の1近くにまで下がり、3期平均では日産をも下回っています。

本業の儲ける力を測る売上高営業利益率の3期平均で見ると、トヨタが9.1%で、日産が6.0%。これに対してホンダが4.8%と、利益率の低さが目につきます。なおホンダは、2017年10月4日の記者会見で「国内四輪車の生産拠点を4カ所から3カ所に集約する」と発表し、収益改善を図るとしています。

(4) セグメント別売上構成比

トヨタ自動車の売上高構成比(2017年3月期)は、90.7%が自動車事業を占めています。金融事業が6.5%、その他2.8%といった構成になっています。また所在地別売上高構成比を見ると、日本が31.9%、北米36.4%、アジア15.5%、欧州9.1%、その他7.1%。日本と並んで北米での売上が、トヨタを支えています。

日産の事業別売上高(同)もトヨタとほぼ同じ構成で、自動車事業が91.9%で、販売金融事業が8.1%。所在地別売上高は北米が50.5%と筆頭で、日本で18.5%、欧州が13.7%、アジアが8.6%、その他8.6%となっています。北米が最重要市場で、日本と並んで欧州での売上も高くなっています。

この2社と異なり、ホンダ(同)の売上高は四輪事業が72.1%にとどまり、二輪事業が12.3%を占めています。さらに、家庭用発電機や航空機事業などが2.3%と、事業が多角化しているのが特徴です。金融サービス事業の割合はトヨタや日産よりも高く、13.4%を占めています。

所在地別売上高構成比を見てみると、北米が54.4%と一番の稼ぎ頭となっており、次いでアジアが20.6%。日本は15.1%。欧州が4.6%、その他地域が5.2%です。北米とともに、今後人口増加が予想されるアジアの比率が、トヨタや日産よりも高くなっています。

キャッシュフロー計算書分析

「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのキャッシュフロー計算書から、各社の企業活動の特徴を見てみましょう。

(1) 企業タイプ

キャッシュフロー計算書の3期平均を見ると、ホンダと日産は「成長企業型(営業+/投資-/財務+)」で、本業でキャッシュを生み出しつつ、借入金や社債などを成長のための投資に充てているタイプです。

トヨタ自動車は典型的な「優良企業型(営業+/投資-/財務-)」で、本業で生み出したキャッシュを元手に投資を行いながら、借入金の返済などもできているタイプです。ただし後述するように、決して成長を犠牲にして安定性を求めているわけではなく、投資キャッシュフローの規模も非常に大きいです。

【中途採用強化】トヨタ自動車株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/35

世界最大手の自動車メーカー。世界販売台数は1000万台を突破し、2015年まで4年連続で世界首位、2016年は2位。「過去10年で売上高が増えた企業」1位。現在、自動運転、コネクテッドカーの開発に向けて、AI(人工知能)、画像認識、信号処理、機械学習、地図自動生成などのスペシャリストの採用を強化している。

(2) 収益性

まず収益性を見てみると、営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均は、トヨタ自動車が13.8%、ホンダが7.9%、日産が8.4%です。

この数字は10%以上あれば望ましいとされており、トヨタだけがこの水準を上回っています。ホンダや日産も低い水準ではありませんが、同業スバルの14.8%や、NTTドコモの25.8%(いずれも3期平均)などと比べると、やはり差があります。

(3) 安全性

有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」は、有利子負債の残高が1年間の営業キャッシュフローの何倍あるかを示したもので、低ければ低いほど安全です。この数字は3期平均で、トヨタ自動車が4.88倍、ホンダが6.14倍。日産が7.25倍となっています。

一般的には10倍(営業キャッシュフローでの返済にかかる期間が10年)を超えると、安全性は低いと言われます。製造業は設備投資が多く、有利子負債残高が多い傾向にありますが、1998年に約2兆円もの有利子負債を抱えた日産を含め、いずれも10倍以内に収まっており、安全性には問題ないでしょう。

【国内生産100万台】日産自動車株式会社に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/56

横浜市に本社を置く大手自動車メーカー。1933年創業。1999年にフランス・ルノーと資本提携。国内市場シェア(登録車)は14.8%でトヨタに次ぐ2位。2016年10月から西川廣人氏が社長兼CEOに昇格、カルロス・ゴーン氏が会長に。同月、三菱自動車を子会社化。2016年度のグローバル生産台数は過去最高を記録した。

なお、日本経済新聞の「総資産ランキング」によれば、トヨタの純資産は日本郵政に次いで2番目に多く、日本取引所やNTTよりも上位。ホンダは6位、日産も7位であり、3社とも日本を代表する大企業であることには間違いがありません。

(4) 将来性

企業の将来性を測る手がかりとなる「投資キャッシュフロー」では、3期平均でトヨタ自動車がマイナス3兆3219億円、日産がマイナス1兆2096億円、ホンダがマイナス7887億円となっています。3社とも大きな投資をしていますが、トヨタの額の大きさが突出しています。2017年3月期の有価証券報告書によれば、米国の子会社3社だけで2433億円もの設備投資を実施しているようです。

借り入れや社債・新株の発行などの資金調達等を記録する「財務キャッシュフロー」の3期平均は、日産が3657億円、ホンダが108億円のプラスですが、トヨタだけが唯一のマイナス1642億円で資金の返済を進めています。

【Hondaフィロソフィー】本田技研工業株式会社(ホンダ)に就職・転職するなら知っておきたい情報まとめ

https://tenshock.biz/articles/70

「ホンダ」のブランドで知られる、日本の大手輸送機器及び機械工業メーカー。世界最大の二輪・四輪メーカーとして、368社の連結子会社と83社の持分法適用会社(2016年3月末日現在)を擁している。事故ゼロ社会の実現に向け、様々な技術の研究、開発を進めている。

設備投資額(セグメント内)を営業活動キャッシュフローで割った「設備投資対営業キャッシュフロー比率」は、100%以内であれば設備投資をまかなえる営業キャッシュフローを生み出していることになります。この数字の3期平均は、トヨタ自動車が95.0%と積極投資をしているのに対し、日産が47.7%とやや消極的に見えます。

ホンダは223%と突出した額になっていますが、これは積極策なのか、身の丈を超えたものなのかは判断が難しいところです。しかし自動車業界は、欧州でエンジン車を廃止する方針を打ち出す国が相次ぐなど事業環境が大きく変化しており、自動車各社は適切な設備投資をしなければ、今後生き残っていくことは難しくなるでしょう。

まとめ

以上、3社の財務諸表を簡単に分析してみました。これがすべての切り口とはいえませんが、各社の特徴がよく現れているといえるのではないでしょうか。就職や転職を目指す方々は、このような会社の違いを踏まえて志望企業を選ぶことをオススメします。

  • 世界的なトップシェアを獲得しているトヨタ自動車は、財務的な安定性が抜群であるうえに、成長に向けて巨額の投資を行っており、将来の備えも申し分ありません。金融事業でも大きな収益を上げて、本業を支えています。
  • 欧州のシェアが3社の中で最も高い日産は、電気自動車(EV)や自動運転などの新分野において、提携先のルノーの影響を受けながら、さらにシェアを伸ばしていくことが考えられます。
  • アライアンスを積極的に行う2社とは異なり、ホンダは「単独主義」を貫いており、自動車業界での立ち位置が問われますが、その一方で二輪車事業や飛行機事業など独自のノウハウによる多角経営を図っています。シェアが高いアジアの成長性も期待できます。

自動車産業の将来は波乱含みなので、どの戦略が後に功を奏するかは分かりません。この業界への就職・転職を希望する人は、自分なりの読みをして会社を選ぶべきでしょう。

 

最後に、学生の「就活生」と社会人の「転職志望者」での人気の違いを参考に見てみましょう。「キャリタス就活2018」の就活生人気ランキングでは、トヨタ自動車が12位と高順位で、ホンダは46位。日産はそれより下で59位でした。

dodaの転職人気企業ランキング2017では、グーグルを抑えたトヨタ自動車が総合ランキングで1位を獲得しています。ホンダも15位と高順位で、日産は31位でした。国内でのブランド力が高く独自路線を行くホンダが上位なのも理解できますが、自動車業界でグローバルな生き残りを図る日産の順位は、今後さらに上がっていくのかもしれません。

この企業情報の記事作成

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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