リファラル採用において「協力社員」に金銭を支払わない理由――リクルートキャリア・中山好彦氏の考え方

リファラル採用において「協力社員」に金銭を支払わない理由――リクルートキャリア・中山好彦氏の考え方

自社に合った有能な人材が低コストで採用できる方法として、大手企業や人気ベンチャーなど新卒採用に組み入れる企業が増えているリファラル(社員紹介)採用。その可能性と課題は、どのようなものなのだろうか。


元三幸製菓の人事責任者である杉浦二郎氏と、リクルートキャリア・事業開発室の中山好彦氏の対談・第二弾。前回はリファラル採用という新しい採用手法に求める「目的」や、社員に掛かる負担などが議題となった。

今回は、リファラル採用を支援するデジタルツールの必要性と、それと相反する縁故採用が持つ濃厚なアナログ性についてどう調整していけばよいかについて意見が交わされた。(文:ルーセントドアーズ代表・黒田真行)

【前編】「リファラル(社員紹介)採用」は日本で定着するのか――「日本一短いES」「おせんべい採用」の開発者・杉浦二郎氏が考える

http://tenshock.biz/articles/2345

リファラル(社員紹介)採用は、自社に合った有能な人材が低コストで採用できる方法として、大手企業や人気ベンチャーなど新卒採用に組み入れる企業が増えている。新たな採用手法として今後一層広がっていくとも言われているが、現場の「肌感覚」はどうなのだろうか。

紹介した知人を協力社員はどこまでフォローすべきか

杉浦 デジタルツールをうまく用いれば、協力社員の時間的、心理的な負担を減らせるという考えは一理あるとは思うのですが、その一方で、紹介する友人・知人とのつながりが薄くなってしまう点が懸念されませんか?

友人・知人がたとえ自社に入社しても、「自分は単に間をつないだだけ」という程度の感情で終わってしまい、面倒を見るどころか、たまに会社でばったり顔を合わせるだけ、というような。そういう傾向が強まると、結局は「母集団形成を違う角度からやっているだけ」という感想になりかねず、結果的にリファラル採用が定着しづらくなると思うんです。

中山 なるほど。

中山好彦:株式会社リクルートキャリア 事業開発室 ビジネスディベロップメントスペシャリスト IT業界の採用ソリューション営業を経て、新規事業開発部門にてダイレクトリクルーティング手法の研究開発を行う。「ラベルではなく能力を評価される仕組みをつくるため」、新規事業開発に取り組んでいる。リファラル採用導入・促進ソリューション『GLOVER Refer』(グラバー リファー)の企画・開発を担当。多数の企業でリファラル採用を成功させる実績を持つ。

杉浦 従来の縁故採用であれば、入社するまではもちろん、入社後も徹底的にフォローするはず。会社や仕事について教えたり、力になってくれそうな社員を紹介したり、会社帰りに飲みに行って不安を聞いてあげたりするから、新規入社者の不安が軽減し、早く定着し、早く活躍できるようになるわけです。ですから協力社員には、友人・知人の人生を預かるぐらいの気持ちで臨んでほしいと私は思います。

中山 正直、紹介した人の人生にまで深くコミットして、入社後も付きっきりでフォローするという、それだけの「濃さ」で紹介してくれる人は少ないかもしれませんね。ただ、リファラル採用は「メンター付きの採用」という側面を持ってほしいとは思っています。紹介する責任もある程度は感じてほしいし、フォローもしてほしい。

協力社員に「金銭的なインセンティブ」を出すべきなのか

中山 先ほど(前編参照)協力社員へのインセンティブの話が出ましたが、私はやはり金銭的なインセンティブは出さないで進めることが重要だと思っています。お金を払うとなると、単に量を集めればいいという考えになってしまいますが、お金は払わないという前提であれば「会社のため、友人・知人のため」という純粋な気持ちが先に立つでしょう。

『GLOVER Refer』導入企業においては、今のところそのバランスがうまく取れていると感じています。ただ、今後はバランスが取れない企業が出てくる可能性もあるため、さらなる研究は必要です。この点が仕組み化できれば、リファラル採用は構造的には長く残っていくものだと考えます。

杉浦 マクロのデータを分析して、最適な数値やアクションを算出するのは重要です。ただ、リファラルのよさって、そういうシステム的な話を取っ払えるのがいいところなんじゃないかとも思うのです。応募率とか承諾率とか歩留りだとかと言い始めると、今までの媒体広告モデルと同じではないかと。

繰り返しになりますが、社員が「うちにピッタリの人がいる。自分がこいつの面倒を見るから採用を検討してみてよ!」という風に連れてくるのがリファラルの醍醐味であり、本来の姿ではないかと思うんです。支援ツールにも、こういう世界観が少しでも反映されると嬉しいですね。

杉浦二郎:株式会社モザイクワーク代表取締役 2015年9月まで三幸製菓人事責任者を務め、フリーの採用プランナーを経て2016年4月に会社設立。「日本一短いES」「カフェテリア採用」などを生み出し、TVや新聞、ビジネス誌など多くの媒体に取り上げられる。HRカンファレンス等、イベントでの講演多数。また、地元新潟において産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組む。

中山 おっしゃる通り。僕自身もその方向が理想だと思います。これまでの日本の新卒採用においては、いかに多くの母集団を集め、その中にどれくらい優秀な人材がいるかというアプローチが展開され、日本の労働市場の特性とも相まって効を奏してきました。

一方で、企業が置かれる経営環境は時代とともに加速度的に変化し続けており、新卒採用においても、より多様でニッチな採用を成功させることが求められ始めています。まずは『GLOVER Refer』を使って新たな採用手法としての効用を実感してもらい、理想的な採用手法の一つとして確立していければ、と思っています。

「求人票を作れない求人案件」で効果を発揮

杉浦 今のお話を聞いて、リファラル採用は、いっそ「より精度の高い母集団形成に有効ですよ」という位置づけに振り切ってしまってもいいのかも、と思ったりもしました。マッチングとか定着率とか、さまざまな要素が入ることでややこしく感じるのかもしれない。

中山 それでは中途採用の事例なのですが、リファラル採用の好事例を一つご紹介させてください。ある大手通信会社から「人員を採用したいけれど、求人票が作れない」と相談されました。企画段階の新規事業で、立ち上げてくれる人材がほしいと。

ただ、方向性も何も決まっていないから、具体的に言えることがほとんどない。求人媒体や人材紹介ではお手上げの案件ですが、『GLOVER Refer』を使って1人の社員が友人を1人紹介して、その1人が採用されました。

杉浦 1名紹介で、1名採用ですか! それはすごい。

「協力社員は友人・知人の人生を預かるぐらいの気持ちで臨んでほしい」(杉浦)
「お金は払わないという前提であれば“会社のため、友人のため”という純粋な気持ちが先に立つ」(中山)

中山 仕事内容が決まっていないから、応募者の経験・スキルだけでは合うか合わないかを測れない。最終的には企業側の「納得感」で採用を決めるしかないんです。その中、信頼できる協力社員からの推薦だからこそ、「この人ならば」と納得感を高めることができた。リファラルだからこそできた採用だと思っています。

杉浦 こういう事例においては、『GLOVER Refer』という仕組みはとても効果的ですね。私自身も三幸製菓時代に、求人票を作れない求人案件にいくつか直面しました。やることが決まっていないから「この募集に必要な人材要件」が出せないんですよね。そういう求人の場合、求人票というテキストデータで表現できることには限界があるので、表現できない"行間"ごと伝えられるリファラル採用は非常に適していると思います。

「フレキシブルな就職」に対応できる採用手法として注目

中山 今後、新卒採用における「リファラル採用」の位置づけは、どのように変化していくと思われますか?

杉浦 新卒採用手法の主流になる可能性は秘めていると思います。学生の中では今、「一律の卒業」「一律の就職」という意識が徐々に薄れつつあり、例えば卒業後にいったんNPOで活動したりボランティアをしたり、留学をするなど、一定期間を経てから就職したいと考える人が増えています。今後、この傾向はさらに強まると予想されます。

こういうニーズに対応できるのが、リファラル採用です。現状では、例えば卒業後1年間留学したら「次年度の就活システム」に乗る必要がありますが、そういう人の情報を協力社員経由でシステム内にプールしておいて、帰国後に連絡を取り合い採用選考に進むという方法も取れるはずです。

リクルートキャリアが提供するリファラル採用導入・促進ソリューション『GLOVER Refer』(グラバー リファー)

杉浦 従来型ではなく、フレキシブルな就職、フレキシブルな働き方に対応できる採用手法として注目されるのではないか。そのために重要なのは、企業人事がリファラル採用のそういうメリットまで理解して使い続けるという意識です。

「人が来ないからリファラル採用を使う。人が来たら使わないでいい」という姿勢の企業が主流になってしまっては、いくら有効な手法であっても必ずや廃れてしまいます。実際、そういう手法や媒体を、人事として数多く目にしてきました。リファラル採用には、そうなってほしくない。

縁故採用には誰しも、アナログの最たるものという印象を持っています。一方で『GLOVER Refer』などのリファラル採用支援ツールはシステムなので、そこに違和感を覚える人事は少なくないと思います。リファラル採用を正しく普及・拡大させたいと考えるならば、リファラル採用だからこそできること、魅力、醍醐味をしっかり企業に訴え、根付かせていく努力が求められるのではないかと思います。

中山 貴重なご意見の数々、ありがとうございました。

(文)黒田真行:ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 1988年のリクルート入社以降、約30年間、転職支援サービスに携わる。リクナビNEXT編集長、リクルートエージェント企画責任者、リクルートドクターズキャリア取締役を歴任した後、 2014年9月に独立し現職。2014年12月、35歳以上向けの転職支援サービス「Career Release 40」をスタートし、人工知能を活用してミドルの転職可能性の最大化に取り組んでいる。

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