不幸な「ジョブホッパー」にならないために 転職の成功に必要な「覚悟」とは 中谷彰宏氏に聞く

不幸な「ジョブホッパー」にならないために 転職の成功に必要な「覚悟」とは 中谷彰宏氏に聞く

不満に耐えられずに転職したのはいいが、次の職場でも満足できず、転職を繰り返す「ジョブホッパー」にならないためにどうすればいいか。作家・中谷彰宏氏にその方法を聞いた。


中谷彰宏氏
(写真:いずもと けい)

「職場の人間関係が悪くて会社に行きたくない」「仕事が忙しすぎて休みが全然取れない」「給料が安すぎて生活がつらい」――。そんな不満に耐えられず、会社を辞めて転職した人も少なくないだろう。ストレスから解放されて、ホッと一息ついているに違いない。

しかし、職場を変わったからといって、問題が解決されるとは限らない。新しい職場での同じ問題が起きたり、同じような不満にさいなまれたりする人もいる。そこから逃げるように転職を繰り返し、どこまでいっても幸せになれない「ジョブホッパー」になる人も多いのだ。

そんな事態を避けるには、どんなことに気をつければいいのか。今年1月に『なぜあの人は心が折れないのか』(毎日新聞出版刊)を上梓した作家の中谷彰宏氏に、ストレスをエネルギーに変えながら転職を成功させる方法を聞いた。

悩んでいる人は、決してダメな人間ではない

――中谷さんは著書の中で、悩む人の中には2人の人間がいると分析しています。自分の中に「今までの自分しかいない人」や「これからなりたい自分しかいない人」は悩まないが、その両方がいる人が悩むのだと。

中谷彰宏氏(以下、中谷) 悩んでいる人は、決してダメな人間ではありません。もう少し頑張ろうという自分が、自分の中にいると考えればいいのです。「今までの自分でいいじゃないか」という自分に対して、「これからの自分を応援する側」にまわっていけば、悩みが薄れます。心が折れない自分を、自分が選んでいくことが大切です。

――「今までの自分」に飽き足らずに転職することは、よいことだということですね。

中谷 転職すること自体、新たな職場へのチャレンジという点で、悪いことではありません。ただし気をつけなければならないのは、転職は、新たな環境に移れたことで成功が決まるわけではないということです。「そこで働く」という覚悟がなければダメなんです。覚悟ができて、初めて転職は成功になります。

今の会社に留まって頑張ることも、新たな転職先で頑張ることも、どちらも「覚悟」があればいいんです。ダメなのは、気持ちの整理がついていなくて、自分がどこに帰属しているのか分からなくなってしまうことです。

生産性が上がらないのは「勉強不足」と「経験不足」

『なぜあの人は心が折れないのか』(毎日新聞出版)

――とはいえ、毎晩残業続きで、睡眠時間もろくに取れないブラック企業から脱出できたとすれば、それ自体が成功ではありませんか。

中谷 そういう人には、果たして本当に会社のせいで仕事量が多かったのかどうかを振り返ってほしいと思います。自分に与えられた仕事をこなすことは立派ですし、責任を持ってやり遂げることは重要です。しかし、渡された仕事をこなす、抱えた仕事をこなす、この時に困っていることが別にあるのではないでしょうか。

もちろん世の中には、本当にひどい会社や上司がいるのかもしれません。しかしそれ以外のケースで、仕事量が多くて困っていると思っていたものが、実はさばき方・やり方が分からないで困っている場合もあるのです。どうしてそんな状況になっているのかというと、1つは勉強不足。自分の仕事にぴったりのビジネス書があったとしても、読んで学んでいないんです。

もう1つが経験不足。仕事への不慣れさが原因です。学んで分かることと経験しなければわからないことがあります。不慣れなままだと必要のないところにまで力をいれてします。仕事は数をこなしていくと、力の抜き方が分かってくるようになります。全部が全部、全力で取り組まなくても、必要なところに力を入れればいいのが分かるのです。これが、生産性が上がるということです。

したくない仕事を「したい仕事だった」かのごとくやること

――仕事が不満で辞めた人が、転職後も仕事に満足できないこともあるようです。

中谷 すでに転職先での仕事は始まっているのに、過去やっていた仕事にとらわれていたり、新しい仕事に没頭できていなかったりする状態にある人が、意外と多いのです。これはいちばんまずいことなのです。目の前に仕事があるのに「この仕事は、本当は自分のやりたいことじゃないな」という気持ちが、心のどこかにあるのです。

これは「前の仕事もイヤだけけど、今回のもイヤだ」と駄々をこねているに過ぎません。会社に入りたての人のところに、イヤな仕事が回ってくることはよくあることなのです。会社とは、誰かがしたくない仕事が回ってくる場所。転職動機が「したい仕事があったのにやらせてもらえなかった」という人は、皮肉にも余計にそういう境遇に入り込んでしまっているのです。転職するたびに、同じことが繰り返しきます。

――しかし、他にやりたい仕事があるのは事実ではないでしょうか。

中谷 気づいていない人が多いですが、したくない仕事は、したい仕事をするための助走なのです。一見したい仕事とは関係のない仕事が、したい仕事と一番近いことが多いのです。かといって、したくない仕事をイヤイヤしていたら、したい仕事は回ってきません。したくない仕事を、まるでしたい仕事だったかのごとくやることが、したい仕事が回ってくるコツなのです。

接し方を変えなければ人間関係は変わらない

(写真:いずもと けい)

――人間関係に悩んで転職する人も多いです。

中谷 転職先は自分にとっていい人ばかり、と本気で思っている人はいるのでしょうか。どの会社にも、いい人もいればイヤな人もいます。それは転職先も同じです。転職先の上司とソリが合わない可能性だって、ゼロではないのです。こればかりは仕方ありません。

だからといって上司を変えようとしても、くじけるのは当たり前です。他人を変えることなんて、そうたやすくできるものではありません。他人を変えるという無駄な努力をするのではなく、自分の接し方を変えるのです。

上司だって、サラリーマンのひとり。会社から見れば歯車のひとつなのですから、自分との差はそれほど大きくないのです。そう考えると、イヤだった上司にも前よりはムッとしなくて済みます。上司は絶対的権力者ではありません。上司から好かれていようと嫌われていようと、生きていく上でさほど問題にはならないのです。

――転職を成功させるもさせないも、結局は自分しだいということですね。

中谷 心が折れるのを決めるのは自分自身です。「あいつのせいで心が折れた」と言い訳したり、心が折れた自分を慰めたりしていると、自己肯定感が下がり、気持ちが弱くなっていきます。しかもそれは、本当に心が折れた状態ではありません。仕事をする覚悟ができていないだけなんです。このままだといずれ「不幸なジョブホッパー」への道が待っています。

仕事をするということは、どこにいようとも覚悟を伴います。仕事をうまく運ぶために決めて、やり方を変えたり、勉強したりして自分を高めていく――。その気持ちが備わっていることが、転職を成功させるのです。

 
 

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