「リファラル(社員紹介)採用」は日本で定着するのか――「日本一短いES」「おせんべい採用」の開発者・杉浦二郎氏が考える

「リファラル(社員紹介)採用」は日本で定着するのか――「日本一短いES」「おせんべい採用」の開発者・杉浦二郎氏が考える

リファラル(社員紹介)採用は、自社に合った有能な人材が低コストで採用できる方法として、大手企業や人気ベンチャーなど新卒採用に組み入れる企業が増えている。新たな採用手法として今後一層広がっていくとも言われているが、現場の「肌感覚」はどうなのだろうか。


「リファラル採用」とは、自社の社員に社外の人材を採用候補者として紹介・推薦してもらう採用手法のこと。社風や仕事を理解している社員が「この人はうちの会社にぴったりだ」「この役割において適任だ」と思える友人や知人を選抜する。従来の縁故採用とは、組織的にオープンに行われる点が異なる。

かつては三幸製菓の人事責任者として注目されるさまざまな手法を開発し、現在は企業の採用プランニングやブランディング構築などを手掛けるモザイクワーク代表取締役の杉浦二郎氏と、リクルートキャリア・事業開発室の中山好彦氏に考え方を交わしてもらった。(文:ルーセントドアーズ代表取締役・黒田真行)

【後編】リファラル採用において「協力社員」に金銭を支払わない理由――リクルートキャリア・中山好彦氏の考え方

https://tenshock.biz/articles/2347

自社に合った有能な人材が低コストで採用できる方法として、大手企業や人気ベンチャーなど新卒採用に組み入れる企業が増えているリファラル(社員紹介)採用。その可能性と課題は、どのようなものなのだろうか。

成長の土台となる「新卒採用の定着率向上」に期待

中山 杉浦さんは2015年まで新潟の米菓メーカー・三幸製菓で人事責任者を務め、せんべいへの愛を語る「おせんべい採用」や、新潟出身者以外が新潟好きをアピールする「ニイガタ採用」など、新卒採用で新しい試みを次々生み出した方です。

2016年卒採用でも、メールアドレスのみを記入させる「日本一短いES」や、35の質問に答えると選考方法がレコメンドされるカフェテリア採用で話題を集めました。新卒採用の現場を熟知する杉浦さんは、リファラル採用にどういう印象をお持ちですか?

杉浦二郎:株式会社モザイクワーク代表取締役 2015年9月まで三幸製菓人事責任者を務め、フリーの採用プランナーを経て2016年4月に会社設立。「日本一短いES」「カフェテリア採用」などを生み出し、TVや新聞、ビジネス誌など多くの媒体に取り上げられる。HRカンファレンス等、イベントでの講演多数。また、地元新潟において産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組む。

杉浦 私は、リファラル採用は本来「定着率が上がること」が最大のメリットであるべきだと考えています。優秀か優秀ではないかは企業によっても基準が変わるし、一律には測りきれないものです。特に新卒採用においては、入社後の環境によっても大きく変動するので後付けの話です。

しかし、新卒採用の社員が「長く自社で働いてくれる」ことは、どの企業においても成長の大きな土台になります。ですからリファラル採用は、マッチングうんぬんよりも定着率に是非ひもづいてほしいと、個人的には思っています。

自社にとっての「優秀な人材」の定義づけは意外と難しい

中山 リクルートワークス研究所の杉田万起さんは、リファラル採用のメリットについて「①マッチングの質の向上」「②ニッチなスキルを持つ人材の確保」「③定着率のアップ」「④人材の多様性の維持」「⑤採用コストの低減」の5つを挙げています。

リファラル採用を導入する企業の多くは、このうち①と②に注目しています。社員は自社の社風や、仕事で高いパフォーマンスを発揮するために求められることを深く理解しています。自分と同様のニッチな分野を専門とする人材を知っている傾向も高く、難しいポジションほどリファラルが効力を発揮するとされています。

その一方でリファラル採用は、社内に知り合いがいるため入社者が早くなじみやすく、企業側も採用者と信頼関係を築きやすいという側面があり、③の定着率アップにつながると考えられています。杉浦さんは、なぜこの点を評価されているのでしょうか。

リファラル採用の5つのメリット

 ①マッチングの向上
 ②ニッチなスキルを持つ人材の確保
 ③定着率のアップ
 ④人材の多様性の維持
 ⑤採用コストの削減

(杉田万起「米国の社員リファラル採用のしくみ」)

杉浦 それは「優秀な人材」とひと口に言っても、なかなか難しいからです。三幸製菓時代に「自社にとっての優秀な人材」を定義づけようとしたことがあるのですが、高い業績を挙げている社員を分析しても、適性や性格がバラバラで結局定義できなかったんです。

ニッチ分野の人材確保が最も重要な会社もあるでしょう。でも、そうではない会社もある。「長く働いてくれる人材」は企業のベースメントになり、企業の土台を支える力になる。どの企業においても、定着率は根本だと思います。

「友人の成長に貢献したい」気持ちを満たすことが報酬

中山 「定着して活躍する人を採用する」手法は、これまでなにか試されましたか?

杉浦 新卒採用後、短期間で辞めた社員と定着した社員の差分を見たり、共通項を確認したりしました。結果、三幸製菓においては(性格診断における)「外向性、開放性」が高すぎると辞めてしまうということがわかりました。

外交性、開放性が高い人は面接受けがよく、採用したくなるのですが、自社には合わない。こういう形で一つひとつ検証していきましたね。もちろん、会社によってこの基準はさまざまで、ある会社に合わない人でも、別の会社では長くイキイキ働いてくれる人材になり得ると思います。

ところで中山さんはいま、リクルートキャリアで企業がリファラル採用を導入・促進するためのツールを担当されているのですよね

中山好彦:株式会社リクルートキャリア 事業開発室 ビジネスディベロップメントスペシャリスト IT業界の採用ソリューション営業を経て、新規事業開発部門にてダイレクトリクルーティング手法の研究開発を行う。「ラベルではなく能力を評価される仕組みをつくるため」、新規事業開発に取り組んでいる。リファラル採用導入・促進ソリューション『GLOVER Refer』(グラバー リファー)の企画・開発を担当。多数の企業でリファラル採用を成功させる実績を持つ。

中山 はい。『GLOVER Refer』(グラバー リファー)というツールで、リファラル採用に適正化されたワークフローテンプレートや、社員の協力状況の可視化など必要な各種機能を提供しています。日本ではリファラル採用はまだ始まったばかりですが、これを使ってデータを蓄積していくことで、2年後、3年後の定着率なども分析できます。

杉浦 リファラル採用は、協力してくれる社員に負担をかけることになりますね。中山さんが推奨するプログラムでは、協力社員にどんなインセンティブがあるのですか?

中山 『GLOVER Refer』においては、少なくとも紹介ボーナスなど金銭的なメリットは考えていません。基本的には、会社の成長に貢献したいという気持ちや、より力を発揮できる場を提供することで友人・知人の成長に貢献したいという気持ちを満たすことが、インセンティブになっています。

社員の負担を減らせば「協力率」も上げられるのでは

杉浦 そうなんですか……。企業の人事は、現状ではリファラル採用を単に「数あるインターフェイスの一つ」としか認識していないでしょう。このまま社員の自発的協力に頼っていると、いずれ廃れてしまうのではないかと危惧しています。

中山 リファラル採用がさらに普及し、企業が求める人材の採用実績が増えていけば、より有効な採用手法として認識していただけるようになると思っています。そのためには、社員の協力率を上げることが重要だと考えています。

杉浦 でも、社員に対する負担は大きいし、明確なインセンティブもないならば、社員側はなかなか乗り気になれないでしょう?

リクルートキャリアが提供するリファラル採用導入・促進ソリューション『GLOVER Refer』(グラバー リファー)

中山 確かに、人事はリファラル採用をやりたいのに、社員から「面倒くさい」という文句が聞こえて先に進めなくなったという声を多く耳にします。しかし、よく調べてみると、「積極的に協力したい」とまでは行かなくとも、「別にやってもいいんだけどなあ」と思っている中立者が実はとても多いんです。その存在が見えにくくなっている。

だから、協力してくれる社員の負担をできるだけ減らすことが、リファラル採用活性化の大きなカギになると思っています。『GLOVER Refer』では、協力社員がデータをアップロードすると専用のURLが振り出され、そこに人事から採用イベントの告知や欲しい人材要件、そして人事によるメッセージテンプレートが送られるようになっています。

協力社員は一言添える程度で、負担なく友人・知人に招待メッセージを送ることができ、手間を省けます。人事のテンプレを使うのは、協力社員が感じる心理的な負担を軽減するため。これによって協力社員の拡大、行動量の増大が実現できると考えています。

(文)黒田真行:ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 1988年のリクルート入社以降、約30年間、転職支援サービスに携わる。リクナビNEXT編集長、リクルートエージェント企画責任者、リクルートドクターズキャリア取締役を歴任した後、 2014年9月に独立し現職。2014年12月、35歳以上向けの転職支援サービス「Career Release 40」をスタートし、人工知能を活用してミドルの転職可能性の最大化に取り組んでいる。

【後編】リファラル採用において「協力社員」に金銭を支払わない理由――リクルートキャリア・中山好彦氏の考え方

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