ヤマト運輸の「サービス残業代」は完済されるのか? 激務に追われる現役社員「忙しくて請求書類を作るヒマがない」

ヤマト運輸の「サービス残業代」は完済されるのか? 激務に追われる現役社員「忙しくて請求書類を作るヒマがない」

上司からは、始業時間前に出社しても「タイムカードを打刻するな」と言われてきた。その一方で、昼の休憩もままならないのに、その分の労働時間は引かれている。「ほぼ毎日、終業時間に携帯端末を締めたら即タイムカードを打刻して、その後に書類仕事を行なっていました。当然、昼休みなど取れる状態ではありません」


宅配便大手のヤマトホールディングスが、全社員を対象に未払い残業代の有無を調べ、すべて支払う方針を固めたと報じられている。そこでTENSHOCK編集部は、口コミサイトの「キャリコネ」会員に取材依頼を行ったところ、現役社員と退職者あわせて6人から回答を得た。

30代の現役セールスドライバーAさんによると、あまりの多忙のために「請求書類を作るヒマがない」として、精算を見送ろうとしたという。いまさら請求すべきではないと言い放った営業所長もいたようだ。ただし会社はこのような不適切なケースを把握して再調査を指示し、この春にも完了させようとしているという。

「タイムカードを打刻するな、と言われてきた」

Aさんは、中部地方の宅急便センターに10年以上勤めている。ヤマト運輸では、ドライバーは単なる運転手ではない。お客さまとの接点で幅広いサービスを提供する役割を担う。彼らの笑顔が会社への好印象につながる重要な存在だが、そのウラには激務があるという。

「セールスドライバーは、荷物の集配から新規顧客開拓、既存荷主のフォローまで、さまざまな現場仕事をこなさなければなりません。職場環境は各センターや建屋によってかなり異なりますが、私の職場では荷物の積み込みのために朝早く出社し、夜も毎日午後9時すぎまで残らなければなりません」

上司からは、始業時間前に出社しても「タイムカードを打刻するな」と言われてきた。いわゆる早出サービス残業である。その一方で、昼の休憩もままならないのに、その分の労働時間は引かれている。

「ほぼ毎日、終業時間に携帯端末を締めたら即タイムカードを打刻して、その後に書類仕事を行なっていました。当然、昼休みなど取れる状態ではありません」

そんな中、降って湧いたのが今回の「未払い残業代」問題だ。2年分のタイムカードと勤怠リストが配られ、未払い分があれば一日ごとに修正をする。そして最後に、その内容で相違ないと了承した旨を記すサインを書いて提出するのだ。

しかも書類の配布後、上司からは何の説明もなく、Aさんは「忙しいので請求する暇もない」と嘆く。ネットには「未払い残業代を1円も貰いませんという誓約書を書かされた」という告発があったが、実態はこのようなケースを指すのかもしれない。

 

正社員のセールスドライバーに集まる「しわ寄せ」

同様の告発があったのか、2017年3月23日の朝日新聞は、ヤマトホールディングスの山内雅喜社長にインタビューを実施。山内社長は一部支店で不適切対応があったことを認め、再調査を指示したことを明らかにしている。

TENSHOCK編集部がヤマトホールディングスの広報戦略部に取材したところ、会社として上記のような誓約書を書かせるようなことはしていないと明言。実際の労働時間を証明する「証拠」がなければ請求できないという噂についても、このように否定した。

「会社としては、社員に対して定量的な調査に加えて、定性的なヒアリングも行っております。労働時間の明確な証跡(しょうせき)がなくても、労働実態があったと認められれば未払い分を支払うようにしています」

「まず、実態をきちんと把握」 ヤマトHD山内社長:朝日新聞デジタル

http://www.asahi.com/articles/ASK3Q5K5CK3QULFA024.html

 宅配便最大手ヤマトホールディングス(HD)が進めている未払い残業代の調査で、一部の支店がやり直しを求められていることがわかった。山内雅喜・ヤマトHD社長は21日の朝日新聞のインタビューで、十分な調査…

アンケートからは、興味深い傾向が表れた。セールスドライバーは全員がサービス残業の存在を指摘したが、営業所を管轄する支店の正社員や、現場の契約社員は「残業代はすべて支払われていた」と回答している。あるセンターで契約社員として働いていた男性は、働く環境に十分満足していたという。

「福利厚生は充実しており、契約社員の身分だったので、有休も全部消化することができた。やりがいも充実度も高かった」

その一方で、現場の正社員は過重な業務を一手に担わされていた。Aさんは「管理者はイエスマンを望んでいると思う」と指摘したうえで、現場がさまざまな問題を吸収していると嘆く。

「ヤマト運輸が成長した背景には、現場を知らない人間の無茶な要求を、現場が何とかして合わせ続けて来た事実がある。今そのツケを、現場が払うことになっている」

「会社は利益だけでなく、従業員の幸せも考えて」

この問題については、会社も認識をしていたようだ。前出のインタビューでヤマトHDの山内社長は「対応が遅れて社員に負担をかけたことは申し訳ない」と陳謝している。

激務の背景には、ネット通販の急成長がある。居ながらにして買い物が済む利用者には便利なことこのうえないが、Aさんは「再配達依頼を掛けて平気で留守にする者がいるため負担になる」と、利用の仕方に問題を感じているようだ。

九州地方でセールスドライバーとして働いていたBさんも、2015年に「早出やサービス残業が常態化」していた会社を辞めた。

「月に60時間から80時間のサービス残業があった。ヤマト自体の人員が少ないのもあるし、荷物が増えれば人員を増やせばいいのに現状でやろうとする。現状のままの人員ではサービスを維持できないことは明らか。辞めたのは、このようなことになることはわかっていたからです」

関東地方のベース店で仕分け作業をしていた契約社員Cさんは、残業代はすべて支払われてはいたものの、肉体労働のため身体の疲労度は大きかったと振り返る。

「他社との競争でサービス過剰となっているところもあります。会社は利益のみ追いかけるのではなく、従業員の幸せも考えなければならないと思います。会社内でフィールド毎に専門的な業務をしている人に対して、一定の評価をしていただきたい」

この点についてもヤマトHDの山内社長は「社員が幸せに働き、会社も成長していくには、抜本的な改革をしなければいけないと考えた」とインタビューに答えている。ぜひ実現して欲しいものだ。

 

「同業者と乗り合いで問題解決を図って」という提言も

アルバイトから契約社員を経て、正社員のセールスドライバーとして働いていた20代男性Dさんは、担当する地域によって負担が大きく変わる仕事の実態を明かしてくれた。

「エレベーターのない団地で不在だと、水やミカンなどを5階まで階段で持って降りたり、マンションだとオートロックで複数宅にお伺いを立て、入れていただいても最後のお宅からは『遅い、いい加減にしてよ、待ちくたびれたわ』と叱られたり。お客様は神様ばかりではないので、心が折れることもたびたびでした」

それでもネット通販は「便利だし、過疎地は本当に届けると喜ばれる」として、これからも成長すると見る。それだけに、業界内でもっと負担を和らげる方法を考えるべきだと提言している。

「一連の問題は、何もヤマトだけのことではないのだから、再配達荷物の預かり所を共同で運営するなど、そろそろ同業者と乗り合いで問題解決を図っていけばいいのでは。駐車場が1台しかない敷地の外側に、何台も順番待ちの運送車とか無駄過ぎると、飛脚さん(佐川急便)やペリカンさん(日本通運)のドライバーといつも話していました」

ヤマト運輸は3月17日、「当日の再配達締め切り時刻の変更」(4月24日より)や「配達時間帯の指定枠の変更」(6月中)など、社員が働きやすい環境に配慮したサービス内容の変更を発表している。2016年4月からは東京多摩ニュータウンで、佐川急便や日本郵便との共同配送を行っている。今後の改善に期待したい。

宅配最大手のヤマト運輸は最大の取引先であるインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの当日配送サービスの受託から撤退する方針を固めた。夜に配達しなければならない荷物が増え、人手不足の中、従業員の負担が増しているため取引を見直す。

 
 

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